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第2章:廃墟の上に築かれた世界 (2)

こんにちは! 皆さんが素敵な一日を過ごしているか、または良いスタートを切れていることを願っています!


皆さんの読書を少し中断してしまいますが、改めてこの章をクリックしてくださったことに感謝を伝えさせてください。

そして、もし誤字や不自然な表現、翻訳のミスなどがあれば、遠慮なく教えていただけると嬉しいです。


それでは、どうぞお楽しみください!

わずかに緑がかった蛍光色の光が、ゾンビが起き上がったあとに残した小さな穴からかすかに漏れていた。サルヴァトリスの疑念は、これでほぼ確信へと変わる。ここはただの古い墳丘や共同墓地などではない。むしろ、人目を避けるために隠された遺跡なのかもしれない。生前の持ち主は、急いで地下への入口を土や瓦礫で崩落させ、封じ込めようとしたのだろう。


サルヴァトリスは地面に膝をつき、これまでにないほど慎重に死体を蘇らせようと集中する。黒い糸のような魔力が死体の隅々まで浸透していくと、骨が軋む音とともに無言で立ち上がり、その空洞の眼窩はサルヴァトリスを見据えた。


「くそっ、また失敗したか…!」


サルヴァトリスは苛立ちを込めて足を踏み鳴らすが、すぐに追っ手の存在を思い出して動きを止める。安全を確保する余裕もないまま、新たに操る死体が持っていたスコップで、緑色の淡い光が漏れている場所を掘り進めた。身体をねじ込めるほどの穴をこしらえた後、彼はすぐにそこへ潜り込み、ゾンビたちも後に続く。最後に、周囲の土や瓦礫で入口を塞いだ。


――ルートニーの群れが自分の存在すら忘れてくれるくらい、ここがしばらくの間隠れ場所になればいいが、とサルヴァトリスは祈るような気持ちだった。


狭い空間を照らす唯一の光源に目をやると、淀んだ空気と墓場のような腐敗臭が鼻を突く。思わず腕で鼻先を覆いながら、彼は瓦礫や土の下敷きになっていた最初の死体と同じ服を着た遺体が数体あることに気づく。わずかに発光するそれらの遺体の向こうには、青みがかったコンクリートと、スコップと同じような合金が混ざった材質でできた重厚な扉がそびえ立っていた。


湿気が染み込み、何度もこじ開けようとされた痕跡が残るその扉に、錆びは見当たらない。だが古いことは一目で分かる。扉にはギリシア神話の戦いの神、アレスを思わせる紋章が刻まれ、その上に緑色の蛍光を放つ非常口の看板が不安定にぶら下がっていた。


サルヴァトリスは散乱する九体の死体のうち、四体を慎重に蘇らせようと試みるが、やはり成果は乏しい。彼は首を横に振るしかなかった。


「また失敗か…。全然記憶を取り戻せない…くそ、筋肉の動きしか覚えてないなんて役立たずだ。ほかの死体は、もっと腕のいいネクロマンサーや勇者に任せた方がいいな。きっと彼らなら、この遺跡で何があったのかを聞き出せる。そうすれば古代文明についても分かるかもしれない…!」


そう考えて溜息をついた後、サルヴァトリスは操り人形たちを率いて扉の方へと歩み寄る。白衣や上着を着た死体たちに開扉を命じると、まるで手順を覚えているかのように容易く扉を開けた。そのうちの一体は、ほとんど原型を留めていないバッジを壊れた装置の前にかざす仕草を見せる。近くには長い年月の中ですっかり判読不能になった銘板があったが、当然何も起こらない。結局は、経年劣化で壊れた電子錠を押し開けるだけだった。


ところが、バッジをかざした骸骨は、白衣を着ていない死体たちの方を振り返ると、ぎこちない動きでサルヴァトリスにとって未知の言葉を発した。サルヴァトリスは死体との魔力的な繋がりを介して、かろうじて意味を感じ取る。


「…ヨウコソ…セント…コンサーバ…極低温学…」


サルヴァトリスは驚きのあまり飛びのき、恐怖と不安、興奮、歓喜が入り混じった表情を浮かべる。自分の蘇らせた死体が言葉を発したことに感激し、思わず大声を上げた。


「やった! 記憶を完全に戻すことはできなかったけど、もう少しで成功しそうだった! 次は制御できるかもしれない! でも…『極低温学』って何だ…?」


知らない単語に首をかしげつつ、サルヴァトリスは動揺を抑えるように無言で二体の戦士を先頭に進ませる。さらに、今入ってきた扉の内側には新たに蘇らせた二体を配置して見張り役とし、万が一ルートニーが侵入してきても対応できるようにした。


サルヴァトリスが地下構造へ足を踏み入れると、階段が下へと続いており、入口と同じ非常灯がぼんやりと光っている。天井に取り付けられた人工照明が動きを感知してか、弱々しく明滅し始め、思わずサルヴァトリスは飛び上がった。


「だ、誰だ!? …」


照明が瞬きを繰り返し、数秒間、あたりは真の闇に沈む。心臓をバクバクさせながら、サルヴァトリスはようやく落ち着きを取り戻した。


込み上げる不安と期待が彼を奥へと駆り立てる。階段を降りる足音が、操り人形たちの足音と重なって長い空間にこだまする。逃げ出したい気持ちに体が震える一方で、理性はさらに奥へ進めと囁く。最後尾の死体たちは、自然と守備陣形のように並んでいた。


【ここには魔力がほとんどない…。じゃあどうやって動いてるんだ?】


得体の知れない好奇心と奇妙な興味がサルヴァトリスの心を支配する。かつて世界に来訪した英雄たちが語っていた遺跡に、まさにそっくりだと思い出す。足を進めた先には扉枠だけが残り、青みがかった壁と床に大きなガラスのようなものがはめ込まれた部屋が見える。その先には少し開いた扉があり、比較的損傷が少ないものの、閉まらないように死体が挟まっていた。


近未来的なセキュリティスーツを身にまとい、頭部だけが露わになっているその死体は、見るからに防御力が高そうで、腐敗臭が周囲に立ち込めていた。扉枠の下には、錆びて穴の開いた金属板が落ちており、サルヴァトリスはそこを踏み越えながら死体を起こそうとするが、鎧が地面にくっついているのか、這うようにしか動かせない。


サルヴァトリスは新たな人形を見下ろすと、手を上げて命令を与える。だが這いずり回るだけの死体は足手まといになると判断し、ここに置いていくことにした。


続く部屋には、先ほど通ってきた扉と同じようなものが二つあるが、中は瓦礫だらけだ。サルヴァトリスは周囲を見渡すと、視線は向こう側にある色付きガラスに止まる。手で触れても仕組みは分からない。


【いったい何に使われていたんだ、ここは…】


そう思いながら、サルヴァトリスは倒れたままの鎧を着た死体をいくつか見つける。どれも武器らしき金属片を握り締めたまま動かない。どうせ蘇らせても這いずり回る程度しかできないだろうと判断したサルヴァトリスは、そのまま放置することにした。もし自分より優れたネクロマンサーがここに来れば、何かしらの記憶を引き出せるかもしれないと期待を込めて。


さらに進むと、小さなサーバールームらしき部屋に出た。そこに残る装置類はサルヴァトリスにはまるで理解できないほど壊れているが、それでも彼は興味津々で辺りを見回し、頭に焼き付ける。


次の扉を開けてみると、大きな長方形の食堂に出た。青みがかった合金で作られたテーブルと椅子が並び、かつて大勢の人々が暮らしていたことを静かに物語っている。奥には調理設備や朽ちた棚があり、さらに別の出入口も見える。


サルヴァトリスとゾンビたちは周囲にある四つの扉を次々と開けていった。そこにはかつての大規模な温室、廃棄物やガラクタが散乱した倉庫、浴室やスポーツジムのような部屋があったが、なぜかどこにも死体は見当たらない。まるで人為的に放棄されたかのように。


ひと通り探索を終えると、最後に洗面所の脇にある扉へと向かう。扉の先には小さな階段が下へ続いており、再び闇の奥へと進むことになる。階段を降りきると、九つの扉が並ぶ長い廊下に出た。左右にある八つの扉を開けると、古い二段ベッドや小さな机、収納が備わった狭い部屋が覗く。どれも同じ青い合金でできている。


そして、廊下の正面にある最後の扉にサルヴァトリスは手をかけた。期待と不安が入り混じり、震える手がドアノブを回す。


「うわ…」


そこには想像以上に広い冷凍施設があり、まだ機能しているのか、いくつかのカプセルの中に人間の死体が凍ったまま残されていた。その無数のカプセルとは明らかに異なる場所に、一人の女性が寄りかかるように座り込んでいる。灰色がかったラインの入った長方形の機械の側面に背を預け、軍用らしき軽装をまとっているが、ところどころ破れ、そこから白い肌と複雑な機械仕掛けのパーツが見えている。顔も機械のように一部が露出しており、長い薄紅色の髪が金属の装甲を隠すように垂れていた。深いバラ色の瞳には生気が感じられない。


思わずサルヴァトリスは一歩後ずさりする。人生で初めて完全に身がすくみ、二体の戦士が反射的に前に出る。


「ご、ご…ゴーレム…? 金属のゴーレムだって!? こんなところに…!」


本能的な恐怖に体が震え、視線がそのゴーレムから離れない。もし今すぐここを出ればルートニーに見つかるかもしれないし、かといってこの得体の知れない存在が起動したら…と、頭が混乱する。


だが、サルヴァトリスは考えるのをやめ、兵士のゾンビたちを盾にして慎重に近づいた。目の前の脅威と向き合う方が、正体不明の魔獣の群れを探し回るよりまだマシだ。


ゴーレムが背もたれにしている機械には淡い光が流れており、サルヴァトリスはつい手を伸ばしかけてやめる。


【まだ動いてる…? なぜ壊れてないんだ?】


最も頑丈そうなゾンビ戦士がゴーレムの頭を思いきり殴りつけるが、まったく反応がない。


【いったい何に使われてるんだ?】


サルヴァトリスは再度そっと手を近づける。すると突然、金属音が響き渡り、ゴーレムの瞳が鮮やかなピンク色に染まる。電光石火の早業でサルヴァトリスの腕を掴み、彼は恐怖で声を出すことさえできない。操られた死体たちも動く気配を見せないまま、ただ状況を見つめている。ゴーレムから敵意の明確な兆候がない限り、攻撃指令が下せないのだ。


そのとき、機械的な響きを含んだ女性の声がゴーレムの唇から漏れた。サルヴァトリスにはまったく理解できない言語だが、白衣の死体から伝わる断片的な思考を通して、おぼろげに意味を感じ取る。


「I…アイデン…ティフィアン…アリス…7274……プロトコル…852、903、783…破棄…被験体ノ記憶ニ…強制情報ヲ追加…ビ…ジュアライズ…開始…」


すぐにゴーレムの背後の機械が強く発光し、ゴーレム本体と連結を始める。


「はっ…?」


サルヴァトリスの恐怖は頂点に達し、必死に首を振って逃げ道を探るが、細い金属の針のようなものが彼の頭部に突き刺さる。激痛が全身を駆け巡り、サルヴァトリスは絶叫する。頭が破裂しそうになり、視界の端にいるゾンビたちへの怒りと困惑が入り混じった感情が湧く一方、理解不能な膨大な情報が頭に流れ込んでくる。ゴーレムが何を言っているのか、この瞬間ようやく悟ったが、時すでに遅い。目玉が飛び出しそうなほどの衝撃に、喉が裂けるような悲鳴がこだまする。


「やめろぉっ…!」


意識は急速に霞んでいき、痛みはさらに増していく。まるで圧倒的な情報の奔流に飲み込まれ、自分という存在が失われていくようだった。涙が止めどなく溢れる。


「俺の記憶に触るな…やめ…ぐああああっ!!」


必死の抵抗もむなしく、状況は変わらない。あまりにも凄まじい痛みに耐えきれず、サルヴァトリスの頭の中に戦場のビジョンが断片的に流れ込む。爆発や銃撃戦、人間の死体の山、血の海…そこには神々の姿もあり、巨大な機械をいとも簡単に粉砕するその力が映し出される。まるで自分が実際に体験したかのようにリアルだ。


やがて映像が鮮明になった瞬間、サルヴァトリスの意識は地面へと崩れ落ちる。傍にいた戦士のゾンビがとっさに支え、ゴーレムの瞳からは再び光が消え、沈黙に戻った。サルヴァトリスの体は硬直したまま、ゴーレムと同時に動かなくなる。


さて、今回はあまり言うことがありませんね…

この章を楽しんでいただけたなら嬉しいです! そして、次の章も気に入ってもらえますように!


それでは、良い一日/夜をお過ごしください!

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