ep1
人生を諦めるには、あまりにも早すぎる小学生の頃。
私たちは、そんな狭い空間の中で絶望を感じていた。
「今日転校生来るらしいぞ」
「え?また?今年何人目よ。」
「え?何人目だろう。多分5人目?」
「え?5人?」
「うん。だってさとる、まなみ、たけし、すばる。」
「うん。5人だね。」
この学校の地区では、この頃次々とタワーマンションが建設されていた。
それまで4年間程、1クラス20人のみで構成され、廃校になるのではないかと言われていた小学校。
だがある日突然人生というものは、思いもしない方向へと進むことがある。
長年知事を務めていた田中知事が政界引退。
次に当選したのは、斎藤知事。
彼は、私たちの村で知らない人はいない程の有名人。
朝テレビをつけると、必ずいる、いわゆる朝の顔というやつだ。
元アナウンサーの彼が妻が病気によって死去したことをきっかけに政界デビュー。
そんな彼によって私たちの村は、土地開発されたのだ。
各駅しか止まらなかった最寄駅が快速でも停車するようになったり、お年寄りが住みやすいランキング1位の街から若者が通う飲食店街へと変化を遂げた。
そんな急激な変化により、得をした人間もいれば、損をした住民もいるだろう。
だが大人たちは、それでもなんとか暮らしていくものだ。
居心地の悪さを感じた人間は、この街を出ていく。
自分の意思で自分の未来を決めることができる。
だが子どもたちは、違う。
その限られたコミュニティーの中で、この急激な変化に対応していかなくてはならなかった。
そうすると何が起こるかというのは、明白だ。
「ねえ、うらら。またうちのクラスに転校生来るらしいよ。」
ナンバー2がナンバー1に話しかける。
「へえ。」
教室の端、ほうきが入れられている棚の側で立っている女子3人組、ボス3。
ナンバー1は、真ん中で携帯を触っていて、興味がなさそうな態度。
「うらら、今回もやるの?」
恐る恐る尋ねるナンバー3。
「当たり前でしょ?」
今回もどうやら始まるらしい、転校生狩りが。