一人称視点の小説
今回は主人公による一人称視点なので、要注意です。三人称視点は作者が読者に必要だと思われる情報を書いてくれますが、一人称視点はそうではありません。
一人称視点は嘘を吐きます。
主人公が受け取った印象、感情のままに書かれるので、気付かないうちに読者は間違った情報を与えられている可能性があります。
これは乙女ゲームや漫画、小説の中に異世界転生した人物が感じるものです。読者の時は婚約者すら恋の障害と受け取って、実際は略奪だと感じないのが、一人称視点です。
婚約者の性格が悪かろうが、浮気相手であり、略奪者であることは変わりません。
でも、愛し合っているから正義。そんな真実の愛フィルターは一人称視点の効果です。
創作物の中で婚約者がいるからと苦悩するのはわかります。略奪側ですから、常識があれば良心が痛むものです。
婚約者に嫌がらせをされるのも、当然です。婚約者は婚約を守りたいか、愛しているから婚約を続けたいのです。お邪魔虫として略奪女を排除しようとするのは当然です。
被害者ぶって「私は〇〇された」と、倫理観や道徳心、常識のある人間は考えません。
一人称視点は読者の思考や感情を自分に有利になるよう、読者の共感を狙って書ける卑怯な視点です。
主人公はこの点をわかっているので、自分の不倫時期をまったく書いていません。
底辺作者が書かなかったのではありません。主人公の意思です。
この点からも一人称視点は読者を騙しています。
語り手自身に信用が置けない。それが一人称視点の小説の特徴です。