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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
合同ダンジョン攻略『暗殺者のダンジョン』
82/108

82.休息

 ぐねぐねと入り組む同じような景色を見て進む。ただでさえ毒に侵されて思考の余裕を奪われてるのに、さらにこのダンジョンの構造は私たちを追い詰めていく。進めているのか終わりがあるのか、引き返すにしても過酷な道のりが控えてる。そんな状況が精神に影響を与えないわけがない。元々口数の少ないパーティーだけど、唯一話を広げてたモネスでさえ徐々に沈黙のほうに傾いていった。

 うちのパーティーのほうはクリスタがいつもの調子でズバズバ物を言うわけでもなく、ネーヴもじんわりと汗をかいて疲労を濃くしていた。ネーヴは元々ドラゴンなだけに毒への耐性は人一倍あるはずだ。なのに、調子を悪そうにしていることが心配になった。声をかけても大丈夫の一点張りで、それを言われると私はそれ以上口を出せない。とにかくネーヴが休めるように早く毒のエリアから抜け出せることを祈った。

 それに加えて、眠気が襲ってきた。

 私はまだ大丈夫だけど、一番体力がありそうなスレイでさえ顔が青白く、時折槍を杖替わりにしている。ビビアナにいたってはモネスに肩を貸してもらってる。スキルの関係上、モネスは持続性に優れていて、長時間行動していても他の人より疲れない。普通のヒーラーならもう10回ぐらいぶっ倒れてるぐらい過酷な労働を強いられてる。

 最初は視界の端に映る動かない仮面の人形を気にしてたけどもはや気にならなくなった。ヘクターのもつリーゼロッテ人形にさえ注意しておけばさほど脅威にはならない。そんなことどうでもよくなるぐらい極限の状況だった。


「どうやら……やっと休むことができそうだぜ?ここはイヤな感じがしない。ここで野営することにする。寝る準備をしろ」


 ヘクターの言葉に生気を失いかけてた全員の目に光が宿る。

 そこは玉座の間らしき空間だった。高い位置に高そうな椅子が置いてある。なんか高そうな絨毯も敷いてあるし、壁にも高そうなものが立て掛けられてる。そして、何よりこの空間には毒が充満してなかった。空気が澄んでるとさえ言える。そのぐらいこの空間は安らぎに満ちていた。


「まじで……?まじで!?やっとゆっくり休めるの?やったあああああああ!」


 真っ先に絨毯にダイブしたのはモネスだった。彼女のここまでの活躍を考えれば絨毯にくるまってイモムシの真似をしても許されるぐらいの権利がある。

 ビビアナもその場にへたり込んだ。もう一歩も動けないといった感じだ。腰かけるものがないので床にそのまま座る形になるけど、毒の煙を下に見ての休憩より全然心が休まる。リーゼロッテが動かす人形もいない。この部屋に入ってこようとしても扉は二か所しかない。偉い人が入ってくるドアと謁見する人が入ってくる扉だ。そこだけ警戒しておけばいいのだから見張りの人数は少なくて済む。

 私たちは謁見する人側の扉から入ってきた。先に進むなら偉い人の扉から進むことになるだろう。

 正直、体力的には問題ないけど、私も精神的にかなりやられてた。野営できる場所だというなら仮眠じゃなく、きちんとした睡眠をとることもできる。完全に回復することはないけど、攻略を続けるだけの気力は持ち直すことができそうだ。

 

「あったかいモノが食べたい。焚火してもいい?」

「俺らを殺す気かよ。死ぬぞ」

「ぐぬ……」


 ビビアナが要望を却下されて項垂れる。

 ダンジョン内では基本的に焚火は禁止されてる。敵を寄せ付ける可能性があるし、煙で視界が遮られて、呼吸もできなくなる。疑似的な空があるダンジョンなら広いから敵にさえ気を付ければ焚火できることもある。でも、ここは多少大きな部屋とはいえ空気がこもる場所であることに変わりない。自殺行為に等しかった。

 気持ちは理解できた。私も温かいスープが飲みたい。鉄分たっぷりのやつだ。それだけで頑張れる気がするぐらい欲しい。


「しょうがねえな……5分だけだぞ。5分で消せ。あと、全員分ちゃんと作れよ?」

「いいの!?作る!つくるつくるつくるつくる!」


 まさかの許可がでた。あの挙動不審のビビアナが舞い上がるほど喜んでる。

 そこからのビビアナの行動は迅速だった。『空間収納』のスキルから薪を取り出して、火の魔術で小さな火を作った。周りに火が燃え移らないように鉄製の焚火の台が置いたことに慣れてる印象を受けた。薪が燃え上がる前に水が入った水筒を取り出すと、一緒に出した鍋に注いだ。そこに豆と葉っぱと香辛料と調理済みの加工された何かの肉をぶち込む。そして、最後に塩をぱっぱと振りかける。どうやらそれを煮詰めて完成らしい。

 簡単ながら香辛料の匂いが漂ってきて食欲が掻き立てられた。戦闘においてもビビアナの活躍は目覚ましかったけど、今のほうが輝いて見えた。


「ねえ、お酒はダメ?」

「無茶言うなよ。さすがにダメだ」


 ヘクターに諫められて少しだけしょんぼりするビビアナだったけど、手に握ったオタマは楽しそうに円を描いていた。

 

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