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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
合同ダンジョン攻略『暗殺者のダンジョン』
74/108

74.ヘクターの思惑

「安心しな。俺は味方だ。ってもこの状況じゃ疑われてもしゃーないよな。だけどよ、俺からしたらこのタイミングしかなかったわけよ」

「でしょうね。それで、ヘクターが『傀儡術』でこのダンジョンのボスに操られてない保証は誰がするの?」


 モネスの質問はごもっともだ。

 このままヘクターを信じてまんまと罠に嵌るなんて無様な真似はできない。確証がほしいのは当然の摂理だ。『傀儡術』でどこまでのことが出来るのか私たちはそのスキルすら知らない。だから、スキルを明かすだけならいくらでも誤魔化しがきく。一番最悪なのはヘクターが記憶ごと人格を乗っ取られていてヘクターがヘクターであることを証明できない状況だ。

 でも、それに関しては対策できる。

 私の『シーカー』のスキルでヘクターが操られている状態なのかを確認すればいいだけだ。それだけなら私の頭への負担も軽くて済む。


「そこは信じてもらうしかねえな。『傀儡術』は対象の意識を奪った状態でしか本来操作できないらしい。記憶を盗むことはできない。だけど、声なんかは本人の声帯を使ってるわけだから話し方と立ち振る舞いさえなんとかすりゃそれなりに騙せるわけだ。拠点で何度か戦ってみせただろ?俺が偽物に見えたか?」


 納得はいってなさそうだけど、引き下がるぐらいの説得力はあったようだ。モネスはこれ以上追及するのをやめた。惚れた弱味かもしれない。でも、それでなあなあにされるのは困る。

 だからこそ、私の出番だ。


「まだまだ問い詰めたいことは山ほどあるけど、ヘクターがリーゼロッテに操られてないのは確かだよ。私にはそういうのを見分けるスキルがあるの。詳しくは言えないけどね」

「強力な助っ人が現れた」


 ふざけた態度で私の証言を歓迎するヘクターに私は目も合わせなかった。そして、確信する。やはりこいつは私の本当の名前を知ってる。


「助っ人に言われなくても俺は信用するつもりだ。俺が怒ってるのはそういうことじゃない。まあ、もういい。済んだことだ。それで、ダンジョンのボスと何を話したんだ?そいつが話のわかるやつで、ダンジョンの魔物全てを操ることができるんなら、そもそもさっきの襲撃だってなかったんじゃないのか?」

「それは難しいだろうな」


 ヘクターは吸いきったタバコの残骸を胸ポケットから容器を取り出してそこに捨てた。ダンジョン内に自分の痕跡を残す愚行はさすがにしないようだ。タバコを吸ってる時点でかなり怪しい気がするけどね。

 

「リーゼロッテはなぜ自分がダンジョンのボスになってるかも分かってない状態だ。そして、時々どうしようもない衝動に駆られることがあるらしい。この世界の全ての生命を駆逐するという破壊的な衝動にな。もちろん、彼女自身はそれを望んでいない。本音はどうか知らんが、俺に話を持ち掛けてきたってことはそうなんだろう」


 私たちが攻略したダンジョンのボス、レオも同じ状態だった。何も思い出せずただ戦うことだけを求めた。それが本意じゃなかったことは倒したあとの会話からも察することができた。

 彼らは古代に栄えた文明の騎士だ。クリスタが言っていた文献だと八人いることになっている。そして、その頂点には女王がいる。

 アストレア女王。オズワルドとアストリッドとともに攻略した最初の厄災が起きたダンジョンのボス。『シーカー』のスキルの最初の所有者。彼女は何も語らなかった。いや、語れなかったんだ。ネーヴとクリスタとも話したことだけど、私たちはダンジョンの攻略が進めば進むほど彼女たちの記憶は鮮明に蘇るんじゃないかという推測を立ててる。

 もしリーゼロッテがより多くのことを語れることができるなら、この世界に起きてるダンジョンという事象の真実をいずれ解き明かせることができるかもしれない。


「じゃあ、今後も戦闘は避けられないってことね」


 とモネスは言った。


「彼女が衝動を抑え込めてる間はな。まあ、あまり期待しないほうがいい。やつと出会った時はいつ首をはねられるか命がけだったからな。まともでいられる時間はそんなにねえな」

「それで……リーゼロッテはヘクターに何の話をもちかけたの?彼女がわざわざそんな状態であるにもかかわらず接触してきた理由は何?」


 ネーヴの言葉にやっとヘクターは真面目な雰囲気を纏った。そう、私たちにとってここが本題なのだ。問題はヘクターが信用に足るか否かじゃなく、リーゼロッテが何をしようとしているかだ。

 少し気まずそうにヘクターは鼻を掻くと、意を決したように口を開いた。


「リーゼロッテはこう言ったよ。『私と同じ八騎士がいたダンジョンをクリアした奴を連れてこい。連れてきたならダンジョンの攻略に協力してやる』ってな。さすがに参ったよ。そんなやつどこにいるかもわからねえ。いるとしたらガキの頃起きたあの厄災から世界を救った英雄様方だ。だけど、英雄パーティーは一人を残して全員死んだと言い伝えられてる。あと一人はローニアの兵士を大量虐殺して姿を消したっていう。もう何年も前の話だ。一体どこを探せばいい?」


 ヘクターの目は間違いなく私を見ていた。英雄パーティー唯一の生き残り、オーステアことステラの姿を。

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