表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
合同ダンジョン攻略『暗殺者のダンジョン』
71/108

71.侵食

 第三階層までの道のりはボス攻略に挑むパーティーは戦闘を行わない。ルント陣営はヘクター、モネス、スレイ、ビビアナ。ヴォルフガング陣営はネーヴと私、そして、クリスタだ。この7人は戦闘を行わず、第三階層を目指すのが作戦の主旨だ。そのためには他の冒険者の協力が必須になる。

 魔物のダンジョンからの流出は奥の階層から押し出されるように発生するので、とにかく魔物を除去するのが肝心だ。だから、先行した冒険者たちがすでに人海戦術で駆除を開始してる。

 だからといって油断していいわけじゃない。魔物はどこからともなく湧いてくるので突然襲われることもなきにしもあらずだ。それでも、魔物を見かけることのない第一階層の景色はまるでどこか遠くの街に迷い込んだと錯覚させてしまうものだった。


「第一階層は比較的安全だ。不潔だが足場があるからな。問題は第二階層だ。エリアの大半を毒沼が占めてるせいで思うように魔物が狩れない。昨日指摘があったダンジョンの別の入り口も第二階層から繋がってる。だが、第三階層に比較的安全に向かえるルートが確立されてるのはこちら側のみだ」


 歩きながらヘクターが説明する。さながら観光案内のようだ。

 確かにヘクターの根回しは各所に行き届いてた。このダンジョンを本気で攻略するつもりなのが窺える。指揮系統を前日にいきなり余所者のカタリナに委譲しても何ら影響はないレベルだ。ヴォルフガング側の冒険者もルントの冒険者の指示を受けて連携を密にしてなんとかやれてるみたいだ。

 それを理解したのは、第一階層終盤に第二階層の魔物が溢れ出ているところを見た時だった。

 冒険者たちは特に慌てた様子もなく、声を上げて自分の位置を知らせ、敵の位置を報告する。魔物は危なげなく討伐されていった。第二階層で戦えない以上、ここが防波堤の役割を持つ。つまり、ここが防衛を任された冒険者たちにとっての最前線だ。今はまだ処理が追い付いてるけど、私たちの攻略が遅れれば遅れるほどここは地獄と化す。


「ヘクター、頼んだぜ!」

「女に囲まれて鼻の下のばしてんじゃねーぞ!」

「羨ましいけど俺にはぜってー無理だかんな。応援してっからなー!」

「ヴォルフガングのやつら、ヘクターの足引っ張るんじゃないわよ!」


 ヘクターに対する野太いのと黄色いのの声援が聞こえる。こいつは本当に人気者なんだな。女性の冒険者の中には敵愾心剥き出しの視線を投げかける人もいた。私は全然興味ないのに困ったもんだ。ネーヴもクリスタも気にする素振りはない。まあ、クリスタはヴォルフガングの冒険者ともしょっちゅう揉めてるので今更外野から何を言われようがどうでもいいんだろうね。

 というわけで第二階層の入り口まで、何の労力もかけずに到着した。


「お初にお目にかかる。第二階層での護衛役をつとめさせていただくリーダーのミラだ。一応これでもAランクパーティーだから今後付き合いがあるかもしれない。以後お見知りおきを」

「俺たちは何度か会ったことがあるな。よろしく頼む」

「ああ、よく覚えてるよ。あんたらなら安心だ」

「そうだな。公私混同はしない」


 ルントとヴォルフガングの冒険者が挨拶にきた。

 先頭をミラ率いるルントのパーティーが、後方をヴォルフガングの冒険者が担当する。ヴォルフガングの冒険者は私も何度か見た覚えがある。クリスタと胸倉を掴み合ってた上級の人だ。心なしか握手している手も震えている気がする。しかも、握手してる時間が長い。握力対決でもしてるのかな。

 ルントの冒険者のパーティー構成もヴォルフガングの冒険者のパーティー構成も似たものを感じる。第二階層を滞りなく突破するために編成された遠距離を主軸にして戦うメンバーだ。

 

「第一階層もかなりの匂いがしたけど、第二階層は第二階層でまた独特な匂いがするね」

「あんまり喋りたくないかも」


 ネーヴの言う通り、第一階層は腐敗臭や汚物の匂いが立ち込めていて不快ではあったけど、嗅ぎ慣れない匂いじゃなかった。第二階層はなんというか自然の匂いがした。そう言うと聞こえはいいけど、実際は擦り付けられてるようなしつこく強烈な匂いが脳に直接届く。早く第三階層に行きたかった。足が速くなるのは仕方がないことだ。ありがたいことにみんな同じ気持ちなのか進む速度は速い。

 次の階層への道のりは簡易ながら整備されていた。なんと木材を運び込んで小さな橋が作られていたのだ。その距離は視界には収まらないほどだ。この毒の沼地にこれほどの長さの橋を架けるなんて途方もない労力を要したのは想像に難くない。

 何度か沼からカエルの魔物が顔をだし、私たちを襲おうとしたけど、大抵はそうなる前に矢で射られるか魔術で排除された。なんて順調なんだ。このまま何事もなく第三階層まで行けるんじゃないか。そしたら、こんな臭いところからはおさらばだ。

 そんなことを考えていたけど現実はそんなに甘くはなかった。

 私はすっかり忘れていたけど、第一階層に第二階層の魔物が侵食していっているということは、第二階層にも第三階層の魔物が現れるということだ。そして、この毒の沼エリアでそれが起きるということの凶悪さを私は知ることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ