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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
合同ダンジョン攻略『暗殺者のダンジョン』
68/108

68.パーティーの要

「あれ?みんないるじゃーん」


 スレイは断りを入れてからテントに入ってきたけど、モネスには遠慮というものがなく、ずかずかと踏み入ってきた。最初からフレンドリーだった、悪く言えば馴れ馴れしかったから特に何も思わない。というより、冒険者ならこれくらい当たり前だ。私の周りには礼儀正しいのが多すぎる。まあ、モネスは一番冒険者らしくない格好をしてるんだけどね。


「なにしてたの?」

「冒険者ならやることは一つだ。攻略のことで話し合っていた。ヘクターの中にはイメージが出来上がってるんだろうが、俺たちは即席のパーティーだ。不安が募るのも当然だ」

「ふーん、まあいいんじゃない?ヘクターほ一人で抱え込むとこあるし。現場で勝手な判断さえしなきゃ知っておいて損ないよね」

「そういうおまえはヘクターのとこにいなくていいのか?そ、その……あ、あぷろーちしてるんだろ?」


 スレイが言葉を濁した。

 鈍い私でもなんとなくピンときた。言われてみればヘクターにべたべたしてたし。


「そうだ!ちょっと聞いてよー。せっかく二人きりになれたのに邪魔が入ったんだよー」

「もしかしてクリスタ?」


 私がふと思い浮かんだことを口にしたら顔面寸止めまで接近された。綺麗な眼球がキラキラと輝いてる様を見せつけられた。


「そう!あんだけ噛み付いておいて何の用があるってのよ。ほんとは私も一緒にあの女の言い分を聞きたかったところだけど、ヘクターにどっか行けって言われて追い出されちゃったの」

「は、はあ……お気の毒さま?」


 あまりの勢いにそんな返ししか出来ない。

 な、なんかキャラ違くない?


「言いたいことはわかる。これがモネスの素だ。ヘクターの前では猫を被ってる」

「失礼ね。あの私も私、この私も私よ。好きな男の前で自分をよく見せたいのは当たり前じゃない。ていうか、ヘクターもなんで私に靡かないのよ。この私があんなにアピールしてるのに。ちょっと鈍いんじゃないの?」


 うん、ある意味わかりやすい性格だなあ。

 腹の底が見えないタイプよりよっぽど楽ではある。いいか悪いかは別としてだ。支援系の冒険者は清廉潔白で大人しいイメージがあったけど、モネスはまったく逆の肉食系って感じだ。そのへんの男ならころっと落とされてるかもしれない。


「モネスの恋を応援したいのは山々だけどヘクターは譲れないな。うちのクリスタとくっつけるんだからなあ!」


 とんでもないことをネーヴが言い放つ。


「なに、この人?どういうこと?」

「さあ……俺にもわからん」


 モネスがスレイに尋ねると、スレイは腕を組んで目を瞑りながら苦悶に似た声で答えた。

 ちなみに私にもさっぱりだ。ネーヴの得意げな表情が見てらんない。時々突飛なことを言うけど今回は過去一番だ。クリスタとヘクターの恋愛事情なんて興味ないし、なんなら三角関係なんて面倒臭いにも程がある。どうしてそこにこじつけようとするのか。私たちは明日トップクラスに危険なダンジョンを攻略しにいくのに。


「あのねえ、私のほうがヘクターと付き合いが長いの。それがなんでぽっと出の女にとられなきゃなんないの?」


 積極的にモネスが誘ってるのにその誘いに乗らないということはヘクターという男は相当身持ちが硬いんじゃないか。それとも、本当に鈍いんだろうか。そうだとしたら、私よりも人間関係に難儀してそうだ。


「愛に時間なんて関係ないな。その点、うちのクリスタは一見相性が悪いように見えるけど、お互い言いたいことを言える風通しの良い関係とも言える。明日起きた頃にはきっと肩を組んで仲良くダンジョンの入り口に立ってるさ!」


 いや、なんでだよ。ヘクターもクリスタもいない場所で何の話してるんだ!しかも、微妙にネーヴの男女の親密な関係の解像度が低い。私でもわかるぞ。そういう関係の男女は肩じゃなくて腕組むんだ。手繋いだりさあ。


「あ、あのー!話戻しませんかぁ……?私たち、明日の話をしにきたわけで……」


 ビビアナの口から出たとは思えない大きさの声に全員がビビアナを見た。その声は徐々に小さくなっていって最後にはもにょもにょと口ごもるようになった。

 いいぞ、ビビアナ。すごい勇気だ。

 変な風にヒートアップしたテント内の空気がようやく正常な状態に戻ってきた。モネスもこれ以上ネーヴと言い争うのは不毛だと判断したんだろう。テントの隅っこに仕舞われた椅子をテーブルまで持ってきて腕を組んで座った。


「私は今回ヒーラーを担当するわ。普段は別のパーティーで活動してるけど私がいないと攻略できないって言われたから参加したの」

「今回はってことはいつもは違う役割を?」


 カタリナがモネスに尋ねた。


「Aランクがいく階層にもなると回復だけしか出来ない冒険者はお荷物なの。最低でも自衛が出来るぐらいには鍛えておかないとダメね。だから、ある程度はソロでも戦える。さすがに集団に囲まれたら無理だけどね。スキルは『魔力回復強化』と『持久力強化』よ。私が前線でバテるなんてことはないから安心して」


 そのスキルだけでヘクターがモネスをパーティーメンバーに選んだ理由が理解できた。モネスはダンジョンに挑む魔術師やヒーラーが喉から手が出るほど欲しがるスキルを二つも所持してる。しかも、今回のダンジョン攻略は撤退という言葉は事実上存在しない。

 モネスがパーティーの要になるというのは誇張のない真実だ。

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