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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
合同ダンジョン攻略『暗殺者のダンジョン』
64/108

64.ダンジョンの記憶

 暗殺者のダンジョンの概要はとりあえず把握できた。

 第一階層はスラム街、第二階層は毒沼が広がる湿地帯、第三階層は洞窟だ。そして、最後に語られた第四階層はなんというか、想像通りのものだった。

 でも、それが想像通りであるのは私たちが類似したダンジョンを経験済みであるからで、その経験をもとにある仮定を導き出してるからに他ならない。

 一旦、ヘクターたちと別れ、移動の疲れを癒すためにルント側が用意してくれたテントで腰を落ち着かせた。カタリナは打ち合わせのためにヘクターのところに残った。

 ちらっと聞いたかぎりだと、カタリナは後方支援の陣頭指揮を任されるわけだ。

 私たちのダンジョン攻略が順調に行けば必要のない役割だ。でも、絶対じゃない。一番現場を知ってるヘクターが必要としたのなら、かなりの確率で魔物の流出は起きる。

 指揮がないと無駄な混乱を招くのは経験の浅い私でさえ理解してる。ある意味この拠点の中だと1番の経験者なんだけどね。でも、あの時はアストリッドとオズワルドに任せっきりだったからなあ。


「仮定したとおりだ。おそらくダンジョンの構造はそのダンジョンの主の記憶に関係してるね」


 ネーヴの言葉に強く頷く。私も同じことを考えてた。

 ダンジョンの特色は階層を隔てても何かの一貫性を持つ。暗殺者のダンジョンの場合、毒を持つ魔物が出る。そして、『闇魔法』を操る黒騎士レオを倒したダンジョンだと死者が出現した。

 もちろん、その他のダンジョンでもその法則は崩れない。階層が進んでも回収できるアイテムは前の階層の品質が高いものや、上位互換だ。

 

「そうだね。これで暗殺者のダンジョンのボスがリーゼロッテならほぼ確定って言っていいんじゃないかな」

「ああ、『シーカー』のスキルで覗き見たレオの記憶の断片か。一応確認するが、リーゼロッテに関しての情報は他にはないよな?」


 クリスタの質問に私は首を横に振った。

 リーゼロッテの情報はすでに二人には伝えてある。服装は冒険者とも騎士とも違う。一見すると身を守る防具の一つも着けてない。さも自分が攻撃なんてくらうはずがないとでも言いたげな自信のある表情。そして、その手で弄んでたナイフは鈍く光が反射していた。


「クリスタ、大丈夫?体の調子が悪いなら早めに休んだほうがいい。明日の朝にはもうダンジョンの中だ。準備は私たちだけでやっとくからさ」


 明らかに様子がおかしいクリスタにネーヴが声をかけた。


「いや、それはダメだ。パーティーの命運を担う備品を自分で見もせずに任せるのは、あたしの冒険者としての矜持が許さない。要はあいつの顔さえ思い浮かべなきゃいいだけだ」


 そう自分に言い聞かせるように言ったクリスタの背もたれはすでにバキバキに破壊されてた。あまりにも説得力がない。


「でも、正直事実だよね。ヘクターの言ってたことは」

「おい、まじでやめろ。せめてあいつの名前は出すな」


 あ、名前ださなかったらいいんだ。

 ヘクターはクリスタに実績があるのに中級冒険者に留まってるのが気に入らないと言ってた。でも、それを言ったら私はクリスタ以上にヘクターから責められる立場にある。ヘクターは私の本当の名前を知ってる素振りだったし、どうして私は許されたんだ。まあ、責められたところで鬱陶しいだけなんだけどね。


「冒険者ギルド統合の話が本格的に実施することになったら、どの道あたしは最高ランクに上がることになる。そこまでのフォローはできないってヴィクトールにはすでに言われてるよ」

「じゃあ、そのこと言えばよかったじゃん」

「何年も後の話だ。さすがのあたしもその時には観念するつもりさ。だが、限界までは最前線のことだけを考えていたい。上に上がれば上がるほど外面を気にしないといけない。そんなのはまっぴらだ。貴族の作法も忘れちまったよ」


 時々思い出してはすぐに忘れてしまうんだけど、クリスタは敗戦国ローニアの貴族だった。成人する前に没落して何を思ったか敵国の冒険者になった経緯がある。そのあたりの事情をクリスタは語りたがらない。貴族時代の栄光に縋らないところからも本当にクリスタは貴族に向いてなかったのだろう。それでも、没落せずに貴族のままだったとしても、彼女ならうまくやれていたと思う。

 作法を忘れたと言ってるけど、たぶんその時になったら正しい礼節を披露する。こいつは私がぶん殴りたくなるほどの天才なんだ。

 

「第四階層はお城の中だ。そこから先は未知だっていうけど、最下層は近そうだね」


 クリスタに配慮してか、ネーヴが最初の話に戻した。

 私の『シーカー』のスキルでリーゼロッテを見た城内だったら、そもそもが第四階層が最下層だって可能性もある。そして、そもそもこの話になった理由がどうもヘクターから聞いた城内の様子が私の記憶と酷似しているからだった。

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