61.ダンジョン攻略パーティー
「それじゃ、メインの攻略パーティーのみで作戦を練るってこと?」
「そうだ。もちろん、ダンジョン攻略中のリーダーは俺だ。騎士のねえちゃんには拠点からの指示をお願いしたい。ああして集まった中で俺が歩み寄る姿勢を見せたんだ。ある程度は言うことを聞いてくれるはずだぜ。あいつらはどこの馬の骨かもわからんやつに手は貸さん。立場を示す必要がある」
ネーヴの質問に椅子にふんぞり返って座りながらヘクターはドヤ顔を披露した。ほんとにそんな配慮をしながら立ち回ってたのか疑問だ。でも、実際あの冒険者たちはヘクターの言うことをぶつくさ言いながらも従った。ヘクターにAランク冒険者の威光がある証拠だ。
「それは……感謝する」
「臨時ではあるが俺の仲間を紹介するぜ。俺は普段ソロだからな。スレイに、ビビアナに、モネス。タンクに、魔術師に、ヒーラーだ。そんで、俺がスカウト兼アタッカーってところだ。名前はヘクター様だ。なんか知らんけど名誉爵位をもらってる。大した役にも立たないがね。それでも責任を伴う。だから、この攻略に関する全てのことは俺が責任を持つ。今回の合同作戦を提案したのも俺だ。ここまではわかるな?」
「ああ、続けてくれ」
クリスタが相槌をうって続きを促した。
「まずはそちらの自己紹介からお願いしたい。それからこのダンジョンの現状について説明させてもらう」
「あたしはクリスタだ。あんたらのリーダーは随分変わったデートの誘い方をするじゃないか」
「はは!ウケる!」
ヒーラーとして紹介されてたモネスが大ウケしてる。
基本的に冒険者にヒーラーはほとんどいない。魔術師がヒーラーを兼任してることが大半だ。そもそもダンジョン内で回復魔法を必要とする怪我を負うということはかなり致命的なシーンであることが多い。クリスタも回復魔法を使えるけど、戦闘中は自分にしか使わないし、ネーヴや私に使うとしても休息時のみだ。中途半端なヒーラーはパーティーのお荷物だし、お荷物である以上育たない。普通のヒーラーは町で大人しくしてるものだ。
Aランクの冒険者に認められるほど有能だということは、前線でもそれなりに自分の身を守れるヒーラーだということだ。それか、お荷物を連れていってもあまりあるアドバンテージがあるか。
モネスは聖職者が多いヒーラーにそぐわぬ垢ぬけた格好をしてる。めちゃくちゃお洒落だ。ネーヴはクール系だけど、モネスは可愛い系だ。服に華美な装飾はさすがに付けてないけど、耳飾りとか指輪とかはがっつりつけてる。
ビビアナは逆に私と似た感じの子だ。何なら私より根暗かもしれない。さっきからずっと視線が泳いでるし、小刻みに体が震えてる。ほんとにこんな子が今からダンジョンに挑むのかと一抹の不安を覚えるぐらいだった。でも、服はモネスと対照的な暗めな色合いな服ながら最高に似合ってた。きっとモネスの着せ替え人形にさせられてるんだろうな。
スレイは無口な男だ。タンク役と言ってたのにヘクターよりも身長が低いし、ガタイがいいわけでもない。でもなんか、職人って感じの独特な雰囲気があった。モネスは男性のファッションについて興味がないのかスレイの服は普通の冒険者の出で立ちだ。
「私はシュネーヴだ。3人の中でタンク役をしてる。魔術に関しては期待しないでほしい」
「あんたのことはルントでもよく耳にするよ。人助けが好きなんだって?嫌いじゃないぜ。目の前で人が死ぬのは気持ちの良いもんじゃない」
「同感だね」
え!?ネーヴってそんな有名なの?私とずっと一緒にいるのに?じゃあ、私も名が知れ渡ってるのかな。ステラとしてではなく、オーステアとして。それはそれでイヤだな。
ネーヴは冒険者活動をしないオフの日も街中で困ってる人を見かけたらよく助けにいってた。その中には商人もいたからルントに渡った商人が噂を広めたのかもしれない。それにしても、他国の冒険者に名前を知られてるってよっぽどのことだ。
「私はオーステアだ。よろしく」
「よし、自己紹介も終わったところで概要を説明するぞ」
なんでだよ!なんか一言くれよ!
ちょっと緊張した私の気持ちを返しておくれ。ていうか、自己紹介はいつまで経っても慣れない。もうこれからはなしでいいんじゃないか。あー、だんだん苛々してきた。
「なあ、今回はあの喋るネコはいないのか?」
カタリナが私の耳元で囁いた。
喋るネコというのはゲラートのことだ。
「今回は私用で不在だよ。私たち3人だけ」
ゲラートは何やら魔族領で不穏な動きがあるということでどうしても行かせてほしいと懇願してきた。私はダメだと言って徹底抗戦の構えをとったけど、ゲラートはあろうことはネーヴに泣きついた。ネーヴが交渉役になった瞬間私の敗北は確定したも同然だった。私にネーヴのお願いを拒否できるわけがないからな。あいつは卑怯なやつだ。
まあ、エドがダンジョンの主を倒して『闇魔法』を会得したんだ。全ての吸血鬼を殲滅すると言ってた男が何もしないわけがない。きっとそういうことなんだろう。




