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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
吸血鬼の影『彷徨う死のダンジョン』
53/108

53.とどめの一撃

「あいつの分身、左のかかと!そこにレオの核がある!それを破壊して!」

「な……なぜわかったぁ!」


 いや、すげー分かりやすい反応すんなよ。どっちみち狙うんだけどね。

 レオの弱点は魔力を生成する源を破壊すると生命活動も停止することだ。それが不死身の代償だともいっていい。普通の人間なら体内に存在する魔力の源を絶たれたら二度と魔術が使えなくなるだけで生きていく分には問題ない。そもそも核という形で存在していない。呪術返しにあったり、魔力を過剰に使用したり、そういった際に魔力を生み出すことができなくなる。

 レオには核という形で存在してる。そして、それは魂と融合し、彼自身となってる。つまり、最初からレオは本体なんかじゃなかったんだ。レオのダメージがすぐに治癒されてしまうのはダンジョンボスの特性だからでも、レオ自身が不死身だからでもない。いわば、脳のみで動く生命体なんだ。


「オーケー」


 短く、そして、低くクリスタが答える。

 抑えていた魔力を一気に解き放つ。闇の触手などお構いなしだ。確実に殺すために出し惜しみなく全てを出し切る。当然、触手の矛先が全てクリスタに向けられる。慌てて間合いを取ったレオとの距離は約20歩。クリスタなら一呼吸でいける。まあ、触手さえなければの話だ。

 これ以上、距離を離されまいとネーヴがレオの分身に畳みかける。応戦するレオの動きは鈍い。

 そこで私は気づいた。ゲラートの精神干渉は魂に直接作用するものだ。レオの本当の本体が核そのものだったとしたら、あの分身も影響を受けてるはずだ。分身にそんな挙動は見られなかったけど、レオは咄嗟に悟られまいと耐えたんだ。

 だったら、いける!

 クリスタは触手を切断し、あるいは身を躱し、レオに肉迫する。その手に持つ細剣は次第に魔力が膨れ上がっていく。一撃で決めるためのクリスタの最大火力だ。

 でも、最後の最後でレオが足掻いてみせた。

 ネーヴの周りの地面から別の触手が生え、ネーヴを拘束する。突然の出来事に反応が遅れたネーヴは身動きを封じられた。


「ここにきて新技か!やってくれるね!」

「おぬしなぜ闇に侵食されない?魔力の流れがないというのに!」


 ネーヴに巻き付いた闇がネーヴに侵食することはなかった。代わりに、ネーヴの眼がある特徴を示してた。ネーヴがドラゴンであるという特徴が。だからこそ、ネーヴへの拘束は一時しのぎに過ぎなかった。でも、今はその一時しのぎが重い。

 弱点である左のかかとをかばうように構えるレオ。腹を括ったその剣には迷いがない。

 凌がれれば負け、通れば勝ち。

 瀬戸際の戦いを前に、クリスタは笑っていた。その目にはもはやレオしか映ってない。倒すべき敵として。


「私だけ何もしないってわけにはいかないよね」


 さすがにあの量の触手をいなすのにはクリスタでも無理がある。彼女はさしちがえるつもりだ。その覚悟には敬意すら抱く。だから、突破口を少しだけ広げてあげた。

 私がもつ魔剣にありったけの魔力を流し込む。自分の魔力を全てだ。そして、それを投げた。この場でもっとも強い魔力の奔流だ。


「ほら、餌だよ」


 早速触手たちは飛びついた。

 レオは闇の触手を操ってるわけじゃない。より強い魔力の流れに反応するだけだ。だから、対策は容易だ。それをクリスタが教えてくれた。これはそのお返しだ。

 レオへの活路が開く。もう阻むものは大剣しかない。


「うおおおおおお!」


 ようやく、あと一歩、そのタイミングで意表を突く出来事が起きた。レオが分身を解除したんだ。核があるはずの分身が空中に霧散する。

 クリスタの攻撃が行き場を失った。


「もう一つの身体!右肩、肩甲骨のあたり!」


 すかさず私は叫んだ。この機会を逃せば死ぬのは私たちだ。でも、遠い。あまりに遠い。

 もう私に魔力は残されてない。触手はもう魔剣から離れた。間も無くクリスタを襲う。彼女にもう一回走り抜ける余力はあるんだろうか。


「女性をこんな目に遭わせるなんて君は礼儀がなってないね。あんまりじらすと嫌われるよ?」


 そいつはレオの肩の上に乗っていた。

 エドの腕は片方なくなっていたけど、それ以外の場所は完治してる。残った右腕には背中にあった短槍が握られてた。

 そして、渾身の力を込めてエドは振り下ろした。

 その一撃は私が『シーカー』で解析した場所を的確に貫いた。レオを取り巻く闇が周囲に飛び広がる。でも、それは先程までの魔力を感じなかった。体を侵蝕することなく、ただ舞い落ちる。

 レオは膝をついて崩れ落ちた。

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