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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
吸血鬼の影『彷徨う死のダンジョン』
51/108

51.レオの弱点

 闇が渦を巻いて地面から舞い上がる。そして、一箇所に集中して形を成した。そこにレオの分身が誕生したのである。ご丁寧に大剣の重厚感まで再現されていて、レオと同等、もしくはそれに近い能力を有してるのが伝わってきた。一人でも苦戦したレオが二人いる。その現実に私は泣いちゃいそうだった。


「さすがに死を覚悟しないといけないかもね」


 ネーヴの声に冗談は含まれてない。さっきまでの戦いだってかなり危ない橋を渡ってた。クリスタの機転がなかったら、そのままずるずると死に近づくだけだった。

 レオの脅威度が倍になった。いや、数が増えたというのは純粋な足し算じゃない。手数が増え、連携も加わる。それなのに、私たちにはさっきと同じ手の内しかなく、しかも、私に至っては『シーカー』以外の手口を全て明かしてしまってる。

 いや、だめだ。こんな後ろ向きなことばかり考えちゃ。


「オーステア、『シーカー』を使え。やつの弱点を看破するんだ。その間のあんたは、あたしが守る」


 クリスタがレオに聞こえないように私に囁いた。

 正直、気乗りしないけど心強いことには変わりない。どうせ守られるならネーヴがよかったな。なんて冗談はさておき、私はクリスタの背後に回った。

 クリスタに言われて自分が失念してたことに気が付いた。レオは不死身だ。その仕組みを解明しない限り私たちは勝てない。一度に考えないといけないことが多すぎる。私じゃ無理だ。でも、『シーカー』のスキルに集中しろと言われたなら他のことは考えずに全力でやれる。


「ネーヴ!あれ相手に盾役は出来そう?」

「そうだねえ。もし二人ともこっちにくるなら一分も持たないかな」

「聞いたかい?ここが正念場だ。なに、気負うこたぁない。しくじったら全員死ぬだけさ」


 めっちゃ不安になること言うなよ。まじでこいつやばいだろ。

 そう口にしたかったけどうまく声にできる気がしなかったのでやめた。まあ、クリスタがこうなのは今に始まったことじゃない。私の目がかっぴらいたのに満足してクリスタは正面に視線を戻した。気を取り直して私も意識をレオに向ける。


「エド!出来るだけ時間を稼げ!死ななきゃそれでいい」

「なにかわからないけど……やるしかないようだね」


 エドは『空間収納』の中から手に持ってる二本とは別に短槍を四つ取り出した。それを全て背中の入れ物に収める。戦闘中、敵の目の前で『空間収納』のスキルの中から武器を取り出すのは熟練者でも至難の業だ。ここから先はその隙すら与えてもらえないことをエドは理解してる。


「では参ろうぞ」


 そうレオは宣言し、本体はネーヴ、分身はエドに襲い掛かった。

 エドは身の毛もよだつ速度で振り下ろされる大剣を大きく距離を空けるように避けた。エドがいた地点に闇の霧が噴出する。もし受け止めていたらエドの体は闇に飲み込まれていただろう。受け止めることすら許さないその一撃に、私はネーヴのことが心配になり、視線をネーヴにやった。

 ネーヴの戦闘センスに驚かされるばかりだ。レオの大剣は空を切り、地面に突き刺さっていた。さっきまで必ず大剣を食い止めてたのにネーヴは回避することを選択したんだ。

 でも、レオの攻撃はそこじゃ止まない。また一振り、もう一振りとネーヴとエドに食らいつく。そして、その背中からは触手が生え、再び魔力のあるほうに暴れ出す。それはもちろん、『シーカー』のスキルを使用中の私のほうにも飛んできた。

 それをクリスタが弾き返す。あるいは、魔力の流れを誘導し、触手の打撃位置をそらした。

 こいつまじで天才かよ。この短時間で対策できるのありえない。ていうか、いつもスカした顔してんのに努力してるとこ絶対に人に見せないのなんかムカつくわ。絶対これ嫉妬なんだけど劣等感バシバシ感じてるから絶対に認めたくないわ。

 

「オーステア、出来そうかい?」

「まだだよ!」


 声を掛けられてどっきりする。『シーカー』のスキルはすでに発動済みだ。でも、レオとの距離の関係でまだうまくはいってない。今はまだ反応できるが、ここから先はそうはいかない。深く潜れば潜るほど意識はそっちに持ってかれる。

 発動してから5呼吸したのち、私はレオを鑑定することに成功した。

 成功したからといって、膨大に流れる情報は私の頭じゃ処理しきれない。ここからが勝負だ。頭の中を直接殴られるような吐き気と痛みがこれまで以上に私の意識を刈り取ろうとしてくる。レオの弱点を探るため、勝ちをもぎ取るために私は必死で意識を保とうとした。ちなみに、もう胃の内容物は吐き出してる。立ってることもままならなくなった。膝をつき、肘をつく。そこで踏みとどまった。うつ伏せで倒れようものならそのまま気絶してしまう。


「そこで何をしておる?」


 その様子にレオが勘付いた。

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