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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
吸血鬼の影『彷徨う死のダンジョン』
49/108

49.闇魔法

 レオの纏った闇が触手のような形態になって拡散する。触れれば命が危ういのはその触手の発する魔力が教えてくれた。

 鞭のようにしなり、あるいは直線状に迫るそれをかいくぐる。でも、その先で迎えるのは大剣だ。大剣にあるまじき速度で振るわれる攻撃を躱わす間に反撃の機会を奪われる。背後から来る『闇魔法』の攻撃にリソースを割かれ、レオとの距離を取らざるをえなくなる。


「苛烈だね!ちょっとオーステア!あんた魔の森のダンジョンをソロでクリアしたんだろ?なんか良い方法はないのかい?」

「無理!」


 魔の森のダンジョンは最下層まで維持できる体力があれば難なくクリアできるダンジョンだった。普通の人間には過酷だけど、私には簡単だった。

 自分が一番自分のことを知ってる。私は短期決戦が苦手だ。クリスタに負けた時以前からの課題だった。

 その解決策として、『空間収納』スキルからの直接抜刀を編み出した。それで当分はうまくいってた。うまくいかなくでもフィジカルでなんとかなってた。その両方が通用しない場面に出くわすと、私は体力にものを言わすしかなくなるんだ。

 ネーヴも三年前に比べたら人間の体が馴染んで格段に強くなってる。苦手だった対人戦も今なら問題なく適応できる。だから、私は三人の中で一番弱い。

 私の強みが活かせる唯一の方法は『魔鉄錬成』による魔剣ぐらいだ。でも、それをどうやって活かすか全然想像できない。


「魔力だ!あの闇魔法は魔力の流れを読んでる!強ければ強いほど惹きつける。クリスタ、強力な魔術の行使は危険だ!」

「はいよ!」


 ネーヴの掛け声にクリスタが剣の構え方を変える。下げ気味だった剣先が上を向く。魔術メインの戦いから剣を中心に切り替えたんだ。その剣にうっすらと魔力を通し、迎え撃つ。

 『闇魔法』で造れた触手はネーヴの指摘どおり、魔力の多いほうに多く流れた。最初はクリスタにより多く襲いかかった計9本の触手はクリスタとエド、そして私とゲラートの三人と一匹に分散された。ネーヴにだけは一切反応を示さなかった。

 だからこそ、ネーヴは盾役を買ってでた。

 ネーヴは魔力こそ保有してるけど、その身体能力に頼った攻撃を得意としてる。多少魔力を使うことはあれど、それは身体強化によるものだ。つまり、ネーヴは身体強化すらも使わない状態でレオと対面してるわけだ。


「聡いな!」


 レオがネーヴと打ち合いながら称賛を送る。掠っただけでも命を削られるような剣戟。かろうじてネーヴは受け切ってる。でも、それも長くはない。ネーヴだけじゃ決め手に欠ける。

 だからといって、私が近づけるほど甘くはなかった。魔力の流れを強くすれば、その分の触手に妨害される。魔剣に魔力を付与しようものなら大変なことになる。クリスタもエドもゲラートも同じだ。

 だったら、やることは一つしかない。


「オーステア!エド!合図を出す!一気にやるぞ!」


 クリスタが叫んだ。

 具体的な指示はない。でも、やるからにはやらなきゃならない。じゃないと、道は開けない。


「なにかわかんないけどいいね。勝利の女神を信じるよ」


 エドがウインクする。クリスタはそれを無視した。

 合図を待つ。クリスタが何をするかは分からない。それでも、レオを凝視し、頭をフル回転させて自分が出来ることを模索する。

 そして、その時はきた。


「今だ!」


 地面がいたるところで爆ぜた。凝縮された魔力が噴出し、荒々しい魔力が渦を巻く。

 私は自分のすべきことを瞬時に理解し、レオに向かって地面を蹴った。

 爆発した地面に触手が集中する。レオへの進路が開けた。でも、それは一時的なことだ。だから、この一瞬に賭けるしかない。クリスタもエドも一足早く踏み出していた。


「ぬ!?」


 直前でレオがこちらの動きを察知する。不利な立ち位置から転じようとネーヴを突き飛ばし、距離を取ろうとするけど、それをネーヴは許さなかった。

 今まで全て防いでいたレオの攻撃をここにきて回避する。そして、私たちに合わせるように棍棒の突きをレオの腹めがけて放った。

 レオの巨体が浮く。これでもう、レオは自慢の機動力を損なった。


「見事なり!」


 そう褒め称えるレオの体に私は魔剣を、クリスタは細剣を、そして、エドは短槍を叩き込んだ。

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