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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
吸血鬼の影『彷徨う死のダンジョン』
44/108

44.臨時協定

「つまり、あんたたちは他派閥の野望を阻止するためにダンジョンに乗り込んだはいいが、ダンジョンの仕組みを理解してなくて突然襲来したゾンビの群れに押し込まれてダンジョンの最奥まで来てしまったってことかい?」

「そのとおりだよ、気高い瞳のレディ。まるで君は戦乙女のような高潔さと勇ましさをもつ素晴らしき人だね」


 いちいち肯定するのにこいつは人を持ち上げないといけない病気か何かなのか。蛇足のほうが長い。クリスタもいい加減天井を仰いで私を睨んできた。最初から逃げるなと責めてるみたいだ。私はどう頑張ってもこいつと会話できる気がしないのでその批難は甘んじて受けよう。

 さあ、クリスタ!ネーヴと私のためにエドから情報を引き出してくれたまえ!


「あたしはクリスタってんだ。頼むから普通に話してくれないか?」

「お気に召しませんでしたか?」

「とにかく話を脱線させるな。でかい修飾語もくさい表現もなしだ。わかった?」

「そんなことしたら死んでしまうじゃないか!」


 さすがに本人を目の前にして、「死ね」とは言えないのか代わりにクリスタは眼をガン開きにさせた。さすがにいくらクリスタが美人の部類だからって眼球がひん剥けるぐらい造形が崩れたら顔面に恐怖しか残ってない。そう錯覚させるぐらいこちらにも圧が届いた。

 

「それで……私たちと共同戦線を張りたいってことだよね?」

「ああ、君たちは救助対象を無事に村まで送り返せるし、俺たちも悪だくみを阻止したうえで生還できる。そこのネコも満足できる結果だと思うけどどうかな?」


 急にエドと視線が合ったゲラートはネーヴの足にさっと回り込んだ。魔族だとちゃっかりバレてた。明らかにペットとしてじゃなく、意見を主張できる一人としてゲラートのことを見ている。


「信用できないな」

「君のことはかねがね聞いているよ、ゲラートさん。だいぶ気まぐれでどこほっつき歩いてるかわからないって評判だったよ」

「はああああ?誰から聞いたそんなこと!」


 まあ、ほとんど私たちと一緒にいるし、何なら契約魔術で縛られてるから自由に行動できないしね。まだ魔王の配下で許されてるのが不思議なぐらいだよね。下手したら内通者扱いだよ。契約魔術に反した行為をしたら苦痛を伴うのに、魔王のことに関しては口を割らなかったからこいつ意外と忠誠心高いんだよね。そこから、クリスタもあまり魔族関連には深入りしないようになったし。

 

「悪いが俺は女性にしか興味がないのでね。全然覚えてないんだ」

「うそつけこら!」

「今そんな話をしてる場合じゃないんだ。ゲラート、ちょっと黙っててくれないか?ただでさえイラついてるんだ。これ以上頭に響くことはやめろ」


 最後のほうは語気強めでクリスタが制止した。ゲラートが乗り出した体をしゅんとさせて後退していく。そういえば、この前ネーヴがその様子を見てめちゃくちゃ可愛いって言ってたな。もしかしたらネーヴはネコが好きなのかもしれない。それとも、サディストなのかな。

 そんなどうでもいいことを考えるぐらいにはこの状況から現実逃避したくなってた。


「協力するのはやぶさかじゃない。こっちとしても提供してくれる戦力があれば願ってもないことだからね。上の階層のサイクルを検証するより、はるかに攻略してしまったほうが確実だ。この下の階層にダンジョンの主がいるってんならね」

「ああ、それは間違いないよ。やつ一匹しか下の階層にいなかった。信じてほしい。君たちのような美しい花に嘘なんてつけないよ!君たちに比べたら俺なんて雑草の中にいる虫だ!」

「……こ」

「ダメだ」


 クリスタの殺していいか発言を発声する前にネーヴが抑止する。

 

「エド、背中を預ける前にすべきことがある。あなたたちの戦力がどの程度なのかも把握しないといけないしね。仲間を失ってしまって間もないところ申し訳ないが、ダンジョンの主の情報も共有してほしい」

「そうだね。少し擦り合わせの必要がある。協力することに積極的ではあるけど、俺たちはお互いのことを知らない。君たちの疑念を少しでも晴らせるよう努力するよ」


 そう言ってエドは私たちを椅子があるほうに来るよう促した。念のため、『シーカー』のスキルで罠がないか確認したけど普通の椅子だった。自分たちで持ち込んだ椅子のようだ。となると、向こうにも『空間収納』スキル持ちがいるということだ。


「さて、すまないけどお名前を聞かせてもらえるかな?その三角帽子も外してくれると俺としては幸せな気分になれるよ」

「それはイヤ。名前はオーステアだ」

「素敵な名前だね。それに可憐な声だ」


 さっきから鳥肌やばいんだけど、どうにかなんないのかな。


「それで……早速聞きたいんだけどダンジョンの主はどんな姿をしてた?」

「……まず先にそれを聞きたがるなんて、もしかしてある程度目星でもつけてた?」

「最悪な予感が当たらなきゃいいと思ってるだけさ」


 クリスタの発言に少しだけ飄々とした佇まいを真面目なものにしたエド。その様子からクリスタの悪い予感は的中したようだ。ネーヴもそれを察した。だけど、その返答がどんな意味を持つのかは私にしか分からない。大厄災を引き起こしたダンジョンの主を実際に見たのはこの中じゃ私だけだから。


「ダンジョンの主は、人型だったよ。鎧を着た、ね」


 そして、悪い予感は的中してしまうことになる。

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