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人間嫌いの魔族ステラの旅  作者: かに
吸血鬼の影『彷徨う死のダンジョン』
41/108

41.次の階層へ

誤字報告していただいた方まことにありがとうございます。

非常に助かります!

「どうやらもう大丈夫みたいだ」

「ふー!死ぬかと思ったぜ!」


 ネーヴの言葉に大きく安堵の息を吐くゲラート。クリスタに至っては仰向けになって天井を見つめていた。


「あたしゃ限界だよ」

「とりあえず一段落したからゆっくりするといいさ。まあ、ほんとの意味でこの危機を解決するにはこの先に進まないといけないけどね」


 豪華な外装はハリボテで、屋内は大きな穴が一つあるだけだった。吸血鬼たちの匂いはこの先に続いてる。その事実からして、この穴はダンジョンの最奥に繋がってる。


「普段はダンジョンから限界ギリギリまで資源を回収するけど、今回はそんな悠長なことを言ってられないな。どの道、このダンジョンの特性からして利用できそうな素材も食料もなさそうだ。気兼ねなく攻略に乗り出せるわけだ」


 ネーヴはダンジョン攻略に乗り気らしい。引き返せないならそれもありかもしれない。かなり行き当たりばったりだけど今回ばかりは仕方ない。


「はっ!この状況で言ってのける胆力に感動した。それしか手がなさそうだし、相も変わらず乗っからせてもらうよ」


 クリスタも俄然やる気だ。


「あんたら本来の目的忘れちゃいねえよな?忘れてねえならいいんだけどよぉ」

「うるさいやつだな。どっちを優先しようが向かう道は同じだろうがよ。いちいちオスのくせに細かいやつだな」

「ぐっ……ぐぬ……」


 もっと噛み付くかと楽しみにしてたのにゲラートは存外すぐに身を引いた。クリスタにゲラートが口で勝ったことがないのもあるけど、この件に関わってからはより顕著に見られた。なにかしらの負い目があるんだろうか。まあ、こいつの過去の所業は負い目しかないんだけどね。


「そうだね。まずは吸血鬼たちの言い分を聞かなきゃいけない。彼らが今になってダンジョンの最奥を目指そうとしてる理由とともにね。いつから暗躍してたか定かじゃないけど、このダンジョンに二面性があることは早い段階で気づいてたはずだ。彼らがダンジョンを攻略するだけならこちら側に悟られないように結界を張るだけで済んだはずだ。なのに、人間を攫った。強欲にも二兎を追ったか、それとも別の理由があるか……それによって対処が異なると私は考えてる」

「へえ……あの間にそこまで考えてたのかい……あたしは逃げることで精いっぱいだったよ」


 仰向けになってたクリスタは半身を起こしてネーヴの言葉に素直に感心していた。

 そうだよ。私のネーヴはすごいんだからね。


「具体的にはどんな理由があんだ?俺はこの件の真相を正確に把握しとかなきゃなんねえ。頼む、なるべくなら衝突は避けたいんだ」

「だったらなおさら吸血鬼どもに聞くべきだね。私の口から出る言葉は推測の域しか出ない」

「そうだな……悪かった」


 ゲラートはこのダンジョンを発見してから柄にもなくずっとそわそわしてる。それほど本来の主人ってやつが大事なんだ。だからこそ、私は苛立った。こいつは私の大切なものを奪ったのに、自分が奪われる立場になった途端態度を変えるのかと。

 殺すと言ってからもう3年たったから今更ゲラートを殺すつもりはない。殺す以外の方法で償わせる方法を教えてもらったからだ。でも、もしこの場にネーヴがいなかったら私はどうにかなってたかもしれない。


「オズ、大丈夫?」


 心配そうに私に声をかけてくれるネーヴに私は空元気に笑みを浮かべた。ネーヴが気にかけてくれたことによって多少はマシになった。だけど、もやもやした気持ちが晴れるわけじゃない。


「ありがとう。私は大丈夫だから」


 迷惑をかけたくなくて強がりを言ってしまう。私の独りよがりだ。頭じゃ分かってる。自分たちの利になる選択をしようとすればゲラートは非常に有用だ。だから、ずっと我慢してる。これからも我慢しなきゃいけない。

 スッとネーヴが手を差し伸べてくる。


「しばらくの間手を繋ごう。オズ成分を補給したいからさ」

「なにそれ」

「無理させてごめんね」


 そう言ってネーヴは私を軽く抱きしめてくれた。少し泣きそうになった。でも、今は泣いてる場合じゃない。それでも、ネーヴがそうしてくれたことはすごく嬉しかった。

 きっとネーヴが男だったら人たらしになってただろうな。それはそれでムカつくだろうな。はあ……何言ってんだ、私。

 なんて、やり取りをしてたらすでにクリスタは起き上がっていて、すでに準備万端と言わんばかりに中心にある穴を覗いてた。次の階層に向かう穴だ。穴といっても急な斜面になってて、多少苦労はするけど縄なしで降りられないことはない。そこから吸血鬼たちが降りて行った。彼らの匂いが下に続いてる。そして、そんなには遠くない。

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