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中二病に気をつけろ!  作者: 江藤乱世
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第七話 ~郁乃視点だよ~

 四人が出ていくのを確認し、私は口を開く。


「あの三人、どう思う?」


「あのマルチタスクというイマジナルの能力は使いこなせれば強力な能力でしょう。絵柄の意味が分かれば使いこなすことも可能でしょうし」


 その時扉がノックされ、返事をする間もなく扉が開く。


「話し合い、俺も参加させてもらう」


「……久曽神、伊吹達と出かけたのではなかったのか?」


 あの三人組の中で唯一の頭脳派。恐らくこいつのイマジナルの能力には隠し玉がある。そして本人はその能力を理解している。それはわかっているのだが、問い詰めたところで白状はしないだろう。そもそも隠している理由がわからないのだから引き出す方法もわからない。


「途中で戻ってきた。話し合いだそうだからな。あいつらは参加したところでほとんど理解できないだろう。あとで俺がまとめて要点だけを伝えることにする」


 久曽神はそう言いながら椅子に座る。恐らく私に不信を抱いての行動なのだろうが、まぁ今回は隠すような会話はする気がないので問題ない。


「構いませんよ。明日の話し合いをしようとしていたのです。一人くらいは参加しておくと良いかもしれません」


「まぁ、後で伝えるつもりだったが手間が省ける。その役目はお前に任せる」


 こいつは面倒見のいい奴だ。何故二人に親身になるのかは知らないが、そこだけはここ最近の行動から信用できる。


「それでは先ほどまでの続きですが、明日行う訓練について内容を決めましょう」


「柊の訓練は決まっているな。まずはあの記号の意味を覚える勉強だ」


「そうだな。ただ、あいつは物覚えが悪いから、やるなら絞った方がいいな」


 確かに、残りの日数で能力を多数習得するのは無理がある。覚えられて二つといったところだろうか。


「そういえば、あなたのイマジナルであるマイクの能力は何だったのでしょう」


 それは私も気になっていたことだ。どう考えてもこいつは自分の能力を隠している。恐らく使えないわけではないだろうと私は考えているが、事実はわからない。ここらあたりではっきりさせておいてもいいだろう。


「なんで俺のイマジナルを知ってるんだ?」


 さっきは確認できなかったからな。それはもっともな疑問だ。


「私が前もって伝えた。お前たちの訓練のためにな」


「……別に隠しているわけじゃないんだ。ただ、使うことに抵抗を覚えるというか…… まぁそれも恐らく明日にはわかる」


「明日?」


 明日の予定は放課後のこの世界における訓練だけ。それ以外の予定はないはず。少なくとも私の予定ではそうなっていた。


「これは俺の勝手な予定だ。いつまでもお前の好き勝手にはさせられないからな」


「……どういう意味だ?」


「お前の目的が分からない。何が目的だ?」


 なるほど、それで警戒されていたのか。だからこいつの私に対する態度が警戒心むき出しだったのか。それにしても――――


「目的? 言ってなかったか?」


 既に伝えたつもりだったのだが。


「言ってないな」


 久曽神の呆れたような反応に少し苛立ちを感じながら、私は言葉を続ける。


「私の目的は、生徒会長に贈られる特権の内、二つだ」


「……もしかして、あの部屋と免除の話か?」


 流石久曽神。他の二人とは違い、話が通りやすい。説明の手間が省ける。


「そうだ。私はこう見えても苦学生でな。生徒会長になれば生活費をすべて負担してくれる。それに特別な寮に住める。それが私の目的だ」


 生徒会長になればいろいろな特典が付いてくる。


 一つ目が彼らの目的である校則を新しく作り出す権利。


 二つ目が授業料やその他生活や娯楽に使う金銭の援助。


 三つ目が特別な寮部屋だ。


 破格の待遇だが、そんな旨みがなければ生徒会長など誰もやらないだろうという判断だ。現にそれだけの旨みがあっても、生徒会長が存在しない年がある。


「なるほど。それなら納得だ。だがあれは生徒会長である限りだったはずだが、まさか……」


「負けなければいいのだろう? 期待している」


「……わかった。そういうことなら俺も尽力しよう」


 久曽神はとりあえず納得してくれたようだ。何か思うところはあるようだが、そこは気にしないことにしたようだ。


「それで、お前の明日の予定とはなんなのだ?」


「明日、生徒会長と戦う。当然ただの野良試合として」


「そこで相手の力量を図るつもりか?」


「そういうことだ」


「だったら構わない。私はやらないが、好きにするといい」


 率先して動いてくれるのはありがたい。それに、久曽神の能力が分かるかもしれないのならば、観戦に行くべきか。


 さて、この今の戦力でどこまでやれるのか、明日の楽しみが増えた。


「じゃあ、俺はこれで失礼する。あいつらに合流することにするよ」


 そう言って久曽神はまた出かけていく。


「本当にあの三人で大丈夫なのですか?」


 久曽神が出ていってすぐカティナは心配そうに問いかけてくる。まったくこいつときたら。


「そう心配するな。私の目に狂いはない。私が目的のために、妥協するわけがないだろう?」


 目的のためには手段は選ばない。その為に最高の人選をしたつもりだ。


 目的達成のために、まずは当面の生活費からだ。


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