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愛されクソ雑魚TSエルフが紡ぐ異世界シンフォニー  作者: 桜寝子
第1部 第3章 【少女】エリンシア
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第41話 悩ませ幼女

「あー……今日も直帰しないとキツイかなぁ……ごめんねシアちゃん」


 鍛練が終わって帰る頃、やはり相当疲れているのかセシリアが残念そうに謝った。


「……何が?」


 謝られたシアはよく分かっていないので、一瞬考えたものの首を傾げて聞き返した。


「まるでウチに来れないのをシアが悲しんでるみたいな言い方ね」


「ああ、そういう……」


 呆れながら説明する様にリリーナが返し、それを聞いてシアもようやく意味を理解した。

 というか頻繁に入り浸り過ぎているだけで、別に普通の事なのだが。


「酷い……ちょっとくらい気にしてくれてもいいのに」


 セシリアはわざとらしく悲しむ。意外と元気そうだ。


「残念ではあるみたいだよ?」


「ルナうるさい」


 ルナは揶揄う様にシアの本心をバラした。

 恥ずかしそうに赤い顔で反応してくれるのが楽しいのだろう。


「あはは、ルナには分かっちゃうんだねぇ……あっ!」


 微笑ましい2人の姿に頬を緩ませるセシリアだが、ふと何かを思い出し慌てて声を上げた。


「急に何? びっくりするじゃない」


「え、あー……その……何でもないよ」


 リリーナは驚いて何事かと文句を言うが、聞かれたセシリアは誤魔化した。


「よく分かんないけど、忘れ物とかじゃないならもう帰るよ?」


「それは大丈夫。ある意味忘れてた事ではあるけど……」


 何でもないならいいやとリリーナは気にしない事にした。

 どうやらセシリアは何か忘れていたらしいが、なんとも曖昧な様子。


「あ、ちょっと待って。先にトイレ行ってくる」


「っ!? そうだね! 早く行った方が良いよ!」


 帰る前にトイレに寄りたいと言ったシアに、セシリアはなにやら凄い反応を見せた。誰がどう見てもおかしい様子だ。


「なんでトイレにそんな反応してんのよ……」


 意味が分からないのでリリーナは普通に引いた。


「いやっ、えーと……ほら、また大変な事になってもアレだから……ね!」


 リリーナどころかシアも引いていたので、セシリアは更に慌てて要らん事を口走ってしまった。


「んなぁっ!?」


 あっという間にシアの顔が真っ赤になっていく。

 あんな恥ずかしいネタで揶揄ってくるのはルナしか居ないと思い込んでいたのに、とんだ伏兵も居たもんだ。


「ぅあーっ!」


 居た堪れなくなって涙目で叫びながら走っていってしまった。

 彼女からすればトラウマ級に恥ずかしい事件なのだろうから仕方ない。


「ああっごめん! そういうつもりじゃ無くて!」


 どうにもセシリアは話をはぐらかそうと混乱していたらしい。後悔しても遅いが。


「あたしでもそのネタは使いづらいのに……」


「よく蒸し返せるわね……」


 その慌て様は傍の2人を冷静に呆れさせる程だった。

 ルナでさえ揶揄う良いネタと思いつつも、内容が内容なだけに控えていたというのに。


「違うんだよぉ……ちょっとルナに言わなきゃいけない事があって……シアちゃんには一応内緒にしておきたいし……」


「え、あたし?」


 しょんぼりしたまま素直に理由を語り始めた。予想外に自分の事だったのでルナは驚く。


「あっ……そうか、ごめん私も忘れてた!」


 そしてリリーナも意味を理解して同じ様に慌てた。明日のお祝いの事だ。

 シアとルナが常に一緒に居るからか、完全に頭から抜けていたのだ。


「なになに?」


「明日シアちゃんが誕生日だから、プレゼントも含めて皆でお祝いするんだよ」


 精霊に誕生日のお祝いと言って通じるのかは不明だ。言われたルナはポカンとしている。


「一応私達は何を贈るか決まってるけど……ルナはどうしたいかなって。何か決まってたりする?」


 彼女達の仲なら、言うまでも無く既に決めていたりするかもしれないとリリーナは考えた。が……


「たんじょうび……?」


 しかし当のルナはこれである。どうやら全くそんな気は無かったようだ。


「……もしかして忘れてた?」


 意外そうにセシリアが訊ねる。この反応は予想していなかったらしい。


「わ、忘れてなんか……あたしは、あのー……ほら、アレだから……その……」


 図星を突かれてなにやら誤魔化そうとしているがバレバレであった。

 なんて言えばいいのか分からず、とりあえず生温かい目を向けてあげる。


「ぅあーっ! そうだよ忘れてたよ! そんな目で見ないでよ!」


 その視線が呆れているからだと捉えたのか、ルナは観念して正直に白状した。


 精霊でも誕生日のお祝いという物は理解出来る……というか分かっているからこその反応なのだろう。


「はいはい、分かったから落ち着いて」


 ひとまずは落ち着いて貰わないと話も進まないので、リリーナはルナの小さな背中をポンポン叩いて窘める。


「誕生日なんて精霊が意識する訳無いでしょー!? 贈り物なんてなんにも分かんないよ!」


「そういうもんなんだねぇ……」


 それでもルナは落ち着いてくれない。


 どうやら精霊にとっては誕生日なんて気にする事では無いらしい。知っているだけマシなのだろう。

 どれだけ人に近いと言っても、価値観は大きく違ったのだ。


「やばいどうしよう、なんにも分かんない! 精霊が買い物する訳無いじゃん!?」


「そんな事言われても……」


 焦って憤慨して、忙しい奴だ。


 確かにそんな場面はまず無いだろう。シア達と一緒に買い物をするだけで注目されるくらいなのだから。


「うぅぅ……皆は何を贈るの?」


 それでも少しずつ落ち着いてきたのか、分からないなりに素直に聞いてみた。


「私とセシリアで服、大人達はシアの力を使った魔道具。リーリアは分かんないな……姉さんが伝えただろうけど」


「1人1つって訳じゃないんだ?」


「急な話だったしね。それにいきなり沢山物を貰ったって、シアちゃんだって困るだろうし」


 とにかく急な話だったのもあるが、やはり溺愛しているだけあってセシリアはよく見ている。


「誕生日なんて毎年来るんだから、軽く考えていいんだよ。シアは事情が事情だから、最初くらいは……っていうのはあるけどね」


 ひたすら悩む彼女への助言として、リリーナはそのまま続ける。

 ハッキリ言ってしまえば贈り物なんて、ちょっとした物でも充分。


 しかしそうは言ってもこの街に来て最初の、歓迎等も含めてのお祝いだ。

 多少力を入れたくもなるだろう。


「そんな事言われたら余計難しい……明日かぁ、ちょっと真面目に考えてみる」


 今まで2年以上も一緒に居て、お祝いも贈り物も全くしていないルナとしては軽く済ませたくは無い。

 それこそ誰よりも真剣に考えている。


「周りに相談しても良いし、何か一緒にするなら喜んで手伝うからさ」


「そうそう。それにルナからならきっと何だって嬉しいと思ってくれるよ」


 これだけ真剣に悩んでいれば彼女達も放っては置けない。

 自分達の贈り物はもう待つだけだからか、かなり親身になっている。


「うー……」


 なんともまぁ、シアはつくづく周囲を悩ませるらしい。


 それだけ大事に想われているという事でもあるけれど、ルナを除けば高々10日程度の関係だと思うと不思議な物だ。


 そう思わせる何かを持っているのだろうか。

 愛される才能なんてものがあるのなら、きっと彼女は天才だろう。



 そのやたらと愛されてるらしいシアが戻ってきたのは更に数分後。


「シア、こっち」


 今は外へ出ていた者達が戻ってくる時間帯なので、ギルドの中は少し人が多い。

 シアを呼ぶリリーナの元へ、ぽてぽてと近づいて来る。


「もう帰るよ、行こう?」


「ふんっ……」


 セシリアも声を掛けるが、シアはぷいっとそっぽを向いてしまう。

 先程恥ずかしいネタで弄られたのは忘れていないらしい。


「ああ、怒ってるんだ……」


「ごめんってばぁ……揶揄うつもりじゃなかったんだって……」


 それを見てリリーナは苦笑い。

 怒るにしても随分と可愛らしい態度だ。


 本当に怒っている訳では無く、単純に不満を表しているだけである。


「むー……」


「ホントにごめんって……とりあえず帰ろうか」


「ん……」


 セシリアはもう一度謝り、そのまま手を差し出した。

 人が多くなっているので小さなシアがはぐれない様に念の為だ。


 ギルドを出るだけだから距離なんて無いのだが……単純に手を繋ぎたいからだけでは無い筈。恐らく、多分。


 昨日はこの時間よりは早く帰っていたので、人の多い状態を知らないシアは素直に手を繋ぐ。

 ちゃんと意図は分かっている……と言うより、もう怒ってないよと伝えたいのだろう。


 その態度でセシリアも理解したのか、もしくは手を繋いだからか、嬉しそうに一緒に歩いていく。


「ねぇ、今度からトイレも誰か一緒に来てくれない?」


「どうしたの?」


 歩きながらシアが少し恥ずかしそうに口を開いた。

 一緒にトイレに行ってほしいなんて言うのは恥ずかしいのも当然だが、そう言うだけの事情があるようだ。


「なんか、周りの人の目が……」


 どうやら周囲から受ける視線に今更気付いたらしい。

 人が多くなって分かりやすくなったからだろうか。


「あー……人が多いから……ごめんね」


「こんなとこにシアちゃんみたいな子が居たら目立つし、誰だって気にするもんねぇ」


 彼女達は少し考えが足りなかったなと反省した。


 悪意を持って接する者はこのギルドには居ないだろうけれど……人の多い中で小さな女の子を1人にしたのは良くなかった。


「とりあえずまたスミアさんには絡まれたよ」


 ちょっとヤダなぁ……程度の話だったのだが、思ったよりも真面目に受け取られたのでシアは笑いながら返す。


 どうやらスミアに絡まれていたらしい。彼女はシアを見かける度に可愛がるのだ。


「あらら、あの人も随分とシアちゃんを可愛がるねぇ」


「そうだったんだ。災難……だったね?」


 シアに合わせて2人はさっさと切り替えた。

 絡まれたなんて言い方をしているので、今回も相手をするのが大変だったのだろうかと微妙に言葉を濁している。


「別にそこまで。普通だったよ」


 積極的過ぎる印象が強いから、つい絡まれたと言ってしまっただけ。


 と言うのも、スミアは単純にシアを心配していたのだ。大勢の大人の中に居るシアへ、誰かが接するよりも先に絡む事で護っていた訳である。


 ただしそんな事は誰も知らない。残念な人だ。


「というかルナはさっきからどうしたの?」


 特に話が広がる話題でもないので、シアはさっきから気になっていた事を訊ねる。


 戻ってきたシアに反応する事も無くずっと考え込んでいるので、そりゃあ気になるだろう。


「へっ? あー……まぁ、考え事だよ」


「ふーん、珍しい……」


 一応会話は聞こえていたが笑って誤魔化す。


 いくら珍しいとは言え、ルナだって考え事くらいするだろう。

 そういう事もあるか……とシアは特に追及しなかった。



 そうしてギルドを出てしばらく歩けば、途中で残念そうなセシリアと別れ帰宅。


 帰宅後もいつも通りの日常を過ごす……と思っているのはシアだけだ。

 悩んだり作業したりと大変そうなのに、それが自分の事なのだとは思いもしない。


 そして夜は真っ先に眠り、これ幸いとシアを除く4人は明日の件について話し合うのだが……それもやはり彼女の知る所ではなかった。

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