第15話 背伸びしたいお買い物 2
そんな話をしてたからか、ふとした疑問が湧いてきた。
「ルナこそどうなの? 精霊って男女がどうとか性欲ってあるの?」
ひとまず買う予定のパンツを纏めながら聞いてみる。
私はルナしか精霊を知らないけど……女の子の姿をしてるって事は男女があるって事だよね。
「女の子にそんな事聞く!?」
「あだぁっ!?」
言ったら脳天から殴られた。
流石に性欲云々まで聞いたのはダメだったか。痛い……
「えぅ……だって気になったから……」
「精霊は自然から生まれるから、そういうのは無いの! ……多分。――それにあくまで人の姿を模してるだけだし」
「模してるだけなの? 不思議だね……」
人を模して生まれる理由って何だろう。この世界は不思議だらけだ。
「超高密度なマナの塊みたいなもんだからね。――とにかく、模してるって言ってもちゃんと女の子なんだから、変な事聞かないでよね!」
そういえばルナの服の下は見た事が無い。
どこまで人間なんだろう。
血が通ってる事は知ってる。
胸もちょっと膨らんでるし……必要無い筈なのに。
ていうか食事をしてるなら出す物もある……よね?
いや流石にそれを聞くのはマズイ気がする……でも気になる……!
「ねぇルナ。変な事聞くけどさ……」
「変な事聞くなって言った直後になんで聞き直すの!?」
そういえば言われたな。まぁいい、勢いで聞いてしまえ。
「人を模してるって、体の中はどうなってるの? おしっことか――」
「本当に変な事聞くなっ!!」
「お゛ふ゛っ……」
正面から顔を思いっきり殴られた。
痛った……あ、鼻血出た。
「お、女の子になんて事を聞くんだっ……全くっ!」
自分でも酷いとは思ったけど、仕方ないじゃないか……
「ルナだって気になった事は確認したがる癖に……」
悪いとは思ってるけど、ボソボソと文句に近い言い訳をしてみる。
ルナも私と同じで、好奇心には勝てないからね。
「………………する」
「……えっ?」
凄く小さい声だったけど、まさか答えてくれるなんて思わなかったから驚いた。
自覚があって言い返せなかったのかな。顔が真っ赤だ。
「するって言ってんのっ!」
「あ、大丈夫……聞こえてる」
「ふんっ!」
「うぐぇっ!?」
今度は鳩尾を殴られた。
地味に強化使っててめっちゃ痛い。
「ほんとっ……こいつぅ……っ……!」
「なんで……?」
これ何の1発……?
さっきから周りに人の目が無くて良かった。
でも、そっか。精霊も人間なんだ。
マナの塊と言っても、概念的な存在じゃないんだな。
経緯はどうあれ、今までより身近に感じられた。
こんなお下品な話でも意味はあるんだ。
うん、そういう事にしとこう。
「この馬鹿……デリカシーを前世に置いてきたんじゃないか?」
かもしれない。
「まぁとにかく……ただ種族が違うだけで、結局は人と同じなんだね」
「同じ……かもね。自然に生まれる存在だけど」
「それでなんで男女の意識があるんだろ」
精霊同士で子を残す訳でもないのに男女があるなんて。
ちょっとは理解出来たと思ったけど、やっぱり謎だらけだ。
「理由なんて知らない。誰も分からないんじゃない?」
「本当に不思議だなぁ……」
「違う世界から記憶持って生まれ変わった奴に言われてもなぁ……」
「それは確かに」
そういえば私こそ何より不思議な存在だった。
つい笑ってしまって、ルナもつられて笑う。
不思議だけど楽しいからなんでもいいか。
「ふふっ……って、シアの所為でだいぶ時間経っちゃったじゃん! 待たせてるかもよ!」
「ご、ごめん……そうだね、戻ろっか」
笑い合ってたらルナが突然ハッとして怒り出した。
確かに随分と話し込んでたけど……私の所為か?
まぁ、なんにせよ待たせてたら申し訳ない。
さっさと2人の所に戻ろう。
「んー……やっぱりシアちゃんにはこういうのが……」
「それならまだこっちの……」
戻ったら声が聞こえてきた。え、まだ選んでるの!?
もしかして余計な注文をして悩ませてしまったのかも……
「むーん……難しいねぇ」
「やっぱりサイズが……もうちょっと成長したらまた違うんだけど」
どうもサイズ的にあまり選択肢が無いらしい。
やっぱり悩ませてた、ごめん……
「妹が同じ歳だけど……多分身長20センチくらい違うのよね」
「シアちゃんは7歳くらいの見た目だもんね……」
声を掛けに近づくと、聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
同い年でそんなに差が……噓でしょ……?
「あの……私ってそんなに小さい?」
「あっ、シアちゃん、下着は選べた?」
「あー……そうね、シアは事情もあるし成長が遅いみたいだから……」
とりあえず選んできたパンツ達をセシリアに渡しながらリリーナの声を聞く。
成長が遅い事は分かってたけど、比較対象がもっと小さいルナだけだったもんな。
ちゃんと実感出来てなかったかもしれない。
「そっか……じゃあ買うのは本当に何でもいいよ?」
「ごめんねー、無くはないんだけど、どうしても少ないのよ」
なら私の意見は無視してもらって大丈夫だ。
それに2人が考えて選んでくれたものならそれだけで嬉しい。
「はぁ、頑張っていっぱい食べて大きくなろう……」
ともかく、何をするにもまずは健康的な歳相応の体を手に入れなくちゃな。
と言っても何年掛かるやら……
「それにしてもシアちゃん、結構買うね。やっぱり気にしてただけあるのかな?」
「ホントだ、おしゃれさんだね。柄は似てるけど」
えっ?
「シアはパンツに拘りがあるみたいだよ。普通はどれくらい買うものなの?」
えっ!? 違っ……拘りってそういうのじゃなくて……!
「私が子供の頃ってどうだったかな……でも大体5、6枚くらいじゃないかな」
えぇっ!? そうなのっ!?
「そうね、そんなもんかも。大人ならまだしも子供だと……まぁ当然人によって違うけどさ」
女性の下着は多いイメージだったのに……
ていうか今履いてる分を忘れてたから11枚じゃん。
いくら分からないからって考え無し過ぎた。
ルナがテキトーな事言わなければっ……
「ぷっ、ふふっ……シアはおしゃれに拘るねぇ」
「んなっ!? 違うっ! そういうんじゃないから!」
私がショックを受けてると、ここぞとばかりにルナが弄ってきた。
流石に否定したくて手も頭もブンブン振る。
「いいよいいよ、恥ずかしがらなくて。別にそんな数珍しくは無いしさ」
「背伸びしてちょっと気になっちゃうだけだもんねー。あるある」
必死に否定する私を微笑ましく見てくる。やめて見ないで……
服には注文付けて、これに至っては自分で選んできたんだ。
もうどうしようもないかもしれない……
「じゃあ、とりあえずさっさと買って帰ろうか?」
「そうね、ひとまずはこれで。シア、行くよー」
気付いたら話は進んで、手を引かれて歩いてた。
いや、ちょっと待ってパンツ半分戻しに……あぁ、もうダメだ。もう遅い。
仕方無い、自分で選んでおいて今更騒いでも迷惑だろうし受け入れよう。
不服だけども。服だけに。……いや、ごめんなんでもない。
そんなこんなで、賑やかな買い物は終わり家へと帰った。
ただの買い物だったのに私のダメージが大きい気がするけど……
でも、人と家に帰るっていうのが――ただいま、おかえりって言うのが、懐かしくて嬉しくて。
その頃には全部どうでも良くなってた。
結局楽しい気分で終わるんだから、きっと私は単純なんだろうな。
でも単純で結構。その方が色んな事を楽しめるさ。




