第14話 背伸びしたいお買い物 1
穴があったら入りたい。結局また泣いてしまった。
幼児退行してるのかな……よく言うよね、心は体に影響されるとかなんとか。
それにしては今更な気がするけど。
いや、そんな事は別にどうでもよくって。
あの後も考えに考えたけど学校は保留。
他に学ぶ環境があって行かない人も居るらしいし、だったらその分の時間で色んな事をしたい。
旅に出たいのは変わらないけど、それまでは皆と楽しく暮らしたいって思った。
勿論、保護されたばかりで旅の話なんて出来ないから内緒だけどね。
と、まぁそんな感じで収まった。
そしたら次は新しい部屋の用意だ。
昨日の時点で多少進めてたらしく、人手もあったからあっという間に終わった。
私は全く役に立たなかったけど。
更に次はセシリアとリリーナに連れられてお買い物。
色々買って、最後は衣類……一番困るやつだ。
そうそう、この世界の衣類は前世と殆ど同じだね。
流石に化学繊維は見た記憶が無いけど、代わりに地球に無い素材がある。
というか衣類に限らず前世と大差ない物が流通してる。
魔道具による安定した生産と、整備された街道を速く移動出来るお陰だね。
世界も技術も違っても同じ様に発展していくものなのかも。
名前まで色々と同じになってるのは気にしたらいけない気がする。
そういうもんだ。
こんなに発展してるから知識や技術チートなんてお約束も出来やしない。
そもそもそんな活用出来る専門知識を覚えてる訳も無いけど。
話がだいぶ逸れちゃった。
ともかく、様々な衣類を取り扱う店に来たんだけど……
「シアちゃん、これはどうかなっ?」
「待って待って、もっと違うデザインにしましょ」
「えー……だってこういう可愛い感じが似合うでしょ」
店に入ってからセシリアとリリーナがやたら元気だ。
ああでもないこうでもないと私の服を選ぶのが楽しいみたい。
「確かに似合うけど……シアは子供っぽいのが嫌なんでしょ? 具体的な好みってある?」
好み……無いや。あんまり幼い感じがするのは嫌ってだけ。
なんなら買ってもらう物に口を出すのも申し訳ない。
「別に、買ってもらえるのなら何でも――」
「またなんか遠慮してるなぁ?」
「そうよ。どうせ成長するにつれ買っていくんだから。遠慮したって仕方ないわよ」
見透かされてた。それなら甘えさせてもらおう。
「じゃあ……可愛くてもいいけど、幼過ぎるのはちょっと……嫌かな」
「そかそか、10歳ならもう背伸びしたいもんね」
そう、どうせ選ぶのなら背伸びしたいんです。
かと言って大人っぽいのが良いって訳でもないんだけど。
「服はこのまま私達が選んじゃっていい? 出来るだけ希望通りにするから」
「うん、いいよ」
むしろお願いします。私じゃセンスも無い。
「そしたら、私達が服を選んでる間にシアちゃんはパンツ……下着を選んじゃおっか!」
「うぇっ?」
とんでもない事を言い出した。
中身大人……もう35にもなる男だというのに、女児のパンツを選べって?
それこそ選んでもらった方が気が楽だ。
「そうね、気にしてるみたいだし自分で選んでみたら?」
「えっ?」
リリーナまで同じ事を言い出した。
気にしてるのは確かだけどそういう事じゃないんだよぉ……
「シア! こっちこっち!」
「ルナが手伝ってくれるって! 行っておいで」
「私達はこの辺りでゆっくり選んでるからさ」
「えぇ……」
ルナが笑顔で呼んでる。楽しそうだなあいつ。
私が恥ずかしがると楽しそうにしてる気がする。
結局、服は2人に任せてルナと下着売り場へ移動。
「ほらほら、シアの好きなパンツを選びなよ」
ニヤニヤと憎たらしい顔だ。
「その変態みたいな言い方はやめてっ!」
「変な事考えてるからそう感じるだけだよ」
「ぐっ、ぬぅ……」
嫌な言い方を……でも確かにその通りかも。
中身がどうとか考えちゃうからおかしな事になるんだ。
とにかく、あんまり嫌じゃないやつを探そう。
「あ、これならまぁ……良いかな」
そうして探し当てたのは、子供っぽいけど幼児用でもないやつ。
じっくり選ぶのも嫌だから、さっさと纏めて持っていこう。
「そういえば何枚買えばいいんだろ?」
「そんなんあたしが知る訳無いじゃん。適当にキリよく10枚くらいで良いんじゃない?」
「まぁそれくらいでいいか……」
お母さんは何枚買ってたっけ……数なんて全く気にして無かった。
よく分かんないからもうそれでいいか。
しかし纏めて選んだからか似た柄ばっかりだな。
どうせならバリエーションを……待て何を考えてるんだ?
いや、パンツだから変に感じるだけで、服に悩むのと同じだろう。
そういう事にしよう、うん。
「あれは要らないの?」
「……要ると思う?」
ちょっとだけ自己嫌悪をしてたらルナから声が掛かった。
何かと思えばブラジャー……これ以上無い程にツルペタなんですけど。
「ふふっ冗談だよ。必要になったらいいねぇ」
「いつかなるよ。エルフは華奢だし、大きい人は少ないらしいけどね」
なんだか若干馬鹿にする様な視線を胸に向けられた。
そういえば10歳って膨らみだす頃じゃないのか?
あれ、私大丈夫かな……
いやだからさっきから私は何を考えてるんだ。
「こういうのってどう受け取ってるの? シアの中身的に」
「女であることはとっくに受け入れてるつもりだけど……?」
男だ女だなんて今まで話題にもしなかったのに、随分と踏み込んだ事聞いてくるね。
精霊らしく好奇心でも擽られたか?
「でも服とか下着は気になるんだ?」
「そりゃあ……わざわざ男物は選ばないけどさ。だからって好んでる訳でも無いし……複雑なの!」
「複雑ねぇ……受け入れてるのに気にしちゃうなんて大変だね」
受け入れてはいるし、ある程度は見た目に合わせたい。
それでも特別可愛らしい服や下着ってのはどうにも変な感じがするんだ。
絶対に嫌とは思わないけど、出来れば遠慮したい。
「上手く言えないけどね。将来どうなるかだけは悩むかな……男と恋愛なんて無理だし」
殊更に男だった事を引き擦るつもりは無いけど……
そこだけはちょっと無理かな。未だにそういう対象は女性のままだ。
「じゃあ女の子と? そういう人も居るって聞いた事あるよ」
何処で聞いたんだ……まぁ、この世界も同性でってのはある。
全然違う見た目の種族が居るからなのか、別に珍しくも無い。
「女の人にドキドキする事はあるけど、恋愛的な感じじゃないような……性欲?」
ただまぁ、正直これもよく分からない。
私自身はまだ子供で、知ってるのは男の感情だけだからね。
そっちに影響されてないとは言い切れない。
成長したら変わるんだろうか?
「ぅわ……聞かなきゃ良かったかも」
「そんな生々しい話じゃないから引かないで。ふわっとした感じで……これも複雑」
「ふーん……複雑な事ばっかりだね」
結局何一つ上手く言葉に出来ない微妙な感覚なのよ。
私ってなんなんだろうね。




