旅程②
宿屋に泊まることとなった勇者御一行は、近場の宿で泊まることとなった。
部屋割りはアラン・シュルムとクラリス・マリアベル。
男女で分かれることとなったが、部屋は隣同士。予約も無しに駆け込んだために開いてる二人部屋がそこしかなかったのだ。
それでも大陸展開しているチェーン店なので、最低限のプライバシーとサービスは守られている。
なので一泊二食付きのプランにした。
「さて、夕食も済んだことですしお風呂に入りますか」
男性組の部屋。夕食を済ませた二人が部屋に戻ってきた。
今回の宿をとったのはシュルムだ。田舎暮らしのアランと、森暮らしのクラリス、領主の令嬢であ
るマリアベルにはやり方が分からなかったのだ。学令院の出張経験の差である。
「風呂って、大浴場ですか?」
経験の乏しいアランがシュルムに尋ねる。
「それもいいですが、今の私たちは何かと注目されている身ですから、部屋のお風呂でも構いません
よ? ここの大浴場もかなり質はいいですし、お好きな方を」
「ノルマール先生はここに詳しいんですか?」
「いえ、ここに来るのは初めてですが、このグループは結構サービスに力を入れてますので」
「はあ……」
農民のアランにはチェーンホテルの仕組みなど微塵も分かってなかった。
「けど、ここ結構高そうですよね? お金の方は大丈夫だったんですか?」
「ええ、クーポン券がありますから」
だが支払いはクラリスである。理由は単純、金銭感覚が一番まともで財布を預かっているのがクラリスだから。
「それに、足りなければバンクに行って下ろしてくるので大丈夫です」
「それはそうかもしれませんけど、お金だって有限じゃないですし……」
質素倹約を生活の基盤にしている……と言うか、強いられている農民出身のアランにとっては、受
け入れがたい提案であった。
勿論、お金を湯水のように使える人がいるのは知っている。
だが、いざ自分がその立場になったことを想像すると、故郷に残してきた母と妹のことをどうしても思い出してしまい、躊躇ってしまうのも事実であった。
「そこは心配ありません。国から補助金が出ていますから」
研究にもこんな気軽に補助金出してくれればと思うシュルムであった。研究と世界を救うことを同列に語れないのは、シュルム自身も分かっているけれど。
だけども愚痴は色んな所から噴出するものだ。
「ダメです! そんな無駄遣いは!」
「……そうだね。アラン君の言うとおりだ」
だが、シュルムは知らない。
アランの無駄遣いの範囲を……。
「では話を戻して……お風呂はどうしますか?」
「折角ですし……大浴場に行ってみたいです」
「分かりました。では案内しますので準備ができたら行きましょうか」
「はい!」
(僕に弟がいたら……こんな感じなのでしょうか?)
(俺に兄がいたら、こんな感じなのか?)
互いに同じことを考えている。勇者っていうもんはそういうものかもしれない。
大分時間が空いてしまいましたね……。向こうに本腰入れてるので仕方ないとは言え、仕事に趣味と、スケジュール管理が難しいですね。これもオタクの運命なのか……。