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勇者パーティーを追放されたい勇者たち  作者: 文月灯理
第二話 最初に目的地を決めよう
6/7

旅程②

前回までのあらすじ!



 見事魔族をナイスコンビネーションで退けた連合国勇者パーティ。



 そんな彼らに敬意と感謝として、移動用の馬車が連合国から送られた。



 さあ、希望を胸に魔王討伐にレッツゴー!



「「「「……………」」」」



 そんな雰囲気ではなかったことを、ここにお詫び致します。



 馬車は無言の圧力に支配されていた。



 とは言え、何もしていない訳ではない。



 御者を農作物運搬で経験があるアランが担当。



 後方警備は目の良いクラリスが。布で覆われ死角になっているところは魔術を使えるシュルム。



 そして、マリアベルは日課の祈祷。



 決して、何もしていない訳ではない。



 だが、無言の圧力というものは、時間が経てば経つほどその圧も増す。



 つまり。



((((誰かこの雰囲気をどうにかして……!))))



 しかし、行動に移さないところが原因なのを、彼らは気が付いていない。勇者の《勇》は勇気の勇ではないらしい。



「……あの」



「「「っ!」」」



 痺れを切らしたのはマリアベル。流石の祈祷も、何時間と続けられなかった。



 そして、馬車のガタゴト音で掻き消された声を拾う三人。



「私達は、これからどこに向かうのでしょうか……?」



「「「っ!?」」」



 衝撃が走る三人。



 何故なら──



 誰も、魔王の場所なんて知らなかったからである!



 そもそも、預言者が言い始めたのは《世界を滅ぼす魔王が現れる》という結果だけで、過程どころかそれ以上の情報がないのだ。

 


つまり、勇者たちは魔王を自力で探さないといけないのだ。



「……それについては、当てがあります」



 口を開いたのはシュルム。



「魔族が襲ってきたことを考えると、あれこそ魔王の手先でしょう。つまり、魔王とは魔族領ムカウ

の王、ということだと思います」



 と言うものの。



(判断材料が少なすぎて、そうとしか言えないのが現状ですが)



 シュルムは学者故、確定するまで断定ができない。だからこのような曖昧な表現にどうしてもなってしまう。



「ってことは、魔族領に向かえばいいんですか」



 と、アランが言ってるけど、お前は一体何を目的地にしていたんだ。それは最初に聞け。



「はい。とは言え魔族領は西大陸にあるので、いくつかの国を横断する必要があります」



 シュルムは世界地図を取り出し、マリアベルはそれを覗き込む。



 その際ドプッ、と揺れた胸にシュルムの視線が一瞬だけ釘付けになったのは内緒だ。



 アランとクラリスは目を離すわけにもいかないので、聞くだけに留める。



「私達がいるのが、中央大陸東側の連合国です。王都から離れたので……今はこの辺り。牧畜領です。大体南側でしょうか」



 連合国ウロボロスは、南北に長い領土を持つ国だ。その性質上、連合国を一周すれば世界旅行気分を味わえるとの評判がある。



「なので最短ルートは火山柱から風穴流に行き、砂漠層から船で行くのが最短なのですが、このルー

トは非常に厳しいと思います」



「じゃあこのルートはどうですか?」



 マリアベルが提示したのは、アルザムから海底トンネルを通りムカウの下(地図上)にあるアトランティスからムカウに向かう、と言うものだった。



「それは無理だと思います。深海底は文字通り海の底ですから。辿り着いたとしても魔族領に向かう

道が無いんです」



「そうですか……」



「ですので、私は北に行き森林海、山脈嶺、獣人園、技芸国ルートが最も安全──」



「いや、それはない」



 口を開いたのはクラリスだ。



「それは無い。絶対に」



「そうなのですか?」



(えっと、何か怒ってらっしゃる?)



 アランとマリアベルは感じ取れなかったが、年長者でそれなりの場数を踏んでいるシュルムは気が

付いた。



 森林海と口にしたとき、クラリスから殺気が漏れていたことを。



(森林海は森人族(エルフ)の国。……クラリスさんの故郷のはずですが、なぜ殺気を……?)



「あそこは、人を拒む。下手をしなくても、殺される」



「確かに彼らはプライドが高いと聞いていますが……」



 世界各地にある学令院も、実は森林海にはない。



 と言うのも、森人族がそれを拒み、徹底抗戦したからだ。



「そうなると、ルートは一つですね」



 マリアベルが答える。



「最北端に行きティルナノーグを通らずホーライに行き南下してウルティマへ。そこから船でカキョ

ウを中継しムカウに行くというのはどうでしょう?」



「……それが良い」



(……私の役目は彼らを導くこと)



 それが国王から伝えられた役割。



 当然、それだけではないが……。



(これを理由に、勇者パーティから抜けられる!)



「……私は役立たずですね」



 さりげなく無能アピールを挟む。そうすればパーティを抜けられる……。



 とでも思っているのだろうが。



「そんなことないですよ! シュルムさんがいなかったらこの結論には辿り着かなかったですし!」



「……そうそう」



「そうですよ!」



 仮にも勇者に選ばれるほどの善性を持つこの三人が、そんなことで仲間を切り捨てる訳がない。



 ただし。



(((貴方が抜けたら抜け出せなくなるでしょう!)))



 本心は私欲だったことは、シュルムは知らない。何だかんだ彼も善側の人間だ。そう考える思考回路は持ち合わせていない。



「じゃあ、巨人塔ホーライに行くってことで」



「はい、お願いします」



 こうして、一行は北を目指す。


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