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勇者パーティーを追放されたい勇者たち  作者: 文月灯理
第一話 急募、勇者パーティから追放される方法
4/7

要塞の勇者 アラン・フォーネルト

(クソ、一体どうすればいいんだよ!)



 シュルムに反論する暇もなく、アランは戦場のど真ん中に転移された。



 当然、魔族たちは突然現れたアランに猛攻を仕掛けるが、防御力が桁外れのアランには傷一つ付けられなかった。



 剣も、矢も、棍棒も。



 そんなものでは、アランを倒せない。



 だが、そんな絶対的優位も長くは持たなかった。



 何故なら。



(俺攻撃力ほぼないんだが!?)



 アランはその特異な防御力と引き換えに、攻撃力がほぼ無かった。



 故に、抵抗したとしても魔族には何ら障害にもならず、無視されている。



(方法はあるけど……)



 そう、この状況を変える選択肢はある。



 とはいえ、それをしたくはない理由はちゃんとある。



(やるしかないか……!)



 しかしこのまま何もしないという訳にはいかない。



 意を決して、その方法を執る。



「《旗振り(セット)》ッ!」



 アランは大声で叫ぶが、何も起こらない。



 しかし、時間が経つにつれ、魔族の動きが悪くなる。



「よし、そうだ。来い……っ!」



 そして、何を喋っているのか分からない魔族たちが、徐々にアランを攻撃し始めた。



 これが、アランがやりたくなかった方法である。



 《旗振り》とは、アランを五感で感じると、アランを常に認識する魔術。



 アランの声。アランの味。アランを見る。アランに触れる。アランを嗅ぐ。



 この五つの内、どれか一つでもすれば、常にアランが認識される。



 例え寝ていてもアランは見え、耳を塞いだとしてもアランの声が聞こえる。



 そう。常にとは。



 五感が正常に働いているのなら、どのような状況でもアランがそこにいる。という、迷惑極まりない魔術なのだ!



 そして、アランが使いたくなかった理由とは、これがアランの意思で認識状態が解除できない上、解除方法も分からず《旗振り》の声とともに発動するため、周囲を巻き込むことにある。



 これ、敵ならともかく味方まで巻き込むから使いたがらなかったのだ。



 過去に魔獣退治の仲間にも《旗振り》が及んだ際には、非難殺到した。



(やっぱ勇者らしくはないよなぁ……!)



 と、勇者は敵を倒してこそというアランの視点ではそんな感想だが。



(これを理由に追放してくれないかな……)



 しかし、第三者から見れば身を挺して守る姿は、正しく勇者の姿であることを、アランは気が付いていなかった。



『もしもし、聞こえますか?』



 一羽の青い鳥から声がした。



(え、何?)



『アラン君、転移の後防御してください』



(意味わからんのだが?)



 確かにこれだけでは意味が分からない。



(防御ってことは、これを使えってことかな?)



 アランは腰に付けた一本の棒を、敵の猛攻を受けながらチラ見する。



 国王から授けられた異世界の武器。その効果は防御だというが、初めて見るそれは全く使い方が分からない代物だった。



(説明されてた気がするけど……)



 確かに勇者任命の際に説明はされていた。



 だが、一介の農民であるアランは、極度の緊張でそんなもん聞いてる余裕なんて無かったのである。



 長ったらしい説明で防御以外に唯一聞き取れたのは。



(押し込め、だっけ?)



 名詞が無いため一体全体どういうことなのかさっぱり分からない。



(こんな棒押し込んでどうするんだよ!)



 あまりの混乱に、国王にキレた。



「うおっ!?」



 そんな怒りとは関係なく、城門前に転移された。



(ああどうにでもなれ!)



 自暴自棄(ヤケクソ)になり、棒を突き出し押す。



 バサッ!



 すると、棒がいきなり開くかのように円状に広がる。



 そして、その円状が魔力の形で周囲に展開されていく。



(えっナニコレ!?)



 アランの疑問はとめどなく溢れていく。



 しかし、その疑問を破壊するかのように──



 ズドドドドドドドドドドドッ!!



 目の前で巨大な爆発が起き、魔族たちを消し炭にしていく。



 当然、アランはそれに巻き込まれ消し炭に──



 ──ならなかった。



 不可解な円状の魔力が、盾となりアランどころか城壁──つまり街をも守ったのだ。



(……誰か説明してくれーっ!)



 だが悲しいかな、アランの心の叫びを叶える人は誰もいなかったのだ。



 これが《要塞》の勇者アラン・フォーネルトの戦い方? なのだ。


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