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勇者パーティーを追放されたい勇者たち  作者: 文月灯理
第一話 急募、勇者パーティから追放される方法
3/7

巫女の勇者 マリアベル・グラフォート

「これが……戦場……!」



 シュルムによって戦場に転移したマリアベルが見たのは、血と土煙が漂う地獄だった。

 


思わず目を背けたくなる光景に、吐き気を催す。



 だが、持ち前の我慢強さで持ちこたえた。



(やはり私は勇者になど……いえ、今はそれどころではありません。一刻も早く負傷した方を治さなければ!)



 周囲には負傷兵と思わしき人が大地に横たわっている。



(しかし、どうすれば……!)



 マリアベルにこのような事態でどう動くかの経験は無かった。神聖堂に実質的に軟禁され、外部との関りを絶たれた純粋培養のお嬢様が、戦場で出来ることなど、たかが知れている。



『マリアベル、困りごとかい?』



 脳内に響き渡る声。



「天使様!」



 マリアベルが《巫女》の勇者として呼ばれる理由。それは神とその使いである天使と交流できることだ。



「実は……」



『いや、説明は不要だよ。状況は分かってるから』



 じゃあ早く助けてやれ。



『兎にも角にも、まずは負傷兵を城内に避難させること。治療はその後だ』



「はい!」



 実は、シュルムが指示用に出した使い魔を、この天使はマリアベルに良いところを見せたいがため

に妨害し、シュルムに何の違和感を持たせないよう細工している。神の寵愛を受けているマリアベルだが、天使からも愛は重い。



 そんなことを知らないマリアベルは、疑うこともなく負傷兵に駆け寄る。



「ぐぬぬ……!」



 マリアベルは負傷兵を持ち上げようとするが、女性が男性を、しかも甲冑を着込んだ兵士を持ち上げられる道理はなかった。



『待って、僕らの力を貸すから』



 その声によって、マリアベルは負傷兵を軽々と持ち上げた。



「これなら……!」



 マリアベルの能力《天使憑依》は、天使の力を使う能力。



 それによって《力の天使(アフリエル)》の力を得たマリアベルは、次々と動けない負傷兵を担ぎ、城内へと運んでいく。



 慣れない肉体労働だが、そこは天使の力を使えるので特に問題はなかった。



「これで、全員……!」



 確認できる負傷兵は全て城内に運んだ。残念ながら運んでいる途中で息絶えた負傷兵もいたが、天使がマリアベルに気づかれないように誤魔化し、傷つけないようにした。



『では次は僕だね。存分に使って』



 《力の天使》ではない天使。



 天使は群体であり、個性は統一されている。だが、持ち寄る能力が違う。これは、神が地上に干渉すると多大な影響を及ぼすのを防ぐため。故に神は能力を振り分けた天使を介入させることで、影響をできるだけ小さくし世界を守っている。



 そのため、マリアベルの《天使憑依》は、複数の天使を憑依させることはできない。こうして、切り替える必要が出てくる。



 今度の天使は《癒しの天使(ラファエル)



「待っててください……!」



 簡易ベッドに横たわる負傷兵に手を置き、天使の力を使い、傷を治していく。



 マリアベルは、戦闘には不向き。殺生を嫌うためだ。



 しかし、彼女の振るう力は神の如きもの。戦闘に使うべきものではない。それはマリアベルもよく

分かっている。だからこそ、この力を与えられているのかもしれない。



 これが《巫女》の勇者マリアベル・グラフォートの戦い方なのだ。


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