流れゆく時間
電池式の時計、食器棚に並ぶ白い食器たち、ゆったりできるソファ、散らかり気味のベッド。
僕は、朝シャワーを終えてソファに腰かけた。ゆったりとした時間。
こんなにもゆったりしていて、焦ることもなく、必要性に駆られるでもなく、ぼーっとできる時間。
時が止まったと錯覚するほど、ゆっくりとした時間。
電池式の時計、食器棚にはちょっとした空白、代わりに流し台には使われた後の調理器具と食器。
ゆったりできるソファ、まだちょっと散らかってるベッド。
僕は、朝食を摂り終えてソファに腰かけた。ゆったりとした時間。
朝食を摂ったからか少し眠いなぁ、なんて考えながら、どこでもないどこかを見つめる時間。
時が止まったとしても気づけないほどに、気の抜けた時間。
電池式の時計、食器棚に戻った白い食器たち、ゆったりできるソファ、ベッドメイクされたベッド。
僕は、その日のやるべきことを終えてソファに腰かけた。ゆったりとした時間。
色々と終ったからか、少し気が抜けてひと眠りしてしまった、なんとも贅沢な時間。
時が止まったなんて言われても、それでもいいかと思えるほど、気持ちの良い時間。
電池式の時計、食器棚に並ぶ白い食器たち、ゆったりできるソファ、ホコリを被ったベッド
僕は、昼寝から目を覚ましてソファから立ち上がった。ふと、時計を見ると針が動いていない。
そういえばしばらく電池変えてなかったか、と思ったが、後回しにした。なんでもない時間。
時計がちゃんと動かないんじゃ、時が止まっても気づけないなぁ、とかどうでもいいことを考えるほど、空っぽな時間が流れていく。
電池式の時計、食器棚は空白だらけ、ゆったりできるソファ、ホコリを被ったベッド。
僕は...僕はなにをしようとしたんだっけ?思い出すまで、ソファに腰かけた。問答の時間。
思い出すことはできない。やるべきことはやったし、やりたいこともやった気がする。
でも、なにか忘れているような...何かが欠落しているような気がする。なんだろうか。
答えが出てきてくれない、なんとも気持ち悪い時間。
電池式の壊れた時計、食器棚が空白だらけ、ゆったりできるソファ、ホコリを被ったベッド。
僕は...誰だ?ソファに腰かけたまま。動かない時間。
ここは、どこだ?今は、いつだ?見覚えは、あるけど...思い出せない。気持ちが焦ってソファから立ち上がり、その周りをぐるぐる回りながら忙しなく考える。時間が流れていく。
電池式の壊れた時計、食器棚は空白だらけ、ボロボロのソファ、ホコリを被ったベッド。
廃墟の中では、ネズミとゴキブリがパレードをして、蜘蛛が巣を作りデコレーション、紙吹雪の代わりにほこりが降ってくる。
配管から漏れる水がぽたぽたと小粋なリズムを刻んで、家の軋みがメロディを奏でる。哀しい時間。
...こんなこと言ったって、ただの現実逃避にしかならないのはわかってる。何度も思い出を振り返って、あの時の感覚を反芻して、留めた(とめた)時の中で過ごしたって意味ないって。
それでも、あの代り映えしない日々を思い出してしまうんだ。戻ってこない、過ぎ去った時間たちが、戻ってきてくれるんじゃないかって考えるんだ。馬鹿なこと、考えるんだ。
時間が、ただ流れていく。逆走したくても、止まりたくても流れることしかしてくれない。
流れゆく時間。




