第7話 廃ビル探検
この星45日目。
今日も廃ビルで有用なものを探している。
ここは、拠点から20キロメートルほど東に行ったところで、廃ビルと思われる小山が5つほどある。
ビルや道路が粉々になるほど年数が経っているので、残っているものは限られている。
瓦礫や土の中から、ガラス、銅、ステンレス、陶磁器などが見つかるが、何に使われていたかは想像できるものもある。スプーンやホーク、包丁、鍋などが見つかるとラッキーだ。
食器や調理器具で使えそうな物は滅多に見つからなかった。
それでも、スプーンやホークが見つかり、食べ物を手づかみにすることもなくなった。
小川が、地下に吸い込まれている場所に、行き当たった。
注意深く水の跡を下りてゆくと、広い地下に辿りついた。そこは地下鉄だったようだ。鉄のレールが赤い砂となって平行に暗闇の向こうに消えている。この地下鉄はところどころ、崩れており、危険なので、その先に行くのはやめた。それでも周囲を見ると金属類が少し残っている。手に持てるだけ持って、外に出た。ここは、『地下A』と名付けた。
うーとっ。『地下A』に何かが居たのような気配がした。息をするような音が聞こえた。
今日は少し離れた廃ビルに行ってみた。なんとなくお宝が眠っていそうだから。まあ、勝手な妄想だけどね。
「地下への道は??」と、ぐるりを探してゆく。
あったあった。木と蔦に覆われて、隠れた階段を見つけた。
降りてゆくと、そこは厨房であった。ステンレスで作られた調理台は、骨材の鉄部分が朽ちて波打っている。包丁やフライパンなど手製は影も形もない。しかし、ステンレスのボールやザル、スプーン、フォーク、ガラス食器などが散乱している。使えそうな物を袋に入れてゆく。欠けていないガラスのマグカップは良品だ。
錆ていない、大なべもあった。ラッキー!。
調味料は・・・。ビンに入っているが、まあダメだな。
ここは、『地下B』と名付けた。
本の類がないか調べてみた。やはり影も形もない。
衣類も探してみたが、まあ、無いな!。
自転車ぐらいないかなと探してみたが、タイヤもホイールもチェーンも、風化して無い!。
キックボードがあったよ。風化して無くなった部品を足せば何とか乗れそうだ。でも、地上のでこぼこ地では使えないね。
えっ!、こんなものが!!
崩れた机の端に引っかかっていた一通の手紙。封は切られていたので、中身を出してみた。
それより、この状況で紙が残っていることが不思議だ。鉄もアスファルト、建物さえも風化しているこの環境で!。
何が書かれているのかは読めない。当たり前だね。
そっと、もとの位置に戻した。
積もった埃の中から、こつっとつま先に当たるものが有った。拾上げると、それは仮面だった。真っ赤な唇が、いやに鮮明だった。空虚な目は、何かを語るのだろうか?。
アクセサリーや小物が沢山散らばっていた。宝飾店があったところだろうか?。
ここは、地下Cと名付けた。
同じような廃ビルで、人の生活臭はすでにない。埃とチリ、崩壊した瓦礫や砂だった。
廃墟によく出てくる骨も無い。すでに風化したのであろう。
栄枯盛衰だな。