第3話 この星二日目を迎える
季節は春。
ピチピチ、と小鳥の鳴き声で目が覚めた。
「おーい、セバスー!」
呼んでも応答がない。呼び鈴??。無い。
あ・・・!そうだ。ここは魔の星、サバイバルを開始したばかりだ。
まったく、寝ぼけている。
さて、冷静に昨夜のことから記憶を手繰ってみた。
夜中に薪の追加をと思っていたが、熟睡したらしい。
焚き火は消えている。そして、その先には、大きな足跡が残っていた。
狼だろうか?。ならば襲われていてもおかしくはない。
助かった。胸を撫で下ろした。
ルーレット・カガクはウサギ型の人種である。
指は5本、親指の腹と他の4本の腹は平行になっている。物が掴みやすい形だ。手の甲には白い毛が密集している。腕や足も白い毛が密集している。が、服が接する身体の部分は、毛は薄い。
さて、足だが、これは短い。鏡で見ると、きっと2:3:2だろうか?。
耳を入れると耳2:頭2:胴3:足2だね。それに太鼓腹だ。
まったく、スマートな身体じゃないな!。
朝食の準備をしよう。
昨日、ここに来る途中で美味しそうな葉っぱをたくさん手に入れので、それも朝食に並べた。
おおぉぉーー!ウサギのえさだよ!
モグモグ。モグモグ。美味しい・・・。涙が出そうだ。
とにかく食料調達を考えないと、飢え死にしそうだ。
この身体の便利なところは、脚力のすごさだ。ひとっ飛びで、10メートルほど進めるし、5メートルの高さに飛び移れる。ただ、猫のように登るのは難しい。
ぴょーんぴょーんと、草原を駆けてゆく。近くに水場を見つけた。幅が10メートルほどの小川だ。
魚が泳いでいる。美味しそうだ。
(これこれ、うさぎちゃん。草食じゃないの??)
まあ、いいじゃない。タンパク質は必要だよ。それに、僕はウサギじゃないよ!。
水の中をじーっとみる。これ美味しそう!。と、手を入れて掴み取った。
うん。目の前に50センチメートルほどの魚がぴちぴちと跳ねている。
(待て待て。うさぎちゃんが、なぜ水の中の魚を取れるのだー??)
そう、一瞬、おれの手が猫の手に変化して、その鋭い爪で魚を狩ったのだ。
すごい。これで、魚は取り放題だ。
(いや。感心するところは、そこじゃないだろ?)
知ってるよ。
それと、この鋭い爪は護身の武器になる。
昼めしは、水場の周りに生えていた、美味しい草と、ニンジンのようなものを、お行儀悪く歩きながら食べた。
夜は、このお魚と鶏みたいな鳥をさばいてと、思うのだが。
おれは、せっせと竈を作っている。廃ビルにあった、錆ていないワイヤーが有ったので、それを網目に組んで、竈の上に乗せた。これでバーベキューができる。
(いや、ここは魔法は使わない。折角のサバイバルだからね)
よし、晩飯までにできた。
早速、ブチ千切りの魚と、鶏肉を乗せてゆく。ジューシーな様相と匂いがたちこめる。
うまうまだよ。塩がないよ・・シクシク。
野菜も食べなくてはね・・モグモグ。
この毛むくじゃらな身体だと、風呂は必要なのだろうか?。
匂うかな・・くんくん。まあ良いか、会う人もいないし、おれ一人だもんな。
寝袋に潜り込んだ。
ここに来る前に昔の異世界物の小説をあさったのを思い出した。
異世界ものは衣食住でも、特に食は重要らしい。衣装が主体で物語を書いたものを、あまり目にしたことがない。住は建国もので語られることがある。魔法で城を建てたとか、城壁を巡らしたなど。
とにかく、食については、多く語られている。それは読者に若者が多いことに起因していると思われる。
食か??。長年生きていると、もうこれと言って欲しいものもないし・・・・。
もう寝よう!