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第6話:少女騎士ラナ


 疲労しているシリウスは、用意されたお茶で長旅を癒していたが、なかなか戻って来ない従者に苛立っていた。

「何をしていた」

「カルマが、女の子に泣かされた」

「ええ?」

 シリウスは珍しく目を丸くしている。

「今は厩だよ。こっちに来たくないってさ」

 テオは血相を変えてシリウスに謝罪した。

「申し訳ございません、陛下。恐らく、私の姪かと。オスカーもすまなかったな」

「いいよ、テオ。カルマにはいい教訓になったと思うし」

「君はすっかりカルマの保護者だな」

「僕もまだ子どもなんだけれど?」

「そうだな、すまなかった」

 テオはぽんぽん、と頭をオスカーの頭を撫でた。

 ——成程、これは悪くない。

「…………」

 シリウスはじっと睨んでいた。

 ——まずい。かなり不機嫌だな。

「そ、それにしても流石テオの姪っ子だね。何か色々と凄かったよ」

 色々と危ない子な気もするけれど。

 シリウスは深くため息を吐いた。

「しかし、どうしたものか」

 シリウスの中ではリディアスに対し、色々と言葉を用意していたはずだ。

 贔屓するわけではないが、紅の国は他の小国よりもかなりシリウスに友好的だ。

 だからこそ、それら情勢も含めて相談したかったのだろう。

「テオ、葬儀のことで何か話があるなら、僕らの傍にいなくても」

「いや、一切のことは家臣と姉上たちに任せてある。俺がいても場を混乱させるだけだろう」

「そう、だけど」

 実父の突然の訃報に、テオは一切の動揺をしていない。覚悟をしていたわけではなく、耐え忍んでいるようにオスカーには見えた。泣いて喚いてもおかしくない事態のはずだ。

 オスカーが席を外しているうちに、シリウスといくらか話したようだけれど。

「父君の遺言には何と?」

「ココアニス家およびその領地は陛下のご判断に任せると。ただ、願わくば家名は残して頂きたいとのことです」

「家名を残す、か。その場合テオが領地に戻ることになるな」

 跡取り問題。

 どの家もいつかは苦悩する次期当主の座。テオの姉や妹も婿養子を迎えてはいたが戦死していた。つまり男子が圧倒的に足りないのである。そして年齢と血筋から言って最も当主の座に相応しいのはテオだけだ。そしてもしその座に就くとしたらテオは七星卿の座を降りることになる。

 テオは自身の望みがどうであれ、きっとシリウスの命令に従うだろう。

 シリウスにその判断が委ねられ、頭を悩ませていた。

「その必要はございません、陛下」

 客間に突然、凛とした声が響いた。


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