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第二日本帝国  作者: 脇田朝洋
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第4話 十六夜の男たち

 リナを見送った後シヴァは十六夜の職場に戻る。

 職場では十六夜のメンバーが仕事をしていた。


「あれ? シヴァ。あの可愛い子ちゃんは?」


 そう言って来たのはニースだ。


「リナなら今帰ったところだ」

「何だあ。入れ違いかあ。惜しいことしたな」


 ニースは自分の机の書類を見ながら悔しそうに言う。


「でも彼女が十六夜のメンバーに入れてくれと言った時は驚きましたよ」


 カインがコーヒーをシヴァに淹れてくれる。

 シヴァはカインからコーヒーを受け取り空いている近くの椅子に座る。

 カインは十六夜の副リーダーだ。

 年齢もシヴァと二つしか変わらずシヴァの片腕となってもう二年になる。


「私もまさかリナが十六夜を希望するとは思わなかったが試合で見た実力は見事なものだった」

「そうだな。俺も見ていたが少ない力で自分より体格のいい男を投げ飛ばしていた。あれはよく訓練しないとできない技だ」


 シヴァの隣に座っていたロベルトが書類にサインしながらシヴァに同意する。


「でも男ばかりの十六夜にようやく潤いができるんだぜ」


 ニースは嬉しそうな顔をする。


「リナは女性だが十六夜に女も男も関係ない。ニース、リナに下手なちょっかい出すなよ」

「分かってるって。ちょっかいというのは上手に出すものだってね」


 ニースの答えにシヴァは溜息をつく。


「まあ。ニースの気持ちも分かるさ。俺たち世間では尊敬と憧れの的だが実際は武人とはいえ書類仕事も多いし職場結婚なんて皆無だったからな」

「ギルが言うと重みが違うな」

「なんだと? アンディ」

「だってギルは40歳にもなるのにまだ独り身じゃないか」


 ギルは十六夜では最年長だ。


「俺は好きで独身やってるんだ」

「へいへい。俺はギルのようにならないように気をつけようっと」

「喧嘩売ってんのか?アンディ」

「それぐらいにしておけ。ギル、アンディ。仕事の量増やすぞ」

「それは勘弁してよ。シヴァ」


 アンディが泣きを入れる。


 十六夜のメンバーはなんだかんだ言って仲は良好だ。

 年上も年下も身分も関係ない。

 十六夜である限り平等なのだ。


「フフ、アンディは文字読むの嫌いですもんね」

「なんだと? ルイ。お前六武衆になってから生意気になったんじゃないか?」


 ルイは六武衆の中では一番年下の23歳だ。


「ルイはちゃんと実力で六武衆になったんだ。それはアンディだって分かっているだろう」


 シヴァがルイを庇うとアンディは「そんなの分かってる」って顔をする。


 十六夜のメンバーの中で特に優れた能力を持つのが六武衆であり現在の六武衆はシヴァ、カイン、ロベルト、ニース、ルイ、アンディだ。

 六武衆に選ばれるのは実力も必要だが十六夜のメンバーの三人以上の推薦がなくてはならない。

 その内一人以上は六武衆の者からの推薦が必要だ。


「アンディ。諦めて仕事しろ。お前また俺の書類に自分の書類混ぜたろ」


 呆れた声を出しながらアンディの頭を書類で叩くのはデュークだ。

 デュークはギルの次に十六夜では年上になる。

 デュークは面倒見がいいため皆から兄貴のように慕われているがもちろん仕事に対しては厳しい。


「悪かったって。デューク。今度飯奢るからさ」


 アンディは両手を合わせてデュークを拝む。


「たく、しょうがねえなあ」

「デューク。アンディを甘やかさないでください」


 デュークの隣に座っていたアルファが注意する。


「アルファの言う通りだ。デューク。アンディの仕事はアンディにさせろ」


 シヴァの一言でアンディはデュークに仕事を押し付けるのを諦めたようだ。


「それにしてもリナが十六夜に入ったらこれから先も女子が十六夜に入って来るかもしれないぞ」


 ニースはそれを期待するような声を出す。


「寝ぼけてるのか、ニース。その時は我々のメンバーの誰かが退職しないとなんだぞ」   


 新しい書類をカバンから出していたハインリッヒがニースに言う。


 十六夜は定員が16名と決まっている。

 なぜなら多すぎても少なすぎても仕事に支障があるからだ。

 リナがすんなり十六夜に入れたのは十六夜に欠員が出ていたからだ。


「そんなの。俺以外の誰かが辞めればいいだろ」

「十六夜を辞める理由の一番は結婚なんですよねえ。そんなに簡単に今のメンバーがその理由で辞めると思います?」

「うっ」


 リカルドの言葉にニースは思わず唸る。


「ハインリッヒとリカルド。次の当番はお前たちだろ。イワンとケインと交代してこい」

「あ、もうそんな時間か。リカルド行くぞ」


 シヴァに言われてハインリッヒとリカルドは慌てて部屋を出て行く。

 十六夜は二人一組で交代で皇帝の警護をする。

 今はイワンとケインが皇帝を警護しているはずだ。


「ステルス。仕事には慣れたか?」


 シヴァはリナが入る前に十六夜の最年少だったステルスに声をかける。

 ステルスは十六夜に入ってもうすぐ一年が経とうとしている18歳の若きエースだ。

 ステルスの実家は帝国の公爵家なので身分的には十六夜のメンバーの中では一番高い。

 だがそのことを自慢することもなく新人としてこの一年頑張っている。


「はい。ネルソンがいろいろ教えてくれるので助かります」


 ネルソンはステルスの次に若い。


「ステルスは優秀ですよ。物覚えも早いし」


 ネルソンがステルスの頭をガシガシ撫でながら言う。


「ネルソン。止めてください!」


 ステルスが悲鳴に近い声を上げる。


「ステルス。リナが入隊したらお前は先輩の一人になる。ちゃんと後輩の面倒を見ろよ」

「はい。それはもちろん」


 ステルスはネルソンの手から逃れながらシヴァに答える。

 さてこの十六夜のメンバーにリナが上手く溶け込めるかどうか。

 今の十六夜のメンバーは性格的に悪い奴はいないのだが何しろ今までずっと男所帯でやってきたからこの中に女性が入ったらどうなるか。

 シヴァは少し心配になった。



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