表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/40

4-4

僕は居づらさを感じながら、本を読んでいるフリをしていた。

一応仕事中だし。


「もういい。次回までに各自意見をまとめてきなさい。そこで意見を検討して決めよう」川合のこの言葉で会議は終わった。

タケちゃんは憮然とした様子で会議室を出て行った。

僕は追いかけたかったが、図書委員の活動終了時間まで後10分ほどあった。

放課後に本を貸りにくる生徒など昼休み以上にいないのだが、変に躊躇してしまった。

すると、残った生徒達と川合が話を始めた。

「まったく、健志はしょうがないなぁ。お前らも賞なんかなくてもいいだろ?」川合が言う。

そうですね、僕達は平等ですし。そうですね、努力したことが大切ですしね。

みんな川合と同じ事を言っていた。これでは意見をまとめるも何もない。すでに答えは出ているようなものだった。

どうやら生徒会は、川合のいいなりになっているようだった。

生徒会が川合の思い通りということは、行事が全て川合の思い通りに動く可能性があるということだ。僕は、胸のむかつきを覚えた。

「しかし健志はあれでよく副会長なんてできるもんだな。もう少しまともな考えはできないものかね。場を乱してばっかりで、ほんとに使えないやつだ」


何だそれは。


この中で一番自分の考えを発言していたのはタケちゃんだ。

お前なんか自分の思い通りにいかないことは許せないのか。

大体、教師が生徒の前で言うことじゃない。中学生にとって、教師の言葉はまだまだ影響力があるのだ。

「まったくあいつは前から…」


「健志はそんな…」


「ん、なんだ?そこの…ええと、図書委員」


思わず口を挟んでしまった。図書委員か。生徒の名前なんか覚えてないか。


「いや、その…」


くそ、僕も何も言えないのか。


「図書委員には生徒会の仕事は関係ないだろう。そんなにヒマなのか」


「確かにヒマそうですが、関係無くはないでしょう。それにさっきから聞いていると、あなたの言葉は生徒達にとってふさわしくないものばかりだ」


本棚の裏から声がした。

聞いたことある声だ。


「なんだ、誰だ」


「そもそも、あなたは自分の意見を表に出しすぎていませんか?生徒会顧問はあくまで補佐的な立場で、運営は基本的には生徒達に任せることになっているはずです」


この少し高い声は…

本棚の後ろから、現れたのは、山岡だった。


「山岡先生、関係ないでしょあなたには」


「関係ないとはどういう意味ですか。私は間違っていると思ったことを発言しただけです。あなたは自分が全て正しいとでもお思いですか」


「な、な」


「君達ももう少し自分で考えないとね。健志くんに任せっきりにするんじゃなくてさ」

あたふたしている生徒会役員に言った。


「宗平くん、委員会の仕事の時間はもう終わりだよね。健志くんのところ行ってあげれば?」

「あ、はい…」

僕は突然現れた山岡に唖然としてしまっていたが、声をかけられて我に返った。

山岡の横を通り過ぎるとき、耳打ちされた。

「腹たったからさ、言っちゃった。僕大丈夫かな…」

僕は少し考えて答えた。

「微妙なところですね」


タケちゃんは部活に出ていた。

遠くから僕の姿を見かけると、部活を抜けてきてくれた。

退部した立場としては少し部活に顔を出しにくいので、助かった。

こういうところも気が利くのだ。


「宗も聞いてただろ。なんていうか、くだらないよな」

僕達はまた、中庭に腰をおろした。

「あいつらみんな川合の言いなりなんだよ。 自分で考えること全然しないんだ。わざわざ生徒会役員になって何考えてるんだかな」

タケちゃんはため息混じりに言った。

そりゃあなた、点数稼ぎでしょ。などとも思ったが、タケちゃんの前では言わないことにした。彼にはそもそもそんな概念はないのかもしれない。

「でもタケちゃん、よく面と向かってあんなこと言えるよね。僕は色々思ってたけど、面と向かったら出てこなかった」

タケちゃんは頭をかいた。

「あれ、宗あの後なんか言ったの?川合は根拠の無い自信があるからな。生半可なことじゃ言いくるめられちゃうよ。でも、アイツの言ってることムカついたしさ。それに、俺も色々えらそうなこと言ったけど、まぁなんていうか…」

「なんていうか?」

「賞あったほうが燃えるだろ、普通に」


もちろん、と僕は思った。



何日か後、帰りのホームルームで、山岡から連絡があった。

体育祭は例年通り行なうという。ただ、今回から新たにルールが加わった。

それは、順位ごとにポイントを与えることだ。このポイントは、秋に行なわれる文化祭のときに、ボーナスポイントとして加算され、総合的に評価される事となる。



タケちゃんに話を聞いたところ、生徒会長が出した意見だという。

あの後の生徒会会議で、みんなで色々な意見を出し合い決めたらしい。

川合の大人しさに少しタケちゃんは拍子抜けしていたようだが。

「まぁ結果はどうあれ、みんなで意見を出し合って決めていくのは楽しいよな。ただ従うだけじゃなくてさ。宗、体育祭では負けないからな!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ