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4-2

次の日の昼休み。

僕はいつも通り図書室で貸し出しの番をしていた。

結衣は僕が貸し出し当番の日は、ほぼ確実に図書室にやってきた。

最近は幹と由香も、毎回来てくれるようになっていた。幹が来る理由はあえて言うまい。

由香は、僕らが集まってるから何となく来ているようだった。由香はどこかふんわりしているというか、おっとりした印象がある。

しかしこの図書室に四人も生徒がいるなんて、何だか活気付いてきたぞ。誰も本は貸りないみたいだけど、細かいことを気にするのはよそう。


いつも通り四人でくだらない話をしていた。

最近では最初に誰かが議題を出し、それについてみんなで面白可笑しく討論していくのが流行っている。

今日の議題は、J-POP の在り方について。結衣の議題だ。

しかしこれは、あまり続かなかった。

幹は音楽自体に疎かったし、由香は特にこだわり無く、チャートの上位に食い込む耳障りの良い音楽を聴いているだけだった。

音楽も大量生産大量消費の時代。僕もどちらかというと結衣サイドの人間だったので、この議題にはちょっと食いついた。

バンド出身の結衣は、そんな幹と由香に、それではイカンとヒートアップしたが、二人ともキョトンとしているので諦めたようだ。そんな結衣の姿を見て、幹はちょっと音楽に興味をもったようだ。もちろん理由は、あえて言うまい。

みんなと過ごす昼休みは楽しかった。それなりに混雑する図書室だったらこうはいくまい。

人が来ないことに密かに感謝するとともに、こんなに楽な委員会でいいのかとも思った。


話が一区切りついたところで、僕は結衣に聞いてみた。

「結衣のクラスに健志ってヤツいるでしょ?あいつどう?」

「何急に。どうって、どういう意味?漠然としすぎてます」結衣はピンと来ない様子で答えていた。

それはまったくそのとおりだ。何となく直接的に聞きづらかったのだ。

それに結衣は転校してきてあまり日が経っていないので、まだクラスメイトを完全に把握していないかもしれなかった。

しかし、結衣はタケちゃんを知っていた。

「見ててわかるよ。別に話したことがあるわけじゃないんだけどさ、飛びぬけてるもん。周りが子供っぽいから余計そう見えるのかもしれないけどね」

結衣は手厳しい。

「健志がどうかしたの?」幹が聞いてきた。

「いや、別にどうもしないんだけど…」

突然健志の話をして、どうもしないわけが無い。正直誰かに聞いてもらいたかったという事もあり、僕は昨日、この部屋で聞いたことをしゃべってしまった。

「何それ、くだらね。健志がそんな事考えてるわけねぇじゃん。だいたい稼ぐ点数なんか、これ以上ないんじゃないの」幹も一年の時からつるんでいたので、タケちゃんの事はよく知っていた。

「きっと飛び抜けた存在だからじゃないかなー…」由香がめずらしく神妙な様子で呟いた。

出る杭は打たれるということか。

おそらく校内で、総合力において彼にかなう生徒はいないだろう。

モヤモヤした気持ちは一向に晴れなかったが、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り響き、僕達は教室へ戻っていった。

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