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7-4

今日は男子の団体競技である、組体操の練習が予定されていた。

この演技だけは得点関係なく、全学年で行なう。学年クラス入り混じって演技をするため、知らない顔と演技することも珍しくない。

上半身裸、下は短パンのみといったあられもない格好で演技をする。

男達の肉体が密着するため、汗かきな者にとっては肩身が狭い。

申し訳ないなぁ…と思い、申し訳なさから余計に汗をかいてしまう。

もうどうしょうもない。

色白な者などは体が日焼けして真っ赤に染まり、激痛に苛まれていた。

組体操は、はっきり言って危険である。毎年誰かしらが負傷しているようなイメージがある。

みんなまさか自分が怪我するとは思ってはいないのだろうが、難しい演技の時は毎回精神をすり減らしている。

とはいえ練習を重ねてきているためそれなりに上手になってきており、最初は到底無理であろうと思われた難易度(≒危険度)の高い技もこなせるようになってきていた。


体育祭まで二週間ほどの練習期間があったが、いよいよ今日が最終日だった。

「よくみんなここまで練習してきたな。このままいけば体育祭もきっと成功するぞ。最後に一度通してやってみよう」

体育教師が朝礼台の上から指示を出した。


組体操での一番の大技、それは三年生のみで作る四段タワーである。

この間他の学年はタワーを囲う様にして体育すわりをしているのだが、毎年見てきた三年生の演技は立派なものだった。

人間で作られた三つのタワーがグラウンドに建つ様は、中々壮観なものだ。

読んで字のごとくなのだが、生徒達の肉体で四階建ての塔を表現する。

体の大きい者が一番下となり、逆に体の小さいものが塔の頂上となる。

体の大きい塔の礎となった者には多大な負荷がかかるため皆嫌がり、かといって頂上に担ぎ上げられる体の小さい者にとっては、頂上はかなりの高さに及ぶため、単純に怖い。その上足場は不安定なのだ。

幹は体ががっしりしている方だったので毎年一段目をやらされており、不満を漏らしていた。

僕は中肉中背の代表的のような体格だったので、今年は三段目をやることになった。


演技は滞りなく進み、やがて最後の四段タワーがやってきた。

このときばかりは教師達も心配そうな面持ちで、サポートについていた。

まず土台となる生徒が円陣を組んで座り、その上に二段目、三段目と重なっていく。四段目までが乗ったとき、下から順番に立ち上がっていくのだ。

一気に高度が上がっていくため、上の生徒はかなり怖い。僕も高いところがあまり得意ではないため、下を見ないようにしていた。

次は僕達が立ち上がる番だった。

「せーの!」

掛け声で僕達は立ち上がった。

なんとか安定しているようだ。

後は頂上が立ち上がるのみだった。

「おい、無理するな、危ないと思ったら立ち上がらなくていいから!」

遠くで教師の声が聞こえた。僕達のところではないようだ。どこかうまく作れていないところがあるのだろうか。

「せーの!」

四段目が立ち上がった。さすがに不安定ではあるが、僕達のグループは無事タワーを建造することができたようだ。崩すまで油断することはできなかったが、とりあえず一安心といったところか。

「おい、一旦座れ!バランス崩れてるから!」

教師達の声や周りの下級生のどよめきなどから何となくただならぬ雰囲気が感じられたが、僕は円陣を組んでいたため、何が起こっているのかわからなかった。

「左側もっと…!」

周囲の生徒の悲鳴が聞こえた。

僕がタワーから降りたときに見た光景は、向かいのタワーがただの人の山になっているところだった。

どうやら作るのに失敗してしまったようだった。

徐々にみんなたちあがっていた。

「おい!」

体育教師の声が聞こえた。

僕は何となく嫌な予感がして、山の方を見た。

一人倒れて立ち上がらない者がいた。

幹だ。

左手は、あらぬ方向に曲がっていた。

少し離れたところから、高梨がその光景を見ていた。

その顔は笑っているように見えた。


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