6-1
じめじめした梅雨があけた。バカみたいに熱い日々が続くのだろう。
暑がりな僕は、セミ達の声に反比例して、勉強に対するモチベーションが低下してしまう。
しかし今年はそんなことを言っている場合ではさすがになかった。
僕は集中しやすい環境を求めて、図書館の自習室に通っていた。
ここなら他にも勉強している人も多くいるし、何より気が散る物も無かった。
塾の夏期講習に通っている者も多かったが、僕は市販の問題集を購入し地道に取り組んでいた。
せっかくの夏休み、夏期講習のようなまるで学校のように時間に縛られて行動しなければならない空間が僕は我慢ならなかった。
受験の年くらい我慢すれば、と言われたが、僕はそれでも自分なりの受験勉強を進めていた。
夏休みに入ってすぐ、僕達は海に行った。
日時の縛りがないイベントは、後に回すより先にこなしてしまった方がいいとの結衣の提案だ。
まぁ人生なにがあるかわからないものな。
僕達の住んでいる地域から海へは、電車で2時間程度でアクセスできる。
朝早く待ち合わせ、みんなで電車に乗った。
自分達の住んでいるところも決して都会とは言えないが、電車の窓から見える景色が徐々に田舎の風景に変わっていく様子はみんなのテンションを上げさせた。
天気、気温、ともに申し分ない。まさに夏といった日和だった。
代わり映えした遊びはしていないのだが、海は、ただ海であることに価値があるのだろう。
潮の香り、熱い砂浜、水平線、テトラポット。一つ一つに夏を感じた。
幹が災難だった。持っていった浮き輪に穴が開いていたり、結衣の水着姿をじろじろみて叱られたり。
もっとも、本人が悪いといえば悪いんだけども。
水着については、同学年の女子に対してはスクール水着というイメージが強かったので、普通の水着を着てきた二人に僕も少しドキドキした。
海でできるであろう手軽かつメジャーな遊びはやりつくし、僕達はヘトヘトになって帰宅した。
あれから一週間。
今日は盆踊り大会がある日だった。
今年の盆踊り大会は、不幸なことに市の花火大会と重なってしまっていた。
そこらへんの調整って、うまくできないものなのだろうか。
討論した結果、盆踊り大会に行くことになった。
盆踊り大会では最後に花火も上がるからだ。
昼過ぎまで降っていた雨はもうすっかり上がり、いつものうだるような暑さが戻っていた。
盆踊り大会は予定通り開催されるだろう。
夕方になり、多少は涼しくなったようだ。
僕は図書館を後にした。