5-2
期末テストの全日程が終了した。
手ごたえとしてはそれなりにあったような気がする。
教室では生徒同士で今回の試験を評価する姿が目立った。
僕も、早速自信の無い箇所を見直してみた。
やはり怪しい部分は結構あった。
僕は数学が苦手だ。
文系理系で分類するなら、間違いなく文系だろう。実際国語の成績はよかった。
しかし、数学についても基本は抑えているつもりだった。
教科書の内容ぐらいは把握したつもりなのだが、どうしても解けない問題があるのは何故なのだろう。
単純な暗記物であれば努力不足と納得できるのだが、どうしても解けない問題に当たると、不思議で仕方が無い。何故解けないのか。
きっとその手の問題を解くには、答えを導き出すための思考の一連のプロセスのようなものがあって、それをこなしていかねばならないのだろう。もちろん万人に共通のものではないだろうが、理系脳を持っている者であれば向かう方向は一緒なのではなかろうかと推測する。
思考プロセスを経る過程で発想なり解法なりが浮かんでくる。
数式を解くにせよ文法の問題を解くにせよ、そこに理系脳と文系脳の差があるのだ。僕は文系脳だから、思考プロセスの項目が文系的なものになっており、理系的閃きは中々訪れない…と日ごろ思っていた。
つまり、解けなくても仕方ない。
以上、Q.E.D.
などと、理解力不足を棚に上げてもっともらしい言い訳をほざいたりしつつ、再び不安箇所の答え合わせに勤しんだ。
ともあれ、だ。
テストが終了した時の、この清清しさは筆舌にしがたいものがある。
小学校のテストではこうはいかなかった。
この後憂鬱なテスト返却が残っているのだが、とりあえずは肩の荷がおりた。
だって、もうどうしようもないもん。過去は変えられないのさ。
明日はテスト明け休みになっていたので、少し嬉しい。
明日ぐらいは勉強から解放されてもいいのではないか。
なんとなく夏の日差しが爽やかなものに感じられた。
ホームルームが終わり、帰宅の準備をしていたら結衣がやってきた。
僕の机に腰掛ける。
「宗、テストどうだった?」
「あれ、結衣。クラスに来るの珍しいね。まぁそれなりじゃないかな。でも結局いつも通り中堅に位置しそうな気がする。そっちは?」
「私は全然ダメ。たぶん前より順位下がったんじゃないかな。あーあ…」
「前より下がったって言っても、きみ確か中間試験、五位以内に入ってたよね」
結衣は、結構頭がいいのだった。
「できる子にはできる子なりの悩みがあるんですよ」と結衣。
「ところで宗、明日って何か予定ある?」
「いや、別にないけど」
「じゃあ、明日さ…」
「結衣、期末どうだったー?」
由香がカバンを手に話しかけてきた。
「あ、うん。まぁまぁかな」
「じゃあまたトップ5入りは確定か?結衣がこんなに勉強できるなんて思わなかったよ」
帰宅準備が済んだ幹も、会話に混ざってきた。
「幹、それどういう意味?」
結衣が幹を睨みつけて、幹は少したじろいだ。
「でもとりあえず肩の荷おりたって感じだねー。みんな明日ヒマ?息抜きにどこか遊びに行かない?」由香がみんなを誘った。
「いいね、行こうか。あんまりみんなで遊びに行ったりとかしてないもんな」と、幹。
僕も特に否定する理由は無かったので、賛成した。
結衣はなぜか歯切れが悪かったが、結局は賛成した。
話し合いの結果、ボーリングをすることになった。
僕はボーリングをやったことが無かったので、ちょっと楽しみだ。
ボーリング場も、ショッピングモールの一画に設置されていた。
まったく、この建造物さえあれば何でもできてしまうのではないだろうか。
待ち合わせの時間などを決め、僕達は帰宅した。