side1.6
学園が休みのある日。
ジョエルは自室で机に向かっていた。
婚約者である私を蔑ろにしすぎだと、セラフィーヌに抗議の手紙を送ろうと思い立ったからだ。
さて書こう、と万年筆を握った所に来客を告げられた。
「ジョエル様、フォルト男爵家のラナ様がお会いしたいそうです」
「そうか、すぐ通してくれ」
ラナは私の真実の愛だ。
休みにまで会いに来るとは可愛いな。
セラフィーヌとは大違いだ。
そういえば、そろそろセラフィーヌに婚約破棄を告げるべきだろうか?
しかしセラフィーヌは嫌がって時間がかかるだろうと思うと面倒くさい。
ああ面倒くさい。
そこにテイラーに連れられてラナが来た。
「ジョエル様!」
「やあ、ラナ。今日も可愛いな」
「ふふ、ありがとうございます〜!」
「今日はどうしたのだ?」
「ジョエル様と今流行りの舞台を見に行きたくて、お誘いに来ましたの!」
ほお。流行っているのならば見ておかなくては。
「さすがラナだ。早速行こう。テイラー、馬車の用意を」
「かしこまりました」
そして、流行りの舞台を見に行った。
舞台のタイトルは
『真実の愛の為の断罪~聖女が幸せになるまで~』
とても興味深く面白かった。
そして、とても為になった。
これを元にすれば、婚約破棄を嫌がるセラフィーヌと
婚約破棄をできるのではないか?
セラフィーヌはもう何ヶ月も城に来ていないし、手紙のひとつも寄越さない。
学園でも全く会いにこないし、これらを理由に断罪したら婚約破棄出来るはずだ。
よし、確か来週学園で何だったかの式典があるはず。
そこでこの舞台の王子のように断罪をしよう!
「ジョエル様ぁ?何をお考えですの〜?」
「ラナ、今日この舞台に誘ってくれた君は天使だ」
「嫌ですわ〜天使だなんて!ふふふ」
-----------------------------
学園入学からひと月後の今日、これから生徒会の新メンバーの紹介式典がある。
私はこの日の為に台本を書き上げた。
我ながら傑作だ。舞台になるんじゃないかと思う。
隣には「ジョエル様ぁ、これから何がありますのぉ?」と上目遣いで可愛らしいラナがいる。
「これからラナの為に素晴らしい演説をする。隣で見ていてくれ」
「わぁ、楽しみですわぁ!」
さて、そろそろ幕の裏で待機しなければ。
ラナをつれてステージ裏へ行くと、生徒や教師が慌ただしくなにやら準備しているようだが、暗くてよく見えない。
自慢じゃないが私は、勉強のし過ぎで少し視力が悪いのだ。
「ラナ、私はよく見えないからステージまで案内してくれ」
「わかりましたわぁ〜」
ラナは迷わず私をステージに連れていってくれた。
さて、後は幕が上がるのを待つばかりだ。
続きは出来れば明日投稿します。