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side1.4


謁見の間で、ルブラン公爵とセラフィーヌが待っていた。


「ルブラン公爵、待たせたな。セラフィーヌも久方ぶりだが元気にしていたか?」


ワシと王妃はきわめてにこやかに2人を迎えた。


「陛下、王妃様、急な申し入れにもかかわらずお時間を頂きまして、感謝致します」


「父にならび、感謝申し上げます」


「うむ、2人とも楽にせよ。して、話とは?」


「陛下、ここではなんですから、応接室に致しませんこと?」


ナイスだ王妃よ。

応接室に着くまでに、何とかこの動悸を治めねば。


「ああ、確かにそうだな。ルブラン公爵、セラフィーヌ、応接室に行こう」


「「かしこまりました」」


応接室に移動しつつ、公爵とセラフィーヌの様子を伺うが、2人ともお手本の様な貴族の仮面を貼り付けていてよく分からない。

悲しいことに動悸は全く治まらず、ビクビクしながら応接室についた。


「では改めまして、本日はお願いがあり参りました」


「願いとな?聞かせてくれるか」


ルブラン公爵がセラフィーヌに視線を送る。


「陛下、わたくしからお話させて頂いてもよろしいでしょうか」


「ああ、かまわぬ。聞かせてみよ」


出来れば聞きたくないんだが。


「ありがとうございます。お願いとは、ジョエル王子殿下との婚約の事にございます」


…やっぱり? と、王妃と目があった。


「ジョエルとの婚約がどうしたのかしら?」


「はい、王妃様。最近ジョエル王子殿下が複数名のご令嬢とお付き合いなされていると、噂になっておりますのはご存知でしょうか」


「え、ええと、ごめんなさい、実は先程それについて報告を受けたばかりなの。まだ詳細は確認してないのだけど馬鹿息子がごめんなさいね」


王妃がサラッとよく分からないフリをした。

多分ルブラン公爵の威圧が凄まじいせいだな。


「そうでございましたか。ではわたくしからお話させて頂きます」


怖い。セラフィーヌの美貌が怖さを倍増させる。


「ジョエル王子殿下は『真実の愛』とやらを求めて、何人ものご令嬢に…中には平民なども含まれますが、『君こそ私の真実の愛!』と告白をし、次々と真実の愛を量産されておられます。そのお相手のほとんどが相手にされていらっしゃらないようですが・・・中には本気にされてしまっている令嬢もおられます。今のところ3名ほど」


「3名!?」


ちょっと待て、さっき息子はどっかの子爵のマリア1人と言っていなかったか?えーとたしかスコット子爵か。


「はい。ジョエル王子殿下は別れて次のご令嬢に告白されてるおつもりのようですが、ご令嬢は違うようで…血で血を洗う争いに発展しかけております」


おい、マジか息子よ。


「あー…ええとー…それは…大変なことだわ…」


王妃が倒れそうだ、ワシも倒れそう。


「はい。こうなる前に何度かお手紙でジョエル王子殿下に苦言を呈したのですが、お聞き入れ頂けませんでした。ですので婚約時の契約に基づき、わたくしとの婚約を破棄して頂きたく」


おおう…来たか…ん?契約…とな。


「これ以上噂が広まる前に婚約破棄をした方が、ジョエル王子殿下の為にもよろしいかと…それに娘の言うように、婚約時の契約にございますれば」


公爵が怖い。私より覇気があるのではないか?


「そ、そう、だな、確かに…」


ワシは必死に契約とやらを思い出そうと頭を捻った。

今のうちに破棄するのが良いというのは

ジョエルに婚約者がいなければ、他のご令嬢といるのを見られても、婚約者を探しているという言い訳が出来ると言う事だろう。( それでも無理があるが )

しかしこのまま婚約を続けるとなると、セラフィーヌには馬鹿王子を諌める事もできない婚約者というレッテルが貼られる。

娘を溺愛しているルブラン公爵からしたら、許せるわけが無い。

そこで王妃が思い出したのか、重い口をひらいた。

「そうですわね…確かにあの時の契約で、ジョエルが浮気( 未遂含む )等した場合は公爵家から破棄出来る、とあったわね…」

あー!あー!!そうだ、そうだな、あぁ…そうだな。はぁ。


そしてしかたなく、婚約破棄をのんだ。


「聞き入れていただき、ありがとうございます」


「感謝致します。王妃様には優しくして頂きましたのに、応えられず、申し訳ございません」


「いいえ、いいえ、全てジョエルをああ育ててしまったわたくしの責任です。セラフィーヌには長いこと苦労をかけました」


「勿体ないお言葉です」


この後、婚約破棄の書類を記入する為にジョエルを呼びに行かせたが、あの馬鹿息子は城にいなかった。

マリアと市井に出かけたらしい。( 背後に現れた影から聞いた )

廃嫡してやろうか、あの馬鹿。


「すまぬ、忘れておったが今日ジョエルは視察に出ておる。手間を取らせるが、書類はまた後日でもいいか?」


するとセラフィーヌがゴソゴソと手紙らしきものを取り出して見せてきた。

なんだこの汚い字は…まさかのジョエルからセラフィーヌへの手紙だった。


『セラフィーヌ、手紙は読んだが、君は分かっていない。私は尊き真実の愛を探している。こないだの令嬢とは別れたからまだ婚約しておいてやるが、見つかったら君との婚約は却下する。見つかったら知らせる。』


婚約を却下?まさか婚約を破棄の間違えか?

恥ずかしすぎて死にそうだ。

ていうかあの馬鹿、見つかったら婚約破棄するって言ったのか。


「ジョエル王子殿下は8日前にそれまでお付き合いされていたレイノルズ男爵令嬢と別れ、7日前からスコット子爵令嬢とお付き合いされてるようです。ジョエル王子殿下からのお言葉もこの通り頂いておりますので、婚約破棄を早急にお願い致したく存じます。補足として、レイノルズ男爵令嬢はまだお付き合いされていると思っております」


セラフィーヌよ、お主は王家の影以上の情報収集能力だな。


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