side1.22
俺はノエル・フィール。
アルセイヌ国の侯爵家次男だ。
趣味は演劇で、学園では演劇部にいる。
今日、演劇部の練習が始まる前のこと。
メイクを直すと言われた部活仲間のフィリア嬢についていったら
その人はフィリア嬢じゃなくて、王家の影の一人だった。
驚いた事に、どう見てもフィリア嬢なのに、男だった。
化粧って凄いよ。
その影さんが言うには、この国の第一王子が俺に惚れてるらしい。
数日前に、王子の侍従さんとやらから手紙を貰ってて、
そこにもそんなような事が書かれてた。
でも俺は信じなかった。
だって、ねぇ?ありえなくない?
しかし、芸術祭のロミオとジュリエットで俺が演じたジュリエットに一目惚れしたらしく
王子は俺を女だと思ってるんだって。
正直、まだ信じきれてない。
俺、化粧した所で、どう見ても男だし。
影さんも侍従さんも、心配性で勘違いしてるんじゃないかな、と思ってる。
影さんに、『今日も王子が見に来てる』と言われ、
大広間の入口を見たら
たしかに眼鏡の男子生徒がひょっこり顔を出して見ていた。
ちょっと目力が半端ない。
王子って眼鏡かけてたっけ・・・?
とりあえず影さんに、今日話すって言っちゃったし
部活終わったら話しかけてみよう。
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部活が終わって、面倒なので制服じゃなく、チノパンに着替えて、コートを羽織る。
王子が帰ると悪いので、裏口から周り、急ぎ足で入口へ向かった。
「すみません、ジョエル王子」
後ろから声をかけたら、ビクっとなった王子が振り向いた。
「ジジジジュリエット!?」
「あ、失礼致しました。ノエル・フィールと言います」
「あ、え、うん、え?」
フィールと名乗ったから気づいたっぽいな。
「ステージから見えたので、ご挨拶してから帰ろうかと思いまして」
「そそそそそうなのだな」
「ジョエル王子?大丈夫ですか?」
王子の顔から汗がどばーっとでてるけど、大丈夫だろうか。
「だ、大丈夫だ!・・・あの」
「はい」
「・・・ノエルと呼んでも良いだろうか」
「ええ、もちろん」
「誠か!ありがとう!」
これは影さんの言うような恋慕ではなくて、演劇ファンて感じだよなぁ。
「ジョエル王子は演劇がお好きなんですか?」
「・・・ジョー」
「はい?」
「ジョーと呼んで欲しい」
「はあ、わかりました。ジョーですね」
「っっ!!!あ、ええと、演劇は好きだ!」
顔が赤いけど、そんなに好きなのか。
今まで話した事なかったけど、趣味が同じなら仲良くなれるかも。
「それなら堂々と見てくださっていいんですよ?」
「そ、そうか?ありがとう・・・嬉しい」
「ええ、いつでも見に来てくださいね」
「ノ、ノエルはクラスはどこなのだ?」
「Aですよ」
「A・・・会いに行っても良いだろうか・・・?」
「ええ、いつでも。演劇について話しましょう」
「あ、ああ!」
「あ、帰りが遅くなってしまいますね。今日はこの辺で。また明日、ジョー」
「っっ!!!ノエル、また明日!」
大広間を後にし、少し歩いて振り向くと
ふりふりと手を振っている王子がいる。
話には聞いていたけど、王子と言う割には話しやすい人だったな。
とりあえずはこれで、影さんと侍従さんの心配はなくなるだろう。
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一部始終を見ていたレイスが呟いた。
「ノエル卿・・・純粋培養の天然か・・・報告しなくては」




