side1.14
ジョエルからジュリエットの話を聞いた日の夜。
テイラーは陛下に呼ばれて執務室に来ていた。
「陛下、お呼びでしょうか」
「うむ、とりあえずかけてくれ」
俺は言われるままソファーに座る。
何だか嫌な予感がするが、逃げれないしな。
「テイラーよ。最近のジョエルの様子はどうだ?」
陛下の言葉で、真実の愛の相手の話と察する。
「ジョエル王子ですか。最近片思いされているご令嬢がおられるようです」
影から報告は受けているだろうけど。
「片思いとは、ノエ、ジュリエット…のことか?」
ノエ…?
「はい、ジョエル王子からそう聞いております。ただ、本名は分からないとの事でしたが」
「テイラーよ、おぬしから見て、今回の片思いはどう思う?」
「そうでございますね…いつもより惚れ込んでおられるような─」
「はぁぁぁ〜」
陛下の溜め息がやべぇ。
「実はだな、影からそれの報告があがってきておるのだが…いささか問題があるのだ」
なんだろう、やばい令嬢なのか?
「それはどういった問題でしょう?」
「その、ジュリエットとやらはな…男なのだ」
は?
「は?」
おっと思わず声に出てしまった。
「男なのだ」
2回言ったよ。
「ええと、それは、なんといいますか、えー」
なんと言えと!?
「あ、いや、違うのだ、アレが男に惚れたわけでは…いや、惚れたんだが、アレはジュリエットを女だと思っておるのだ。ちなみに本名はノエル・フィール侯爵令息だ」
女に飽きて男に目覚めてしまったのかとびっくりしたよ。
さっき言いかけた「ノエ」はノエルか。
なるほどフィール侯爵の血筋なら美丈夫だろうな。
「ええと…つまり、ジュリエット役をされてたご令息を、ジョエル王子がご令嬢と勘違いされているという事でしょうか」
「そう!そうなのだ!」
陛下が人差し指を俺にビシッと指した。
このビシッてやる癖、ジョエル王子とソックリだな。
それにしても…マジかぁ。
「申し訳ありません、今日ジョエル王子からその話を聞きまして、話しかけるべき、とアドバイスしてしまいました…」
怒られるよなぁ。
「本当か!それでアレはなんと?」
あれ?怒ってない?
「え、ええと、明日話しかけると息巻いておられました」
「でかしたぞテイラー!さすがにそれで男と気付くだろう!うむ、よくやった」
あ、たしかにそうか。
「勿体なきお言葉」
「影にも探らせてはおるが、またアレが何か言ってきたら知らせてくれるか」
「かしこまりました」
陛下の執務室を出た俺はこの後やるべき事を頭の中で整理し、影の1人を呼んである物を託してから王宮内の自室へと戻った。
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その翌日。
「テイラー」
「はい、王子。ジュリエット様ですね」
「ああ。今日のジュリエットも素晴らしかった」
「それで、話しかけられたのですか?」
「そ、それがだな、その、あの」
いつもグイグイいくのに、なにしてんの。
「話しかけれなかったのですね」
「そうなんだ…だ、だってジュリエットだそ!仕方ないだろう!」
「…仕方ないとは」
「いや、昨日までの演目は『ハムレット』だったんだ」
「仰られてましたね」
「それが今日から『真夏の夜の夢』になったのだ!」
「はあ」
「だから今日からジュリエットは、ティターニアなのだ!ジュリエットに羽がはえるとか美しすぎて無理だろ!」
「『真夏の夜の夢』のティターニアとは…妖精女王でしたっけ?」
「そうだ!美しすぎるだろ」
俺は何を聞かされてるのだろう。
「コホン。ジョエル王子、このまま見てるだけなのですか?ジョエル王子ともあろうお方が」
ちょっと煽ってみる。
「うっ…それは、わかっている…」
王子、男の話をしながら頬を染めるとか勘弁して下さい。
しっかしこれ、あれだよな、今までと違って本当の恋。
王子、マジかぁ…。
明日ちょっと、陛下に許可貰って偵察にいくか。




