side1.13
その日、王と王妃は恒例になった影からの報告を受けていた。
「ジョエル王子がノエル様を見つけられました。」
「ついにか!」
「はい。演劇部の練習を覗き見し、ハムレットのオフィーリアを演じてらっしゃるノエル様をガン見しておりました。」
「の、覗き見…それで気づいたか?」
「ノエル様は練習の為、ドレスではなくシャツに短めのサルエルパンツを着用なされておりましたが…男性なのは気付かれませんでした」
「…」
「きっと、見えなかったのではなくて!?ジョエルは視力が低いもの!」
「いいえ、王妃様。その日のジョエル王子は眼鏡を持参されておいででした」
「ジョエルが?頑なに拒んだ眼鏡をかけたというのか!?」
「左様でございます。あの日のジョエル王子は本気でございました」
「ジョエル…なぜその本気を令嬢の時に出さぬのだ…」
「続けてよろしいでしょうか」
「え、ええ…聞きたくないけれど」
「初めて演劇部の練習を覗き見されたジョエル王子は、その日から今日まで毎日覗き見に行っております。おそらく話しかけるタイミングを狙っておられるのだと思いますが、なかなか声をかけれないようです。ひたすら『ああ、美しい!』と繰り返しておられました」
「「…」」
王と王妃は遠い目をして沈黙した。
「影よ…ジョエルがノエルとやらに接触できたらまた報告せよ…」
「かしこまりました。それでは失礼致します」
影が消えた部屋には、ひたすらに沈黙が続いた。
-----------------------------
「なぁテイラー」
「はい、王子。なんでしょうか」
「私は今度こそ真実の愛を見つけたと思うんだよ」
「はあ」
俺はまたかとため息混じりに返事をする。
「やる気のない返事だな。ジュリエットはそれはもう美しく気高く知的な令嬢なのだぞ」
次はジュリエットか。
「新しい真実の愛様はジュリエット様と言うのですね」
「いや、本名はしらん」
「はい?お付き合いしてらっしゃるのでは?」
どういう事だ?
「まだだ。最近毎日演劇部にジュリエットを見に行ってるんだが、美しすぎて話しかけられないんだ。だから名前も聞けていない」
美しすぎて話しかけれないとか、純粋か。
というかそれなら、なぜジュリエット?
「まだ話しかけてないのですか?ではなぜジュリエットなのですか」
「私が初めてジュリエットを見たのが、ロミオとジュリエットのジュリエットだったからだ!ジュリエットのジュリエット役は素晴らしかった!」
ジュリエットのジュリエットってややこしいな。
それにしても。
今回の王子はいつもより本気度が高い気がする。
「告白されないのですか」
「したいさ!したいが…何故か放課後まで会えないのだ。見つからないのだ」
ちょっと意味がわからない。
「見つからないとは?」
「3年の他のクラスも、他の学年のクラスも、全部まわって探してるのに見つからんのだ!どこにいるんだ…私のジュリエット」
なるほど。一応見てるだけじゃなく探してはいるのか。
「それは不思議ですね…。でしたら演劇部にいる時に話しかけるしかないのでは」
「お前もそう思うか?でもな、真剣に演技をしているジュリエットに話しかけるのは気が引けるのだ」
なんだこの初恋の相談のような雰囲気は。
「でも王子、卒業まであと数ヶ月しかないですよ」
「そうだよな…。よし!決めたぞテイラー。私は明日、ジュリエットに話しかける!」
「応援しております」
今までにはない本気の王子だ。
少しくらいは心で応援するとしよう。
テイラーはまだジュリエットが男なのは知りません




