side1.12
ある日の放課後。
ジョエルは一人、演劇部に与えられた部屋の扉の前に立っていた。
勿論、ジュリエット(役の令嬢)を探すためである。
毎日他のクラスに押し入って探しても見つからなかった。
そしてふと、演劇部に行ったらいるのでは?と閃いたのだ。(今更)
普段であれば、貴族の護衛などが部屋の入口に待機しているものなのだが、誰も見当たらず、部屋にも人の気配がない。
余談だが、ジョエルには学園で表立って着く護衛は居ない。
その代わりに影の護衛が隠れて10人程付いている。
(ジョエルはよくそれを忘れているので、もちろん見られている事も忘れている)
そそそそと、部屋の扉を少し開けて中を覗いてみた。
しかし、室内には誰一人いなかった。
ジョエルは、ふむ、と少し考えると、
(もしや、大広間で練習しているのか?)
今日のジョエルは珍しく勘が働いた。
くるりと踵を返すと、その足で大広間へ向かう。
気が急いて、ジョエルは早足になった。
やがて大広間に近づくと、段々と声が聞こえてきた。
(これはきっと演劇部だ!)
ようやくたどり着いた大広間の入口には護衛が数人立っており、彼らがジョエルに気がついた。
「君たちお疲れ様、少し演劇部を見学したくてね」
「はっ、椅子をお持ち致します」
「いや、いいんだ!ここからこっそり見るから」
「え?」
なぜこっそり?と訝しむ護衛をよそに、ポケットをに手を入れて何かを取り出した。
眼鏡である。
いつもセラフィーヌに、
『そんなに視力が悪いのならば眼鏡をかければよいではありませんか。あとはお嫌いなブルーベリーを食べる事です。そうしませんと、そのうち目の前の方も見えなくなりますわよ』
と、何度もパーティーで言われていたのだが、「眼鏡などダサいではないか」と頑なにつけなかった。
今日のジョエルはそんな眼鏡を自ら用意していた。
ジョエルは本気だった。
すちゃっと眼鏡をかけると、こっそりと大広間のステージを覗き見る。
聞こえてくるセリフを聞く限り、演目は『ハムレット』のようだ。
ジョエルはよく令嬢と演劇デートに行っていたので、演劇はそこそこ詳しかった。
演目がハムレットという事は、私の(仮)ジュリエットはおそらくオフィーリア(ヒロイン)のはずだ。
ドキドキしながら覗いていると、予想通りオフィーリアを演じるジュリエットがステージに出てきた。
(ああ!やはり美しい!)
しかし練習の為か、ドレスは着ていない。
動きやすさを重視してるのか、シャツに膝下までのズボン姿である。
(なんと細い!さすが私の(仮)ジュリエット!)
そこにハムレット(主役)が出てくる。
(ハムレットめ、私の(仮)ジュリエットに触れるな!
いやしかし、美しい…)
結局ジョエルは演劇部の稽古が終わるまで、こっそりと見ていた。
☆とブクマ感謝なのです!




