相談者2<波乱を持ち込むもの2>
「翔先輩が最近女の子と一緒にいるんですよ、おかしいと思いませんか?」
「あれじゃないか? パパ活的な……」
「やっぱりそれですよね!! きっと翔先輩はたぶらかされているんですよ!!」
俺の言葉に食い気味でうなづいているのは、中村五月雨ちゃんだ。何か相談事があると言われ、俺は彼女を連れて天文部の部室へと来ていた。やっぱりここが一番秘密事などを話すのに都合がいいんだよな。
「それで……妻田と一緒にいる子っていうのはどんな子なんだ?」
「黒川先輩って知ってます? お兄ちゃんや、翔先輩、安心院先輩と同じクラスなんですが……」
「ああ、委員長か!! 知ってる、知ってる!! あの人、男嫌いで有名じゃなかったか? なんで妻田とつるんでいるんだ?」
安心院達のクラスに顔を出すときに何回か見たことがある。確か少し冷たい感じのする美少女だった。妙に記憶に残っているのは彼女が読んでいた本が『悪魔図鑑』だったので、以前話しかけたのだが……
『君はソロモンの意志を継ぐものか?」
『いいえ、私はその末席すら汚す事の出来ない下級の存在よ、あなたとはルーツが違うの。関わらないでくれるかしら?』
と言われたので相互不干渉を貫いているのだ。悪魔の眷属であろう彼女と黒竜の騎士である俺は相容れないという事なのだろう。まあ、悪魔の眷属は関わっても相手を不幸にするだけだしな。彼女が望んでもいないのにかかわるのはやめた方がいいと俺は判断をしたのだ。
あと、今絡んだら紅がむっちゃ怒りそうだし……
「その……翔先輩が、サキュバス召喚を試そうとしているっていうのは知ってますか?」
「ああ……知ってるぞ……」
深刻そうな顔で尋ねてきた五月雨ちゃんに俺は恐る恐るうなづく。知ってるも何もサキュバス召喚を教えたのは俺と紅だよ。妻田のやつがあまりに彼女ができないからサキュバスを召喚して、彼女を作るとか言い出したので、俺達がノリノリで調べて教えたのである。
え、マジでサキュバス召喚をしようとしてんの? 嘘だろ? ラノベじゃないんだぞ!? ああでも、ソロモンの悪魔の末席ですからないっていう事は……黒川さんは下級の悪魔の一種であるサキュバスに興味があるっていう事なのか!? うおおおおお、マジか? マジで悪魔召喚できんの?
「私は黒川先輩と中学の時同じ文芸部だったんです知っているんですが、あの人も如月先輩と同じく、悪魔とかそういうオカルトが好きなんですよ……だから、多分翔兄さんがサキュバスを召喚をしようとしているを見て、若干中二病な黒川先輩はそれに乗ったんじゃないかなって思って……そんなのできるはずもないのに……」
「ああ……そうだよな……実際にサキュバス召喚なんてできるはずはないよな……」
五月雨ちゃんの言葉で心の中がスッと冷えてきた。わかっていたよ、わかっていたとも……だけどさ、やっぱり俺は信じたかったんだよ……そういうオカルトが本当にあるってさ……
「あれ、如月先輩なんでそんなにへこんでるんですか?」
「いや……気にしないでくれ。それで君はどうしたいんだ?」
「私は……翔先輩にまともに戻ってほしいんです。だって、彼女が欲しいからってサキュバスを召喚しようとした何て周りにばれたらどうなると思います?」
「俺だったら尊敬するな。すっごい仲良くなりたいと思うし命を懸けてでも手伝おうとするだろう」
「そうです、みんなに馬鹿にされるでしょうね。如月先輩くらい突き抜けていれば話は別ですが、翔先輩は良くも悪くも普通なので……だから……私は翔先輩がそんな風にみんなに馬鹿にされるのが耐えられないんです」
あれ、この子俺の話を聞いていたかな? 意思疎通できていないと思うんだが……でも、言いたいことはわかる。
確かに高校生にもなってサキュバス召喚なんてやろうとしていたら馬鹿にされるだろうな。
「その……私だけでは怪しまれると思うので、如月先輩も翔先輩や黒川先輩に話をきいてもらってもいいですか?」
「ああ、構わないが、でもなんで俺に相談してくれたんだ? 中村や安心院にはいってないんだろ?」
「はい、やはり毒を以て毒を制すといいますし、厨二病には厨二病かなと思いまして」
「あ、そっすか……」
そうして俺達の聞き取り調査がはじまった。
新連載をはじめました。コメディ強めのハイファンになります。
読んでくださると嬉しいです。
『スキル『鑑定』に目覚めたので、いつも優しい巨乳な受付嬢を鑑定したら、戦闘力99999の魔王な上にパットだった件について~気づかなかったことにしようとしてももう遅い……ですかね?』
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