沖田君の恋3<不審者と眷属の恋歌 フェイズ3>
間があいてすいません。
五話前の話の続きです。沖田君目線です。
あれは四人で星を見に行って、朱ちゃんが田中さんからもらったココアを飲むと不思議と眠くなってしまった時の事だ。僕は空気を読んで、朱ちゃんを運ぶ。おんぶをしていると彼女の年齢にしては大きい胸の感触を感じてしまうが許してほしい。
テントに戻った僕は彼女を寝袋に寝かせてそのままソシャゲを開始する。ソシャゲはいいね。ガチャさえ回せば強くなれるし、キャラたちはみんな僕を慕ってくれるし、誰もがみんなオンリーワンの主人公になれる。それがちょっと器用なだけの八方美人な僕ですらだ。
「神矢……ここで決めるんだよ。ふふ、せっかくだし記念にガチャでも回すかー」
僕は親友の恋路の成功を願いながらテントの外の星を眺めガチャを回す。星4一体に星3一体か……でも、この星4は性能は高いが平均的な性能で上位互換の星5が来ると使わなくなっちゃうんだよね。その点この星3はレアリティこそ低いもののとがった性能で、未だ高難易度なのでは使われるのだ。星4の方はもう、つかわないんだよなぁ……素材にしようか悩んでいるところだった。テントから声が聞こえてきた。
「紅姉さまにとっては私よりも、黒竜の騎士の方が大事なのかしら……」
途切れ途切れに聞こえてきたその声はすごい寂しそうで……僕はやれやれと思いながらテントに入る。女の子がへこんでいるんじゃ慰めてあげないとね。
「それは違うんじゃないかな……恋と友情もどっちも大事なんだよ。ただ、今は二人にとって大事な所だからね。少し立てばまた、構ってくれるさ。だから……今だけは二人を応援してあげて欲しいな」
「不審者さん……わかってますわ。だから寝たふりをしたんですもの……紅お姉さまったら睡眠作用のあるハーブを使っても即効性なんてないに決まっているのに……」
「だから、僕には沖田って言う名前があるんだけどなぁぁぁぁ!! そろそろ名前覚えてくれないかな?」
僕の叫びを無視して彼女は寂しそうに神矢と田中さんがいる方をみている。なんだかんだこの子も空気を読んでくれたようだ。ここは空気を読んで冗談でも言って元気を出してもらおう。
「あーでも、このまま付き合ったら神矢と田中さんがデートしている時は朱ちゃんはかまってもらえなくなってしまうね、どう、よかったら僕とデートでもするかい?」
「絶対いやですわ!!」
即答だった。まあ、わかっていたけどね。僕は苦笑する。でも、まあ、これだけ大きな声が出せるのだ。すぐ元気になるだろうと思っていたが続く彼女の言葉に僕は困惑をする。
「だってあなた、本気じゃあありませんわよね?」
「ははは……そりゃあまあね。僕も流石に中学生とは……」
「違いますわ、あなたの言動はいつも場の空気を読んでいるだけであなたの本気が見えないんですの……普通の方は私達のような趣味の人間からは距離を置くか、仲間になりますわ。でも、あなたはどちらでもない。私にはあなたの気持ちがわからない。だから私はあなたを不審者さんって呼んでいるんですのよ」
その言葉に僕はハンマーで頭をたたかれたような気持だった。こんなことを言われたらさ、失礼だなって怒るやつもいる人が大半だろう。何も知らないくせに何言ってんだって怒るやつが大半だろう。だけど僕限っては違った。初めて神矢と会った時の会話を思い出す。
『お前さ……そうやって、周りの顔色ばかり窺っていて本当に楽しいのか?』
厨二病なあいつは僕にそう言った。クラスで浮いていたあいつにしかたなく声をかけた時に僕はそういわれ……ああ、こいつは本当の僕をみてくれているんだなって思ってしつこく絡んで友達になったのだ。
「なんであなたが黒竜の騎士と一緒にいるかはわかりません、もしかしたら彼の様になりたいんですの? ですが、あこがれの人物と一緒に変わろうと思わなければ変われませんわ、私が紅お姉さまに会って変わったように」
彼女は得意げに田中さんとの思い出話を語り始めた。ああ、そうだ。僕は神矢のようになりたいなと思いながらもいつも一歩踏み出せなかった。だけど……彼女なら僕を変えてくれるんじゃないだろうか? 神矢と同じことを言った目の前の子なら……
「あらあら、図星をつかれたのかしら。我が魔術『真実の目』の前では嘘なんて……」
「黄泉坂朱さん!! 改めて言う、僕とデートしてください!!」
「は……え……? 何を言っているんですの? だから私は……」
「僕が本気かどうかなら行動で示すよ。今度の剣道の大会がんばって全国に行ってみる!! そうしたら僕とデートをしてくれ」
そう言って僕は困惑している彼女の手を掴みながら約束をしたのだった。誰もが変わろうと思って変われるわけではない……だけど、彼女がいれば僕も変われるそんな気がしたんだ。
なろうコン用の作品を書いてみました。よかったら読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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