沖田君の恋2<不審者と眷属の恋歌 フェイズ2>
沖田が着替えるのを待って俺達はカフェへとむかった。カフェに座った俺達は適当に注文をするために店員さんを呼ぶ。すると見知った少女がいた。
「あ、如月先輩じゃないですか、いらっしゃいませ」
「ああ、五ノ神さんか、この前はありがとう、おかげで彼女も喜んでくれたよ」
「そうでしょう、そうでしょう、うちのパンケーキは最高ですからね。例えるならば、砂漠で迷っていてようやくオアシスを見つけた時に一杯の水を味わうような感動ですよ」
彼女の名前は五ノ神双葉、うちの高校の一年生で、ホワイトデーでお世話になったのだ。今でも学校で会ったら喋ったりする関係だ。
「へぇ、神矢って結構個性的な女友達多いね。はじめまして、僕は神矢の知り合いの沖田です。よろしくね」
「あ、はい……五ノ神です。よろしくお願いします」
沖田の挨拶に怪訝な顔で五ノ神さんが返す。どうしたんだろうかと思っていると、彼女が俺に耳打ちをしてきた。
「如月先輩の友人なのに普通そうなんですが……あれですか、この人も黒竜の騎士みたいなのあるんですか!? なんかいきなり変な事叫びだしたりとかしませんよね?」
「いや、ねえよ!! 沖田はただの親友だよ。俺の周りを何だと思ってんの!?」
「いや、だって、彼女さんは魔女とか言ってるし、まともな人がいるとは思いませんよ、例えるならば、サファリパークに言ったのになぜか人しかいなかった気分です」
「あの……全部聞こえてるんだけど……僕ってそんなに普通かな?」
「ええ、普通です。むしろ、普通よりイケメンな紳士ですね、学内カースト上位な感じがプンプンします。ああ、すいません、注文でしたね」
無駄話をしすぎたと反省したのか、五ノ神さんが「えへへ」と舌を出しながら注文を取る。あざといと思いながらも俺は、漆黒のごときアイスコーヒーを、沖田はおすすめされて疲労回復の効果のあるハーブティーを注文していた。
「さっきの子も中々強烈だったね、田中さんといい、神矢はすぐに人と仲良くなれるね」
「そうか? むしろお前の方が友達多いじゃないか」
「そんなことないよ……僕のは周りに会話をあわせているだけだからね、広く浅くって感じだよ。だから僕は君が羨ましいんだ。数は少ないかもしれないけど誰かと深くなれる君がね」
「沖田……?」
そう言う沖田はいつもと違いどこか寂しそうで……だから俺は、沖田の手をつかんで言った。
「よくわからんが、俺はお前の親友のつもりだし、お前の力になりたいと思っているぞ」
「ありがとう……多分そういうところに田中さんも、ひかれたんだろうね。そして僕も……まあ、僕の方は長くなるからね、神矢の方から話してよ。相談事があるんでしょ?」
沖田は一瞬目を見開いて驚いた顔をしていたが、嬉しそうに笑った。そして俺に相談内容を話せと促してくる。コーヒーに口をつけながら俺は彼に話すことにした。
「その……キスってどうやって誘えばいいんだ?」
「は……? まだしてなかったの? うそでしょ。だって星を観に行ったときとか雰囲気よかったよね、告白のついでにキスとかできたでしょ」
「いや、告白で精一杯で……」
「じゃあ、お互いの部屋に行ったときにいい雰囲気になったりとかはしなかったのかな?」
「何回かなった気もするが……なんか恥ずかしいし、嫌われた嫌だなと思うと……」
「予想以上にヘタレだね……」
俺の言葉に沖田は呆れたように溜息をついた。いや、言いたいことはわかるが、緊張しない? 文化祭の頬へのキスでも、無茶苦茶緊張したし嬉しかったんだけどな!! でも、あれも紅の方からやってくれたんだよな……俺の方からなんもやってないな!! でもさ、キスってどうすればいいんだよ
「とりあえず、がんばっていい雰囲気にもっていってその流れでキスをしてみればいいんじゃないかな?」
「いい雰囲気ってどうすればいいだよ……」
「とりあえずかわいいとか好きとか言っておけば勝手になるよ」
「そんな適当な……」
俺の言葉に彼は笑顔で答える。でもまあ、こいつはこいつで結構もてるんだよな。なにかの参考になるかもしれない。
「そういう沖田はどんな時にキスしたんだ?」
「あー、中学二年の時に道場が近いから時々話してた弓道部の先輩にね、雨の日に相合傘してたら奪われたなぁ。やはり僕はセイバーだからアーチャーに一方的にやられちゃった」
「FGOかよ!! なんでお前そんな青春してんの!?」
奪われたなぁじゃねーよ、しかも中学かよ。黒竜の騎士と黄泉の魔女の全盛期じゃん。俺達は河原で語り合ったり、街をパトロールしていたんだよな。でも、あれはあれで無茶苦茶楽しかったのだ。後悔はしていいない。でも、いい雰囲気か……ちょっとうちに誘ってみよう。いつかの雑貨屋で髑髏や魔法陣のタペストリーを買うのもいいかもしれない。あとは誉め言葉か……でもさ、紅を可愛いとかいうのって、俺は空気を吸っているぞっていうくらい当たり前のことだから誉め言葉になるのだろうか……俺が色々悩んでいると沖田が口を開いた。
「神矢の方はとりあえず色々考えてみるんだね、魔女のキスをもらうんだ。ちょっと趣向は凝らした方がいいかもね。じゃあ、今度は僕の方からいいかな?」
「ああ、いったいどうしたんだ?」
「君たちがイチャイチャしていた星を観に行った時のはなしなんだけどね……」
そう言って沖田はその日の事を話すのであった。それの顏はいままでみたこともないほど真剣で俺は思わず唾を飲み込んだ。
久々の更新になってしまいました。
そういえば最近カクヨムも始めました。そちらでもよかったらよろしくですー
カフェの店員さんはホワイトデーの子ですね。ほんとうはこっちの作品も更新しなければいけないんですが、ちょっと展開で悩んでいます……