56.作戦決行2<オペレーションラグナロク2>
乱暴に閉められたロッカーの中で俺は混乱していた。どうすればいい? このピンチを乗り越えるのはどうすればいいんだ? というか恵理子に俺の人生がかかっている気がする。「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」って昔の人も言ってたけどこの場合は仕方なくない?
「ねえ、さっちゃん申し訳ないんだけど、教室にタオルを忘れてきてしまったんだけど、取ってきてくれないかしら?」
「え? 別にいいですけど、自分でとってきた方がいいんじゃないですか?」
「えー、だって、階段を上ったりするのめんどくさいんだもの。私はどっかの誰かさんが彼氏のためにがんばるのを手伝うためにここにいるんだけどな」
「うう……それを言われると反論できないですね……いいですよ、行ってきますよ!! でも、あれですからね、その代わりに、また神矢の中学時代の話をしてくださいね」
そういうと足音と共に扉が空く音がした。よかった、紅は教室に戻ってくれたみたいだ。俺といない時の紅が見れてちょっと嬉しかったけど、恵理子のやつ普段どんなこと話しているんだよ。中学の何を話した? などと考えていると、ロッカーの扉が空けられて、視界が明るくなる。最初に見たのはまるで道端に落ちているゴミでもみているかのような冷たい視線の恵理子だった。ちょっと、紅と話すときと態度が違いすぎない?
「で……、なんであんたはこんなところにいるのよ」
「ああ、これには色々と事情があってな……」
結局俺は恵理子にこれまでの事を説明するのであった。
「あんたたち馬鹿なの……」
「正直俺もそう思う……」
全ての事情を話したというのに彼女のゴミをみるような目は変わらなかった。むしろ軽蔑の色が強くなっている気がする。一体どうしたっていうんだ? しょうがないじゃん、安心院が馬鹿なんだよ。
「大体彼女がいるっているのに、そんなビデオみてるんじゃないっての」
「そういう恵理子だって、もし、彼氏ができてもBL本は読むだろ?」
「当たり前でしょ、呼吸をするなって言われているようなものよ、魚が地上で生きていけないように、人が海中で生きていけないように、腐女子はBLが無いと生きていけないの……いえ、なくても、勝手に作り出すんだけどね。そういえばさっちゃんも最近はまってきたわよ。あの子の成長が楽しみにね」
「待って、紅も腐り始めてきてんの、初耳なんだけど……」
どうやら腐界の浸食は俺の予想を早まる速度だったようだ……俺が彼女の『腐界の女王』の力の強さにぞっとしていると、恵理子は悪い笑みを浮かべて言った。
「ちょうどいいわ、今回の事は秘密にしてあげるから私の言う事を二つ聞きなさい」
「え? 二つもかよ」
「何よ、退学になるよりはましでしょう? 一つ目はまた、即売会で本を出すから、また、沖田とコスプレ売り子をお願いするわね、もう一つはそろそろ、さっちゃんと次のステップに進みなさい」
「え?」
俺は彼女が何を言っているかわからず、そのまま聞き返す。次のステップってなんだよ。告白をしてめでたく恋人になっているんだが……あれか、結婚か!? でもさ、俺達まだ高校生だよ、早くない?
「女の子もね、彼氏がいつまでも手を出してこないのは不安になるのよ、自分に魅力がないのかなって。だから行きなさい。ヘタレなあんたでも、こういう大義名分があれば動けるでしょ」
そういうと恵理子はウインクをする。ああそういう事か、確かに俺達はまだ手をつないだだけだ。紅と次のステップか……やはり騎士と魔女の契約だけでは足りないようだ……やはり、ここは異世界に行って黒竜の力を解放するしか……なんて言っている場合じゃないな。どうやら、俺はまた恵理子に助けられたようだ。それにしても紅がそんなことを気にしていたなんて……
「わかった、ありがとう。がんばるよ」
「ええ、がんばりなさい。だからといってがっつきすぎないようにね」
「任せろよ、俺は騎士だからな。女性が嫌がるような真似はしないのさ」
俺がかっこよく去ろうとするとまた天草先輩からラインが来た。え? 紅が帰ってきたって?
「うおおおおおお、どうすりゃいいんだよ!?」
「どうしたのよ。変な顔をして」
「恵理子どうしよう。紅が戻ってくるって。またロッカーに戻るしかないのか!?」
「あんた、それじゃあ、無限ループじゃない……それならいいアイデアがあるわ」
そういって彼女は、楽しそうに笑いながらカバンからなにかを探しだすのであった。
ようやく、神矢と紅の距離が縮まるか? 次回を楽しみにしてくださると嬉しいです。
ニュースをみて短編を書いてみました。ラブコメです。読んでくださると嬉しいです。
「うがい薬が売ってねー!! って叫んでいたら、美人なミステリアス系幼馴染と付き合うことになったんだけど」
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