44.バレンタインデー1<騎士と魔女の祝祭 フェイズ1>
今日はいよいよ、バレンタインデーである。当日ということもあり、どこか男子たちはそわそわしている。校門に入ると、今も、男子生徒が重い荷物を持っている女の子に声をかけて、代わりに持ってあげたりしてる。ほほえましいなぁって妻田じゃん。あいつなにやってんだ?
頑張ってるなぁ……去年の俺を思い出すぜ。俺もああやって努力をしたり、異世界から来たエルフにチョコとかもらえないか想像したものだ。しかし、今年は違うなぜなら……俺は隣を歩いている我が主であり、黄泉の魔女である紅を見る。
「男子って本当に馬鹿ですよね……当日に優しくするんじゃなくてもっと前から優しくするなり、仲良くならないと駄目なのに……」
「ああ、そうだな……」
一緒に登校してきた紅があきれた声で言った。う……わかってる、わかってるんだよ。でもさ、無駄な努力ってわかっていてもやりたくなるんだよな。それで万が一でもチョコもらえたら嬉しいしな。
今の紅は学校ということもあり、本性を隠している。お嬢様っぽい敬語である。文化祭ではっちゃけたし、そろそろ本性ばれてると思うんだけど、意地なのか、このキャラは変えないようだ。でも紅が本性を見せるのは俺だけってもの悪くない……むしろいい!!
「それで、俺の彼女はどんなチョコをくれるんだ?」
「フフ、楽しみにしててください。チョコはかつての『神様の食べ物』と言われるくらい貴重なものだったんです。私があげるのは神ではなく、『魔女の食べ物』ですが、同じくらい貴重なものになるでしょう」
「まあ、手づくりだから世界に一つだけだし、貴重だよな」
「それだけじゃないですよ、私が父を除いて初めて男性にプレゼントするんです。すっごいレアアイテムですからね。あと……すっごい気合をいれてつくったから残さず食べなさいよ」
後半は俺の耳元で囁くようにいった。びっくりして紅をみると意地の悪い笑みを浮かべいた。くっそ、さっきから一方的にやられてるなぁ……でも、彼女の手作りチョコが食べれるのだ。幸せすぎてどうでもよくなる。
「当たり前だろ、俺の可愛い彼女ががんばって作って……なんだこれ?」
「どうしました……? ふーん、もてますね、さすが女の子の友達が多い神矢ですね」
俺の下駄箱から落ちてきた白い封筒によって一気に紅の視線が冷たくなった気がする。え、待って。本当に何も身に覚えがないんだけど?
しかもその封筒には可愛らしい文字で如月君へと書いてあり、ハートのシールで封がされている。
「くっ、やつらの陰謀か? 俺と紅の仲を妨害する気か、下らん策を使うな!! だが俺たちの絆はそんなものではヒビも入らないぞ、なあ、紅」
「くだらないことを言ってないで、中を見た方がいいんじゃないですか?」
「あ、はい……そうですよね……」
うおおおお。珍しく紅が乗ってくれない……しかしマジで送ってくる人物に見当がつかない。俺と紅が付き合ってることはクラスの全員が知っているし、何なら紅の転校初日に付き合ったって、そこそこ他のクラスにも有名なはずなんだけど……一番確立が高いのは中村と妻田らへんのいたずらだろうか、自分で言ってて死にたくなってきた。
紅をみると視線が早く開けろと物語っている、まあ、別に俺は悪いことしてないしな。下駄箱では邪魔になるので少し離れたところで封筒の封を開け中身をみる。
『如月神矢様 このような形で想いを伝える形になって驚いたでしょうか? あなたが田中さんとお付き合いしていることは知っています。でもこの想いをどうしても伝えたいのです。本日の放課後に屋上に来ていただけないでしょうか?』
本物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! マジかよ、え、マジかよ!? いや、調子に乗っている場合ではない。俺はおそるおそる紅の顔をみた。彼女はちょっとすねたようにこちらを見ている。
「ふーん、本当にもてますね」
「いや、でも本当に誰だかわからないんだぞ、よく話すのも恵理子と白石さんくらいだし……って思ったより、怒ってないな」
「まあ、自分の彼氏がモテるってのはちょっと得意げな気持ちになりますし、神矢のいいところをわかってくれる人がいるのはちょっと嬉しいんです、まあ、あなたのいいところは私が一番よく知っているんですけどね」
「そういうもんなのか……? まあ、屋上には行かないから安心してくれよ」
「いえ、行ってあげてください、私もどっかの鈍感男に流された時に実感したのですが、好きって気持ちを伝えるのってすごい勇気がいるんです。だからその子の気持ちにちゃんと答えてあげてください。それに……」
紅は一息間をおいて俺をまっすぐ見つめて囁くようにいった。
「私は私の騎士を信じてるから」
俺は彼女のその一言に心を持っていかれてしまった。得意気な顔が可愛いくて、抱きしめたくなる衝動を俺は必死に抑える。せめてとばかりに手をつなぐと彼女も握り返してくれる。ああ、やべえ。胸がどきどきしてきた。まるで異世界に召喚されて姫に求婚された気分である。このまま、学校なんてさぼってデートしたいな……
「当たり前だろ、俺にはお前しかいないんだから」
「はいはい、そうですね、急がないと遅刻してしまいますよ」
そういって俺たちは手をつないで教室へと向かう。短い時間だが、彼女の手の温かさを堪能した。
仕事がやばいいいい!!
というわけで、三月ですがバレンタインデーです。3話か4話で終わる予定です。
今回はしょっぱなから糖分多めになってしまった……
というわけでよろしくお願いします。




