42.後夜祭
「それでは安心院手筈通りに頼むぞ。末端の会員たちには既に話は通してある。お前の言葉で立ち上がるはずだ」
「ああ……がんばるよ」
妻田の言葉に俺は陰鬱な表情でうなずいた。結局赤坂とのことをこいつらには言えないでいる。俺はどうすればいいのだろうか……
手筈は簡単、後夜祭で妻田と中村がダンスした後に俺がマイクを奪い取り、俺の演説と共に非リアたちが後夜祭の会場に乗り込んで同性同士で組んでダンスをしてリア充たちが入れないようにするのだ。地獄絵図だな。円卓の騎士はもはや三人しかいないが、カップルが増えそうなイベントの時のみに妨害するために参加するリア充粛清騎士は何人もいるのだ。
「大丈夫かい、安心院」
「ああ。問題ないさ、うまくやるよ」
心配そうに声をかけてきた中村に俺は笑顔で答えた。しかしこいついつも女装しているな。完全に趣味になっているんじゃないか?
まあいい、俺はRZK会のリーダーである。こいつらを裏切るわけには……
「うまくやらなくていい、君は君の幸せをつかむんだ」
「えっ」
俺は中村の声に目を見開いた。こいつ俺と赤坂の関係を知っているのか? いや、同じクラスだし、赤坂の態度と俺の態度で気づいたのだろう。その一言で俺は余計悩んでしまう。
俺に好意を寄せてくれている赤坂と、俺を慕ってくれている中村と妻田、俺はどっちをとるべきだ……? 様々な思い出が走馬灯のように脳内を駆け巡った。しばらく悩んで俺は決意した。俺は……
俺は周囲をみながら後夜祭の会場にいた。手に暖かい感触がある。紅の手だ。やっぱりリア充っていいよな。だが、そんなリア充の敵がこの会場には何人もいるのだ。中村に聞いたところ、すんなりと計画を教えてくれたので疑問に思ったが、あいつはあいつで安心院の恋を応援しているそうだ。
「いざとなったらあれを解放するしかないな……」
「まさかあの封印を解くというのですか!?」
ノリノリで答える紅だが彼女は俺の言ったアレを知らない。レディパールに色々頼んでセッティングしておいてもらったのだ。でもこれ俺がやったってばれたらちょっとやばいよな。先生に怒られてしまうかもしれない。でもRZK会のやつらを何とかしないと、紅といい雰囲気になれなそうだしなぁ……
「はぁー、絶対怒られるんだろうな……」
「どうしたんですか? 世界が終わるような顔をして」
そんな俺の表情がよっぽど暗かったのか、紅が覗き込むようにして俺の顔をみた。目が合うと紅はちょっと拗ねた顔でこちらを見つめていた。
「何でもないぞ」
「嘘ね、だったらそんな顔しないもの。私には秘密だって言うの? 何かやらかそうとしているんでしょう? 私も仲間に入れなさいよ」
「え、だって内申点にも響くかもしれないんだぜ」
「馬鹿ね、私とあなたは主従関係にあるのよ。仮に世界が終わっても、死がふたりを別つまでは一緒にいる関係なのよ。だから楽しい事だけじゃなくて、つらい事も共有したいの、それともあなたは私とは嫌なのかしら」
「お前俺の事好き過ぎじゃない?」
「お互い様でしょう」
自分で言っていてちょっと照れくさそうにした紅を俺は笑顔で見守る。でもそこまで言われたら力を貸してもらうべきだよな。俺は紅に自分の考えている計画を話す。
「おそらく、この会場にはやつらの尖兵が混じっている。アーサーの一声を合図に暴れるつもりだろう。俺はそれを阻止するためにトラップを仕掛けておいた。具体的に言うと、レディパールに頼んで会場に仕掛けておいたプロジェクターから黒竜の画像と雄たけびが流れるから、それでひるんでいる間に安心院をぶっ倒す」
勝手に備品を使う上に安心院を止めるためとはいえ、喧嘩っぽい事になるかもしれないのだ。その場は逃げきっても説教は免れないだろうな。
「ふーん、白石さんには相談してたんだ……まあ、いいわ、黒竜を従える魔女ってちょっと憧れていたのよね。まるでジャンヌオ〇タみたいじゃない。私もついてくわ」
「え、でもお前へっぽこじゃん。なんかミスしそう……いってぇ!!」
「うるさい、あんただけに嫌な気持ちをさせたくないの!! それに私だって一緒に神矢と後夜祭を楽しみたいのよ」
俺のへっぽこという言葉に反応した紅が俺の脛を蹴ってきやがった。でもその後そっぽ向いて照れている姿が可愛い。暴力系ツンデレかな?
まあ、異世界に召喚された時のために体を鍛えている俺なら安心院を倒すこともできるだろう。紅がついてきてくれるのも正直嬉しい。沖田がいればなとは思うが仕方ない。遠慮なく使わせてもらおう『黒竜召喚』を!!
あとさ、好きな女の子と敵を倒しに行くって状況に俺のテンションが上がらないはずがないんだよな!!
『それでは後夜祭を始めたいと思います。代表のお二人前へ!!」
アナウンスと共に女装した中村と妻田が現れBGMと共に踊り始める。悔しいが無茶苦茶上手いな!! そしてしばらくダンスが続き、声援と共に終わりを告げた。そしてマイクが文化祭実行委員から二人に渡される。例年通りならここで踊った二人が告白するんだけどな……
周りをみるとどうすんだろって顔をした観客の生徒と「腐腐腐」と笑っている女子生徒が何人かいるみたいだ。なんかさ、腐っている女子生徒が確実に増えているんだけど!!
「僕たちではなくこの場にもっとふさわしい方がいると思います。アーサー!! きてくれ」
中村の声と共にステージにダッシュで走って来る男が一人いた。そろそろか……俺はレディパーツに合図をいつでも送れるように準備をした。
「この場を借りて言いたいことがあります。」
中村達からマイクを譲ってもらったアーサーこそ安心院はRZK団の制服である漆黒の覆面(ハロウィンの時期に百均で買った)に漆黒のローブ(でかいごみ袋に穴をあけて顔と手が出せるようになっている)を身にまとい口を開いた。その光景にカップルの生徒たちは困惑し、一部のモテなそうな男子生徒達はにやりと笑った。
「赤坂凛さん、よかったら俺と一緒に踊ってもらえませんか?」
「おい、何を言ってるんだ!?」
安心院の言葉に会場がざわざわとする。妻田も予想外だったのか安心院に疑問の声をあげた。本当だよ、なにがおきてるの? これって公開告白みたいなもんだぞ!?
仕事のバタバタが落ち着いてきました。やったね。
そろそろ文化祭終わります。といかバレンタインのストーリー書きたいよう!! 場合によっては次あたりにバレンタインの話をぶっこむかもです。




