40.文化祭二日目2<魔女の騎士と黄泉の魔女の恋愛譚 フェイズ2>
文化祭を歩いていると何人かが俺達をみているのを感じる。まあ、文化祭とはいえギリシャ神話に出てくるような白い布を着て歩いているカップルがいるのだ、物珍しいだろう。他にも注目されているであろう理由は二つある。一つは俺を知っているやつらがまたやっているよって顔をしているのと、二つ目は単純に紅が綺麗だからだろう。いつもの制服姿もさることながら神秘的な服装がきれい目な顔とマッチしているのだ。あと、今ちょっと思ったことを付け加えたいんだけど、この衣装エロい。
「まずはどこから行きますか、やはりクラーケン焼きは王道ですよね……」
「確かにたこ焼きいいなぁ、お昼は食べたけど結構動いたからお腹空いてるんだよな」
お昼に食べた紅特製のお弁当は美味しかったがやはり腹はすく。そうして、俺達はたこ焼きをやっているクラスへと向かった。隣のクラスの出し物は縁日である。いくつかの食べ物と射的や輪投げなどの出し物があるのだ。
屋台の前にきた俺は長い髪の生徒に声をかける。
「たこ焼き一個お願いします」
「かしこまりましたって……如月かぁ。けっ、リア充は爆発すればいいのに……」
中村だった……え、なんでこいつ当たり前のようにウィッグかぶって女子制服着込んでたこ焼き焼いてんの? あれ、ここ女装縁日だっけ……
「中村、仮にも客にそのセリフは……」
「手を繋いでみせつけているバカップルには何を言ってもいいんだよ」
「あっ」
さすがに知り合いに見られるのは恥ずかしかったのか、紅と俺は顔を真っ赤にして手を放す。確かにこれはバカップルって言われても無理はないかもしれない。ああ、恥ずかしがっている紅も可愛いから良いんだけど。
「ほら、できたよ、一個にはハバネロ入ってるから楽しんでね、僕からのサービスだよ」
「余計な事すんな、死ね!!」
俺はたこ焼きを受け取りながら黒い表情を覗かせる中村を罵る。やっべえ、たこ焼きを見てもどれが外れか判らない。何であいつ無駄に器用さを発揮してんだよ……俺も紅もからいもの嫌いなんだよなぁ……
「どうする、幸子……って決まってるよな!!」
「これはバトルですね、どちらがアルテミスに愛されているかの!!」
俺の言葉に紅はにやりと笑う、そうだよな、実際中身を箸で開ければいいんだがそれではつまないもんな。そう、これはどちらが辛い物を食べてしまうかの決戦である!!
「じゃあ、負けたほうが今度のデートでランチ奢るってことで」
「いいですよ!! では交互に食べて、辛いのを食べたほうが負けですね」
じゃんけんをして俺が先行だった。六分の一だ。俺は目の前のたこ焼きを食べる、セーフ、続いて紅が食べる。ポーカーフェイスのままって事はこれもセーフ。紅の場合辛い物を食べたら絶対顔に出るからな……俺もだけど。
再度同じ事が繰り返され、結局残り二つになってしまった……確率は二分の一である。どちらがはずれだと俺が睨んでいると奇跡が起きた。作った時に焼くのが甘かったのか、たこ焼きが少し崩れ中に若干赤いものがみえたのだ。俺は勝利を確信して……
「はい、あーん」
「え、何してんの?」
「あーんですよ、それとも神矢は私からの施しは受けれないという事ですか?」
勝利を確信した俺だったが、この女は先に赤いたこ焼きを箸でつかみ俺に差し出してきたのだ。え、本当に何やってんの?
「待って、ずるくない?」
「だって、ルールは交互に食べて辛い方を食べたほうが負けなだけですからね、他人に食べさせてはいけないというルールはありませんよ。それとも……可愛い彼女からのプレゼントが受け取れないんですか?」
絶対演技だが上目遣いでみてくる。くっ、可愛い……惚れた弱みだよなぁと思いつつ俺は紅からたこ焼きをたべさせてもらう。うおおおおおお、やべえ口の中でラグナロクがおきている!! 俺は涙目になりながら紅を見ると彼女は魔女の様な笑みを浮かべていた。
「やはりクールな美少女の私の魅了の魔法には耐えられなかったようですね」
「くっそ、ポンコツなくせに……中村水をくれ!!」
「誰がポンコツよ!! どこからみてもクールな美少女でしょ!!」
「はいはい、如月、水は一杯1000円だよ」
「ふざけんな、殺してでもうばいとる!! あと素が出てるから気をつけろよ、幸子」
などと騒ぎながらたこ焼きを楽しんだ俺達は次の出し物を楽しむことにする。縁日だからね、色々とお面白そうなものがあるんだよな。
「何をやりましょう、次は射的とかどうでしょうか? 結構面白そうですし、魔法もいいですが銃ってテンション上がりますよね」
「おお。俺のテロリストが来た時用に鍛えていた腕前をみせてやるぜ。せっかくだ、次も勝負しようぜ」
「いいですよ」
俺の勝負に乘った紅をみて笑みが止まらない、馬鹿め、俺は本当にテロリストが来た時のために銃の訓練をしていたのだ。部室に置いてあった銃はもちろん飾りではない。騎士が銃を使うな? 剣と銃の二つ持ちってかっこいいじゃん。
俺は勝利を確信しながら射的ブースに向かう。
「いらっしゃい……げ、如月かよ」
「うわぉ、安心院じゃん」
「この前はお世話になったわね」
「いえいえ、順調そうですね」
店員である安心院と俺は顔を見合わせ同時に悪態をつく。そして安心院の隣にいた赤坂さんは紅の言葉に頬を赤らめるのであった。
「まあ、いいさ、金を払えば客だ。赤坂、銃を一丁頼む。如月の分は俺が準備しよう」
「わかったわ」
「おい……なんだこれ……」
そして、紅にはコルク銃が、俺には割りばしで作られたしょぼい銃が渡された。しかも銃弾は輪ゴムである。おもちゃかな?
「リア充用のだが? どうした早く撃つんだな」
「こんなんで、的が倒せるわけねーじゃねーかよ。それにリア充なら幸子もだろう」
「大体、のび太ばりに射的が上手いお前と、素人同然の田中さんでは不公平だろう」
「神矢……射的が得意なのを黙っていて勝負を挑んだんですか」
あ、やべえ、紅がすごい冷たい目で見ている。ゲームだったら神矢の好感度が5下がったとか出てそう。
「あー、この銃が欲しかったんだよ、なぁ解放者。早く始めようぜ」
俺はさっそく銃に名前をつけた銃を構える。ややこしくなる前に射的を進めてしまおう。
「魔弾装填、狙い撃つぜ!! 咎への解放の弾丸」
「あの、他のお客様の迷惑になるから本当にやめてください。てかマジうるせえから黙れ」
「神矢だけずるい……」
素を隠している紅がうずうずとしながら呻いていた。多分あいつも技名を叫びたいんだろうなぁ……俺の撃った弾丸は的に当たりはするものの、微動だにしない。そりゃあ輪ゴムだもんな……
紅は筋力がないからだろう。ふらふらとしながら銃を構えている。あんだけふらふらしてるから外れまくっている。
結局俺達はろくにヒットしなかったが赤坂さんが「これは日ごろのお礼よ、プレゼントしてあげなさい」といってこっそりと景品をくれた。ちょっと高級そうなお菓子だ。結構いいやつじゃん。二等とか書いてあるけど気にしなくていいんだよね?
「さて、そろそろ時間だな、戻るか」
「そうですね、行きましょう」
何だかんだ出し物を楽しんだ俺達はそろそろ天文部の部室へ帰ることにした。次の公演が成功すれば天草先輩には勝てそうだしな。
俺達は天文部の部室へ戻ろうとしたが、少女の泣き声に足を止める。なんかデジャブだなと思いながら泣き声の方を見てみれば万ちゃんがまた泣いていた。一体どうしたんだろう。
更新遅れてすいません、仕事がやばい……
最近沖田出てきませんが忘れているわけではないのです。なんか神矢の親友ポジションが安心院みたいになってきてしまっている……