38.文化祭1日目3<黄泉の魔女と騎士の誓い>
「まずは初日はそこそこだな、レディパールから連絡きたけど4対6で科学部のほうが優勢みたいだな」
「うう、なんか悔しいわね……天草先輩に負けるのは屈辱」
紅はいじけたように言った。まあ、あっちは半年も準備をしていたしな。有利なのはあちらで当然である。勝てなくても仕方がないかもしれない。それにだ、まだ勝つ方法はあるはずだ。俺は色々考えた末に紅に交渉することにした。
「なあ、紅……この戦い勝ったらなんかご褒美くれないか? そうしたらもっとがんばれる気がするんだ。」
「ええ、いいわよ、そうね……もしも勝ったらなんでもあなたの言う事聞いてあげるわ」
「何でも!! 今何でもいったな!!」
「うわぁ」
思わぬ報酬に俺は興奮してしまい、食い気味になってしまった。それをみた彼女は引いたかのように距離を置いた。やらかしたー、でも仕方ないじゃん。嬉しかったんだよ。俺だってさすがにエロ同人みたいなことはお願いしないって。
「だって、変なストップウォッチ持ってきて、時を止めたから動くなっていってからセクハラしてきそうなんだもん。エッチなビデオみたいに!!」
「いい加減それは忘れろよ!! リアルにそれをお願いするきはねえよ!!」
くっそ、俺は一生そのネタでゆすられるのか……そんなことしないよ、いやでも将来そういうシチュレーションとかむっちゃ興奮するよな。もしもそういうことする関係になったら土下座したらやってくれないだろうか。
『これぞ、時の神クロノスの宝具『タイムウォッチ』だ』
『神矢!! 私を騙したわね!? 体が動かない……』
『黄泉の魔女よ、油断したな。我が力の前に己の無力さを悔いるがいい」
有りだな!! やべえ、くっそテンションあがってきた。あー、でも無理やりはよくないよな、どうせなら純愛の方がいい、純愛で時とめって難しいな!!
「ねえ、神矢……」
俺が妄想をしていると紅がゴミを見るような目で睨んできた。あれ、俺もしかして口に出していたのか? やばい……殺されてしまう。
「なんか、今すごいいやらしい顔してるわよ!! でも……そうね……あなたが望むならキスくらいならしてあげてもいいわよ」
「え、マジでしてくれるの!?」
そういうと紅は顔を真っ赤にしながらうつむいた。俺は思わず聞き返す。え、まじか、いいのかよ。むっちゃテンションあがるんだけど!! 実際付き合ってからデートにプラネタリウムにいったくらいでそれっぽいことは何もしていないのだ。正直カップルっぽい事したかったし、イチャイチャしたいのもある。手をつないだりしたいんだよぉぉぉぉ!! でもその上位であるキス。魔女と騎士の契約みたいだよな。てかキスって特殊な魔法の儀式っぽくてテンションあがるよな。
俺は急いで勝つための方法を考え実行することにした。スマホを操作して通話を開始する。
「レディパールか、今日の俺達の活動の動画ツイッターにあげといてくれない? うん、文化祭公式アカウントであげてくれると助かる」
「え、ちょっと神矢、なにやってるのよ」
俺の行動にびっくりしている紅だが今は答えている場合ではない。文化祭の一般公開は明日なのだ。時は金なりである。
「恵理子か、今度飯おごるからオリオンとアルテミスのイラスト一枚書いてくれない? え、BL専門だから無理? じゃあ、あれだ。オリオンと擬人化したサソリでいいよ。それで書いたらツイッターのアカウントにタグ付けしていいかな? 文化祭の宣伝に使うんだ。ああ、ありがとう」
「ねえ、何をする気なの? それになんか顔がマジでこわいんだけど」
紅が何やらつぶやいているが、今は忙しいのでスルーする。そこそこ名前が知られている同人作家のイラストがあるのだ、ついでに見に来てくれる人が増える事を祈るしかない。
男には勝たないといけないときがあるんだよ!! そして魔女の騎士としても主が負ける姿をみるわけには行かないのだ。いや、別にキスにつられたわけではない。
「あー、久しぶりだな一条。俺だよ、実は高校で彼女が出来たんだよね、彼女と出し物やるからみに来ない? え、巨乳か? いや、小さいかもって……痛い、やめろ紅、無言ですねを蹴るな!! 黒竜の騎士たる俺にはもったいないくらい美しい魔女だよ。というわけで暇だったら友達をつれてきてきてくれよな」
俺は黒竜の騎士として自分のできる全てを駆使した。ツイッターで今回の出し物の情報の拡散、腐界の女王たる恵理子の絵師としての力を借りての拡散、かつての友人たちにきてもらうように懇願、明日は外部の客が中心だ。これで多少の不利は覆せるはずである。
「あんたこれなら最初からやってくれてもよかったんじゃ……?」
やりきった俺を迎えたのは紅の冷たい視線だった。おかしくない? 俺すっごいがんばったよ。
体調崩して更新が遅くなってしまいました。もうしわけありません。
神矢と紅の二人の距離は縮まるのか、お楽しみください。
新作というかヤンデレヒロインを書いてみようってテーマで書いた作品になります。中篇くらいの長さですが毎日更新するのでよんでくださると嬉しいです。自分でもヒロインがみんな似てしまっているなって思ったので書いてみました。よろしくお願いします。
『口は悪いが巨乳で美人な幼馴染に「別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!!」って言われたから「俺もだよ」って答えたらヤンデレになってしまった。』
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