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37文化祭1日目その2<射主と王の恋愛譚>

 科学部の部室はそこそこの人だかりができていた。だが天文部とは客層が違う、心なしか男性とオタクっぽい人が多いな。

 どうやらここでは映像を映して自分の推しキャラとしゃべったり、写真が撮れるらしい。すげえけど頭悪いな……天草先輩だっけ? 確か結構変わった人だという話だけは聞いたことある。



「うわぁ……」



 隣の赤坂がドン引いた声を上げた。正面には48人のアイドルをはべらした妻田がいた。すげえ満面の笑みだ。そんなんだからフラれるんだよ……ここは非リア達の聖地になっているのかもしれない。



「ようこそ科学部へ、好きな画像を提出してくれ。あとは声のタイプはどんなのがいい? ここにサンプルがあるぞ」



 案内をしてくれているのは男女二人組だ。彼が天草先輩なのだろう。白衣を着た上級生が得意げに説明を始めた。そしてもう一人は同じクラスの白石さんだ。あれ、この子文化祭実行委員じゃなかった? 仕事は大丈夫なのか。まあ、それはさておきオーダーをしよう。



「このキャラはグラン〇ルーファンタジーのク〇リスです。お願いします。セリフは『団長これからも一緒にがんばろうね。古戦場ファイトだー』で、声のトーンは好意を抱いているけど、あくまで友達として接しているぎこちなさと切なさを表現してください、できれば頬を染めた感じで!! 画像の加工が必要なら今ここでするので五分ほどください」

「うわぁ」

「要求がやたら細かくてきもいが、引き受けた」



 なぜか赤坂と天草先輩が引いた声をだした。せっかくの機会だし欲望全開で行くだろう。赤坂も何やら希望があるのか、白石さんにスマホを差し出した。なんでだ、白石さんがにやにやと俺をみている。



「赤坂はどんな画像を……」

「女の子の秘密を探ろうとするなんてダメだよ」

「安心院の変態……」



 女性陣に拒否られた。ふざけんなよ、こっちはちゃんと言ったのに……しかも女性は個室で男性はオープンスペースのようだ。男女差別ってだめだよって学校で習わなかったのか?

 


腐腐腐ふふふやはり妻田X中村は最高ね」



 などと思っていると、個室から名前も知らない女子生徒が出てきた。やべえ顔して笑っている。口調と顔で何があったか大体予想はついた。確かに女子は分けたほうがいいかもしれない。これでは百年の恋も冷めるだろう。



『団長これからも一緒にがんばろうね。古戦場ファイトだー』

「うおおおおお、クラ〇スちゃんサイカワ!!」



 俺の番がきたのでさっそくやってもらったがこれはやばいな。興奮のあまり抱きしめてしまったが当然ながら感触はなかった。もっと科学進歩しねーかな。やはり抱き着けるようにしてほしい。

 自分の番が終わったので赤坂を探すと、ちょうど個室に入っていくのが見えた。さっき馬鹿にされた仕返しとして覗いてやる。少し悪いと思いながらもあいつの入った個室の隙間から覗く。鶴の恩返しみたいだよな。



『凛大好きだよ』

「えへへ、私もだよ」



 うおおおおおお、俺じゃん、しかも声はイケボ!! 見てはいけなかったものを見た気がする。赤坂は本当に嬉しそうに映し出された画像の俺(多分盗撮)にキスをしていた。え、何やってんの? あいつまじで何やってんの?

 俺が驚き固まっているとこちらを振り向いた赤坂と目があった。すっげえきまずい。赤坂は普段みせないにやにやした顔から、信じられないものをみるような顔にかわりどんどん顔が赤くなって……


「やあ、元気?」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「うおおおおおおおおお」



 すごい大きな声で、奇声を上げて走っていってしまった。え、むっちゃ走ってるじゃん、足大丈夫じゃん。いや、知ってたけどさ。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」



 結構距離が離れたのにまだ聞こえるんだけど……とにかく追いかけたほうがいいよな。俺は彼女の後を追いかけることにした。さすがに悪いことしたよなぁ……俺は罪悪感に苛まれながらも科学部の部室を出た。





「その冴えない顔、あなたがもしかして安心院先輩ですか?」

「ああ、そうだが……」



 俺が赤坂を見失い、途方に暮れていると長身の女の子に声をかけられた。誰だこの子。てかこいつ今すっげー失礼な事を言わなかったか?



「さっき赤坂先輩が奇声を上げながら走っていったんですけど、先輩に変な事をしたんじゃないですよね」

「し……してねえよ、いや、変な姿はみたけどさ」

「まあ、いいです。多分赤坂先輩は屋上にいますよ、試合に負けたり、ミスをしたときは屋上で気をおさめますから」

「ああ、ありがとう」

「ええ、赤坂さんを悲しませたら殺しますからね」



 え、待って、今殺すとか言わなかったこの子? こわ!! とにかく俺は屋上に向かうことにした。え、なにこれ扉が何者かによって蹴られて開いている。鉄製なのにへこんでない? なんて破壊力だよ。俺は屋上で体育座りをして泣いている赤坂をみつけた。



「うう……終わった……絶対引かれた……」

「おい、赤坂……その悪かった……」

「……」



 俺は恐る恐る赤坂に声をかけたが返事はなく、顔を手で覆ってしまった。そうだよな、見られたくないところを一番見られたくない人にみられたんだもんな……俺は中学の時にちょっとエッチなビデオをみながらソロプレイしているところを母に見られた時のことを思い出す。こういうときはどうすればいいんだ? 俺の時は兄貴がもっといいビデオあるから貸してやるよって優しくなぐさめてくれたんだ。



「実はさ……赤坂が俺の事を好きだってこと気づいてたよ、後、足のケガも治っているってのも薄々知っていたんだよ。でもさ、この俺が珍しく空気読んでいわなかったのは、お前との時間が楽しかったからなんだ。だからそんなに気にするなよ……」

「あんたに嘘ついたこと怒ってないの? それに私と無理やり一緒にいさせられて嫌じゃなかった?」

「そんなんとっくに気づいてたっていったろ、本当に嫌だったら今日だって一緒にいねえし、デートだってしねえよ」

「本当……?」



 俺の言葉に赤坂はようやく顔を上げてくれた。涙で少し濡れた目元が光っている。俺はポケットからハンカチを差し出し彼女に渡した。

 彼女はハンカチで涙を拭いてから、俺をじっとみて一言



「私は決めたわ……今ここであなたに言いたいことがあるの」



 そういうと赤坂は立ち上がり俺をまっすぐとみつめる。その顔はなにやら決意に満ちていて、とても凛々しくて美しいなと思った。ああ、こいつすっごい美人だなぁっていうのを改めて認識させられた。そしてそんな子に好意を寄せられて嫌なはずはないのだ。

 そして彼女は俺をみつめたまま深呼吸をした。



「いつだったかあなたが可愛いって言ってくれて私の心の中で何かが解放されたの。そんな事を言われたのは初めてで、気づくといつもあなたを目線で追う様になっていたわ。初めてと言えば異性とデートしたのもあなたが初めてなのよ、私の初めてはあなたばかりね、もしもあなたが了承してくれるなら初めての結婚もあなたとしたい……それくらい想っているのよ。子供は二人、男の子と女の子一人ずつがいいわね。ああ、でもあなたに娘が「パパと結婚する」とか言ったら嫉妬しちゃうかも。もちろん、私は息子に同じことを言われたら「もう、パパと結婚しているのよ」って断るから安心してね。そういえば私最近料理の勉強もはじめたの、別にあなたのためってわけではないんだけど、よかったらお弁当を作ってきてもあげてもいいわよ、確かあなたはから揚げとハンバーグが好きだったわよね、お弁当を食べているときの早さがいつもより1.2倍ほど早くなっていたもの。あ、別に遠慮はしなくてもいいわ。誰かのために作るのはモチベーションがあがるし……そのお弁当を作って渡すって新婚夫婦みたいよね。なんちゃって。お礼だっていらないわ。だって私が勝手にやる事ですもの。でも、どうしてもお礼がしたいっていうなら一緒に初もうでに行ってくれないかしら。この近くに夫婦円満のお守りを売っているところがあるのよ。夫婦何てまだはやかったかしら。でも付き合うんだったらそれくらいの覚悟で付き合いたいの、あなたはどう思う?」

「えっ、なんだって?」

「ごめんなさい、声が小さかったかしら……もう一回言うわね……」

「そういう意味じゃねえよ、もっとシンプルに言ってくれっていってるんだよ!!」



 俺は難聴系主人公じゃねえぞ。なんか予想よりすげえ告白がきた。あれ? 何か赤坂の中では結婚前提で付き合うことになってない? 子供の話とか夫婦の話とかばっかりなんだけど……俺まだ高校生だし童貞だよ……? 子供の話とか早すぎない?



「私はあなたに一生を捧げてもいいっておもっているのよ」

「赤坂その……」



 彼女のストレートな一言に俺は何と言えばいいか悩む。でもちゃんと告白してくれたのだ。ならばきちんと答えるのが礼儀だろう。



「いきなり言われても困るわよね……そのオッケーだったら後夜祭で一緒に踊ってくれないかしら」



 俺がどうこたえようか悩んでいると、そう言い残すと、赤坂は屋上から出て行った。彼女の顔が真っ赤になっていたのが印象的だった。後夜祭は明日である。それまでにどうするか決めねば……




屋上で告白とか青春っぽいですよね。

赤坂さんはヤンデレキャラとして書いたので当初から告白はこのシーンと決めていたのですが男の名前が安心院といいめっちゃめだかボックスになってしまった……


最近更新遅くなり申し訳ありません。今ちょっとネット小説大賞用に書いているものがありましてそれに時間をとられておりまして……2月4日が期限なんですよね……

この作品も異世界転生もエタることはないのでご安心ください。

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【催眠ごっこで結ばれるラブコメ ~初恋の幼なじみの催眠術にかかった振りしたらムチャクチャ甘えてくるんだけど】 こちらが新作です。 催眠術をきっかけに、素直になれなかった幼馴染達が結ばれるラブコメです。
― 新着の感想 ―
[一言] めだかボックス懐かしいなぁ…あの超画力で力関係とかめちゃくちゃなのに面白い良漫画だったなぁ
[良い点] 安定の安心院が空気をよんda・・・ 赤坂にオーガ疑惑浮上? [気になる点] 長身の下級生の女の子 何者だ? 今後絡んでくるのか? [一言] 腐会の女王はほっとこう(みちゃだめ)
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