31.白石さんの訪問<レディパールの襲来>
「紅、ここでいいのか? 痛くないか?」
「そうそう、そこよ。初めてにしては上手いじゃない? 見直したわ」
「よかった、もしも痛かったら言ってくれよ……じゃあ、いくぞ!!」
「ああっ、んんっ!!」
「何をやってるのさ!! 廊下まで声が響いてるよ!!」
天文部の部室が乱暴に開かれて、中に入ってきたのは白石さんだ。紅は慌てて、乱れていた制服を正す。全くノックくらいしてほしいものだ。俺はマッサージをしていた紅の肩から手を放しながら思う。
「神聖な学び舎で何をしているのかな? 黒竜の騎士と魔女はいやらしいなぁ」
「これはあれよ……魔力供給の儀式をしてたのよ」
「普通にマッサージしてただけだろ、あと紅よ、その言い方は一部の人に誤解されるからやめてくれ。それで白石さんは一体どうしたんだ。天草先輩に言われてスパイにでも来たのか?」
顔を真っ赤にしている紅を横目に、俺は意地の悪い笑みを浮かべている白石さんに問いかけた。学校で二人っきりになれるのはお昼のお弁当を食べるこの時間だけだというのに邪魔されてしまった。にしても紅の声がちょっとエッチな感じでテンションあがってしまった。
「スパイ何てひどいよ、あとここには厨二病な人しかいないんだから昔みたいに呼んでほしいな。ねっ、師匠」
「師匠? 白石さんと神矢はどんな関係だったのかしら」
ニコニコと笑いながら紅が俺を見つめてきた。笑顔なのに目が全然笑ってなくて無茶苦茶怖いし、呪い殺されそうなんだが……早く誤解を解かないとやばいな。
「ああ、白石さんは前も言ったが、中学時代の友人であり……」
「黒竜の騎士の従者だよ、黒竜の騎士に見いだされし才を持つ者。真珠の力を持つ従者レディパールさ。よろしくね。魔女さん」
「やっぱりいたー!! 女の子の従者いたー!! でも元カノとかではないのね……よかった……私の方が従者より上よね……だって、彼女なんですもの……そう、恋人同士なのよね……」
白石さんの名乗りを聞いて紅は頭を抱えながら、何やらぶつぶつとつぶやきながら顔赤くして俯いて言葉尻が小さくなっていった。彼女なんて紅が初彼女だし、俺はそんなにモテないんだってば。
「紅さんからかうと面白いね、天草先輩との口論でクール系かと思ったけど意外とポンコツなんだね」
「レディパールよ、人の彼女をあんまりからかわないでくれない? まあ、ポンコツなところも可愛いんだけど」
「私はポンコツじゃなくてクール系美少女だって言ってるでしょう。名乗りには名乗りで返しましょう。私の名前は黄泉坂紅、あの世の黄泉に坂、名前はベニバナの紅よ。人は私を黄泉の魔女と呼ぶわ。そして……」
紅はいつもの名乗りの後に得意げな顔で俺を見つめて続けた。
「そこの黒竜の騎士の主よ、そこの騎士は黒竜の騎士から魔女の騎士に成ったの。覚えておきなさいね、従者さん」
「え、俺が魔女の軍門に下ったのか……」
ここで明かされる衝撃の事実だった。対等な関係の恋人になったつもりだったんだけどな……まあ、これはこれで悪くない……むしろいい!! なんか主と護衛の騎士の恋愛とかって萌えるよな。
「ふふ、魔女さんは可愛いなぁ。でも、そろそろ本題に入らせてもらうね、私が来たのは文化祭実行委員としての仕事だよ。今回は中立だから安心して欲しいな。君たちはどんな発表をするんだい?」
「そうだな、この前撮影した星の写真を展示しようと思っているのと、他にもなんかコンテンツを考えているよ」
「そっかー、良かった。写真展示だけじゃ、さすがに天草先輩と勝負にならないからね。あの人は今おもしろいものを作っているよ。暇があったら見に行ってほしいな。ふふ、五奇人同士の戦い楽しみだなぁ」
「へぇー、あの男が何を作っているのか気になるわね。あれだけの大口を叩いたんですもの。巨大ロボットでも作ってるのかしら。魔法と科学の決戦にふさわしいわね」
白石さんの言葉に紅が少し興味深そうに笑う。いや、巨大ロボットを高校生が作るとか無理だろ。まあ、魔女の魔法VS科学の結晶のロボットの戦いとか熱いから見てみたいけど……それはともかく気になる事があったな。
「なあ、レディパールよ、五奇人ってなんだ?」
「ああ、ごめんごめん、私が学校内の変人奇人を勝手に呼んでるんだよね。四天王とか三人衆みたいなノリで。ちなみにメンバーは、入学式に黒い甲冑で参加した厨二の如月、道徳や日本史の授業で神は殺すと叫んで、部員を集めて、科学部を設立した神秘殺しの天草、校内でイチャイチャしているカップルに様々な嫌がらせをしている、リア充狩りの安心院、生徒会長にて、生徒会内で昼ドラを繰り広げているハーレムの佐藤、裏ルートでBLイラストを流通させて腐女子と腐男子を増やし続ける、腐界の女王の斎藤の五人だよ」
「ほとんど俺の知り合いじゃねえかよ!! てか、あいつら俺の知らないところで色々やってんな!!」
「類は友を呼ぶってやつじゃないかしら……というよりも、あなたも中々だと思うわ……」
スタンド使いは惹かれあうみたいなノリだろうか……紅がすました顔で自分は関係ないみたいな顔しているけど、お前も本性ばれたら多分入ると思うぞ。
ちなみにハーレムの佐藤こと佐藤誠先輩は三年生で生徒会長をしている人だ。女性関係でクソみたいな噂ばかりあるのにやたらモテるのだ。何らかの能力を持っているのか、それとも異世界召喚されてチートをもらって帰ってきたんじゃないかと疑っている。それくらいモテる。エロゲーの主人公かなってくらいモテる。ちなみに素晴らしい船をもっているらしく、親しみを込めてナイスボート会長と呼ばれていたりもする。
「てか沖田や赤坂さんは入らないのか? あいつらも結構変わってると思うけど……」
「うーん、あの二人はどちらかというと普通にすごい人なんだよね。二人とも全国区の運動選手だし。赤坂さんは安心院君が絡むとおかしくなるけど、普段は自分と他人にちょっと厳しいけどいい人だし、沖田君は無色なんだよねぇ」
「沖田が無色……? 結構変わっていると思うけど……」
「うーん、多分師匠や魔女さんにはわからないと思うな。誰もが幻想を抱き続けることはできないんだよ」
そう言った白石さんの顔に一瞬だけ寂しさに曇った気がしたが、すぐにいつもの笑顔になった。よくわからないがそういうことらしい。
「やっぱり文化系の出し物ってあんまり盛り上がらないんだよね……天草先輩なんて去年は簡単な会話ができる人工知能とか作ってたんだけど客入りがあんまりでへこんでたんだよね」
「え、結構すごいじゃん。あの人って、ただ科学科学うるさいだけじゃないんだな」
「そうなんだよ、すごい人なんだよ!! あれで結構気が利くし、優しいんだよね。でもさ、恋人や友人とまわるならお化け屋敷とか、食べ物の方が文化祭っぽいし盛り上がるからねぇ」
「ああ、それはそうね……よっぽど興味がないと科学部とかいかないわね……」
俺と紅は白石さんの言うことにうなづいた。やっぱり、文化祭の花形は食事とか気軽に遊べるゲームではないだろうか。
「まあ、というわけで師匠達には期待しているよ。天草先輩もライバルが現れてモチベーション上がってるし、二人もおもしろい企画で文化祭を盛り上げてくれるとうれしいな」
そう言って白石さんか部室から出て行った。放課後天草先輩の所をみてみるかな。こっちのモチベーションにつながりそうだし……俺が弁当箱の片づけをしながら考えていると制服の裾が引っ張られた。紅が少し恥ずかしそうに声をかけてくる。
「あなたは私の騎士でしょう。だから時々でいいからマスターって呼んでもいいわよ」
「え、なんでいきなり……?」
「いえ……その……白石さんと神矢の呼び方が、何か特別な関係みたいでいいなって思ったのよ……」
「え、嫉妬したのか、可愛いな。でも俺達はもっと、特別な関係じゃん」
俺は紅にちょっとからかう様に笑みを浮かべながら話しかける。俺たち恋人同士だし、これ以上ないほど特別だと思うんだけど……
「うっさい、授業はじまるから早く教室に戻るわよ」
俺の言葉を聞くと部室を出て行った。足早に出て行く彼女の顔がにやけていたのを魔女の騎士は見逃さなかった。
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やべえ白石さん動かしやすい……というわけで文化祭編始まります。
ちなみに生徒会長は名前だけで出てこないです。ちょっとこの作品のイメージとは違うキャラなので。
毒舌少女とその本音がわかる少年の異世界恋愛を書いてみました。よかったら読んでくださると嬉しいです。
『呪いによって『悪役令嬢』と呼ばれる彼女を、俺のスキル『翻訳』によって正ヒロインにしてみせる』
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