37.流れ星を観た後で<魔女の回想>
「ただいまー」
「おかえりー遅かったねって、幸子どうしたの、なんかにやにやしてて怪しいよ。まさかその顔で外歩いてたんじゃないよね……」
帰宅してお姉ちゃんの第一声がこれである。どうやらよっぽど私は浮かれていたらしい。相談していたわけだしお姉ちゃんに報告をすると、なぜかため息をつかれた。
「なんというか……偽装カップルとか、あんたたち色々めんどくさいね……」
「しょうがないじゃない、色々あったのよ!! でもこれで正式に恋人になったんだから結果オーライでしょう」
「でもちゃんと好きとは言ってないんでしょ? 時止め君はもやもやしてて、生きてる気がしないんじゃない? 可哀想に……」
「だって、私はちゃんと返事したのにあの馬鹿気づかないんですもの、これくらいでちょうどいいのよ」
私はお姉ちゃんの言葉に頬を膨らませながら抗議する。月が綺麗と言われ、どきどきして必死に答えを返したのにスルーされたときは死にたくなったものだ。もしかしたら、神矢の方はあくまで私を、友達だと思ってるからスルーしたのかと不安になったくらいである。そうしたら本当に知らないだけとか……厨二の風上にもおけないわね。まあ、そのあとあんなに熱烈に告白してくれたのだから仕方なく許してはあげるけど……
「でも知らないことがあってもしかたないでしょう? 幸子だって、あの山が失恋山って呼ばれてるの知らないでしょ?」
「はっ? 何それ……あの山にそんな風に呼ばれてるの!?」
私は狼狽する。何それ、そんな事聞いたこと無い……まずい、私特別な場所とか行ってたし、神矢が月が綺麗って言う言葉の秘密を知らなければ変な勘違いをしてしまうかもしれない。
「ごめんごめんウソウソ、あの山はただの山だよ。でも、これで知らない事をあんまり攻めちゃだめってわかったでしょ。特に男なんて馬鹿なんだから……」
「おねえちゃんの馬鹿ー!! 焦らせないでよ!!」
焦ってラインをしようとした私の顔がよっぽどひどかったのかお姉ちゃんがあわててネタ晴らしをしてきた。
よかった。せっかく両想いになったのに変な風になるところだった。それにしてもおねえちゃんは本当に意地が悪い。でも、確かにお姉ちゃんの言う通り、誰にでも知らない事はあるんだし許してあげてもいいだろう。
「質問なんだけど、恋人って今までと何が変わるのかしら……」
「それは色々変わるよ、他の女の子とベタベタしてたら怒っていいし、後はキスとかその先をするようになるよ」
「ふーんって……キス!?」
確かに今までは偽装カップルだったが今日から正式なカップルになったのだ。私たちの関係も先に進むかもしれない。あいつとキスか……急に恥ずかしくなってきた。でも嫌な恥ずかしさではない。ファーストキスはどんな感じなのだろう……などと思っているとスマホが鳴った。
神矢からだ。何でこのタイミングなのよ!! 私がどうしようかとあたふたしているといつのまにか鳴り止んでしまった。ちょっと変なことを考えていたせいで通話に出る事ができなかった。私は急いで通話を返そうとしたが、送られてきた内容をみて笑みがこぼれてしまう。
「どうしたの? 顔赤くしたり、にやにやしてして……なんか情緒不安定なメンヘラみたいだよ」
「フフ、黒竜の騎士も馬鹿じゃなかったってことみたいね、ちゃんと私の宿題に答えてくれたわ」
私はドヤ顔でスマホ画面をお姉ちゃんに差し出した。画面には「夏目漱石だな。俺もお前となら死んでもいいと思う」と書いてある。答え合わせは明日の昼なので、フライングだが特別に許してあげようと思う。
「さっきまで泣きそうな顔してのに元気になったね、あ、なんか追加できたよ。『最近、学校で手を繋いだりしていてくれていたのに、お前の気持ちに気づけなくて本当にごめん』だって……へぇー、幸子結構積極的だったのね。お姉ちゃんびっくりだわ」
「は? はぁぁぁぁぁぁぁ? ちょっと返して」
「大丈夫、大丈夫」
スマホをみるとガンガン通知が来ておりそれをお姉ちゃんがにやにやと眺めている。え、待って……本当に待って……何も大丈夫ではない。私は強引に奪い返す。
「そんな必死にならなくてもいいのに……」
「なるわよ!! さっき見たことは忘れて!!」
「それよりも明日デートなんでしょう、多分時止め君は、幸子が意地悪したからあんまりデートコースを考える余裕ないと思うのよね」
「うう……ちょっと意地悪しすぎたかしら」
「まあ、せっかくだし恋人とのデートの注意事項を教えてあげるね」
「ちょっと待って、ノートをとってくるから!!」
私はラインを返信してからおねえちゃんとデートに関して相談をする。しばらく話していると、そろそろ眠くなってきたとおねえちゃんがいったのでお互い寝る事にしたのだが……
全然寝付けない。いつもならコキュートスを抱きしめながら寝るとすぐ眠りにつけるのだが、今日は興奮しているせいか寝付けなかった。睡眠効果のある薬草入りのお茶を飲んでもダメだった。
気分転換に窓を開けると何やら自転車のライトが見えた。え、何かしらこんな時間に……今は深夜二時なんだけど……もしかして闇の住人かしら、吸血鬼やゾンビなどがあらわれたのかもしれない。でも自転車乗った吸血鬼って何かまぬけよね。実は神矢が……とかだったらうれしいけれどこんな時間だしね。
少年誌のラブコメって付き合ったらゴールみたいなところありますよね。でも青ブタとか化物語とかは付き合っても続くんですよね、というわけでまだまだ続きます。
堕落者様よりレビューをいただきました。ありがとうございます!! 本当に嬉しいです。これからもがんばっていきたいと思います。
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ポケモンのサイトウさんがくっそ可愛いと思う今日この頃です。