35.5.田中さんと流れ星<騎士と魔女とシューティングスター>
『彼は変な人に結構もてるからもっと素直にならないと奪われちゃうかもよ』
部室での白石さんの一言が胸の中で反芻される。ああ、もっともだ。学校で一緒に行動して思ったが彼は意外と女性の知り合いが多いようだ。このままでは黒竜の騎士の従者とか出てきそうじゃない? しかも女の子!!
確かに私は偽装カップルの彼女という立場に甘えていた所はあるかもしれない。だからその一歩として、彼と学校で手をつないでみたのだけれど……とても恥ずかしい……赤坂さんはこれを乗り越えたというのか……少し尊敬する。
「ねえ、お姉ちゃん、友達の仲のいい男友達が全然告白してくれないから、悩んでいるらしいんだけど何かいいアイデアないかしら」
「なるほど、最近彼氏と進展が無いから悩んでいるのね、時止め君は意外にシャイなんだね」
「私の事じゃないし、神矢を時止め君って呼ばないで。せめて黒竜の騎士って呼んであげて!!」
さすが私の姉である、私が悩んでいることがすぐにばれてしまった。私たちが偽装カップルという事は知らないので多少ずれてはいるものの大筋はあっている。
「あんたはちゃんと好意をみせてるの? あと二人っきりの時間とかちゃんと作ってる?」
「うう……」
確かに最近はみんなでダンスの練習もしていたし、帰りも私が疲労でぐったりしていたので、ちゃんとした会話はできていなかったのだ。せっかく神矢は毎回家まで送ってくれたのに……それにちゃんとしたデートも最初の一回きりである。そして好意をみせているかというのはわからない……え、だって好きって言ったらばれちゃうじゃない。片思いだったら嫌だし……
「その様子だとどちらもできてないみたいね……」
「でも好意をみせるってどうすればいいのよ?」
「そうね、手を繋いだり、簡単なスキンシップとかしたらどうかしら。相手は童貞っぽいし、効果あると思うよ」
お姉ちゃんが意地の悪い笑みを浮かべながらいった。そりゃあ、神矢は童貞でしょうけど……童貞よね? まあ、それは置いておくとして少しがんばってみようと思う。土曜日に二人っきりで星を観るというのは中々ロマンチックではないだろうか? その時がんばって攻めてみよう、そうすればひょっとしたら神矢の方から告白をしてくるかもしれないし……それにあそこは私にとって特別な場所なのだ。
私が妄想をしているとスマホがなった。あわてて現実に戻り確認をすると朱からだった。
朱:紅姉さま、土曜日空いてませんか? お茶でも飲みませんか?
私:ごめんなさい、土曜日は星を観にいくのよ。
朱:星!! いいですわね、昔何回か行きましたが最近は行ってませんものね。私も行きたいですわ。
まずい、神矢と一緒って言うべきだったかしら。昔は朱と一緒に星を観てオリジナルの星座を作ったりしたものだ。でも、大変申し訳ないけれど今回は神矢と二人で行きたいのだ。私が一緒に行けない旨を書き込もうとすると、またスマホがなった。
朱:何時から行きますか? 久々のお姉さまと星を観にいくのすっごい楽しみですわ!!
あ、これはだめだ。こんなにも楽しみにしているであろう朱を悲しませる事を私はできなかった。神矢ごめんなさい……
せめてもの悪あがきとして私は睡眠作用のあるハーブを庭から採って飲み物に入れる事にした。
思ったより長くなってしまったので二話に分割します。今日の23時過ぎにもう一話更新いたします。
こちらを先に読んでいただけると助かります。